蝶と庭と 白昼夢:8
外は日が昇り、明るいはずであるのに、曇り空になってしまったかのように、トトの部屋の空気は重く感じられた。通されたケット・シーはソファに腰を掛け、壁掛け時計の音だけが響いている。
棚の上に並んだ薬草の瓶や、色褪せたドライフラワーは、昼の明るさとは無縁の薄闇の中で、じっと沈黙を保っていた。アンティークのイスも、緋色の絨毯も、かつては温かみを宿していた色彩が今は昏い影を纏い、その場に沈んでいるようにさえ感じた。
その空気の中、シルキーだけは、いつも通り美しい更紗のように色を持っているようだった。ケット・シーは彼女が用意してくれたお茶を飲んで、ざわついた心を落ち着かせる。
シルキーがお辞儀をして部屋を後にするのを確認した後、トトはようやく、固く噤んだクチを開いた。
「キミからの申し出というのは、実に珍しい」
セピア調のお茶が、鈍い光を反射する。
「キミにも解決できないことが、ボクに解決できるかどうかはアヤシイところだよ?」
一国の王として務めている以上、民草の不安を煽るようなことがあってはいけない。権力というものは、ときとして孤独を強いて、その者の毅さを図ろうとする。けれど、それに溺れることも、敗けることも赦されない。それを貫く毅さを、彼女は確かに持っていた。
「ううん、いいの。ひとりで考えるよりも、ふたりの方がずっといいもの」
「トトには悪いけれど、どうか聞いてくださらない?」
半端モノであるトトは、ケット・シーを姫君として扱いながらも、昔からの隣人に話しかけるように温かな視線を送る。
「キミに選ばれたことを光栄に思うよ」
「それで、早速そのお話というものを聞いてもいいかな」
ケット・シーは窓見て、今までのことを思い出すように呟く。微かな風が部屋の中に土の匂いを運び、光を透かし揺れるカーテンは、白く滲んで解けていくように思えた。
「最近、不思議な夢をみるの――」




