虹を絡めて
掲載日:2025/11/07
いつだったかのお葬式の帰り、母が言った。
―グリコのじゃんけんしよっかあ
あともうすこしで家に着くころだった。
あんまり深く考えず、
―うん、やろう、やろう
ちいさかったわたしは、それに応じた。
グリコ
パイナツプル
チヨコレイト
母はグリコばかりで、わたしはパイナツプルか、チヨコレイトねらいだった。
母は進みが遅くって、わたしといくらか距離ができた。
何度目かのじゃんけんのときだった。
母は、あきらかに泣いていて、まだ思慮のなかったわたしは、あまりに勝てないから泣き出してしまったのだと安易にそう思った。
泣いている母を、幼い子のようにかわいらしくも思った。
母が泣いた理由は、きっとそんなことじゃあないと、いまはわかる。
あのとき、誰のお葬式だったのか、いまとなっては、もう、まったく思い出せない。




