『夢織りの森の隠者』
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夜の縫い目にほどかれる
昨日の声――
忘れかけた名を呼ぶ風が
眠りの帳に微かに触れる
記憶は静かに
水面のように裂け
沈んだ言葉が泡になって
浮かびあがる
レムの森の奥深くに
時の先端に揺れる未明の気配
森の中に潜む隠者が
まだ破られる前の約束を編んでいる
夢は
朧の中にいる昨日までの私を
約束のない明日へと
そっと縫い合わせる
目覚めの直前
その継ぎ目は
去りゆく隠者の残す
見えない ほつれとなる
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