蝶と庭と 白昼夢:5
昼下がりの庭は、ゆるやかな陽の光に満ちていた。プーカは塀の上に座り、空を眺めている。珍しく高く澄んだ空には、ふんわりと薄雲が流れ、木々は枝を揺らしうたた寝をしている。近くからも、愛しの隣人たちの鈴のような咲い声が聞こえる。春の訪れ。命が芽吹き、大地が咲う季節。この季節の主役は、今や彼女であった。
この時期は復活祭に魔法使いの夜もある。復活祭、ハッピー・イースターと云えばイースターエッグにイースターバニーが象徴となっている。
けれど、プーカの本当に主役の日は、秋の収穫祭、サウィン祭だ。
ケルトにおける1年の最初の祭日であり、10月31日夜から11月1日にかけて行われる祭りである。サウィン祭はケルトにおける最も大事な祭りで、今もその幻想は受け継がれている。収穫を先祖の霊に供える収穫祭であるとともに、この世とあの世の境界がなくなり、冥府が人間に見えるとされている日。今で言うところのハロウィンは、カトリックが存在を塗り替えることのできなかった、人々の心に深く根付いた幻想の続きなのだ。
また、人間にとってあの世というのは、妖精の国であることも多い。特に、神秘が色濃く残されるこの地では、その殆どがそうだ。
プーカはまだお皿に残っているおかしを見て、イースターエッグを模した容れ物に詰め始めた。お茶会場の後片付けをしていたシルキーは、何も言わずにバスケットを渡した。言葉はなくとも、伝わることはある。彼女たちははにかんで、それぞれの役割を果たすことにした。
シルシアはそんなプーカを疑問に思って、訊くことにした。
「おかしのお持ち帰りですか?」
プーカは首を横に振り、おかしのお裾分けだよ。と言った。人間のお家を一軒一軒廻って、おかしのたっぷり入ったイースターエッグを置いていくらしい。彼女は楽しそうなイタズラでしょ? と咲ってみせた。
「ボクはケット・シーと話があるから、キミたちはおかしを届けに行ったらどうだい?」
「帰って来る頃には、きっとちょうどいい時間になっているさ」
トトは彼女のイタズラを咎めることはなかった。ケット・シーも、気を付けて行ってくるように。と、お呪いを掛けてくれた。




