オールドメディアの終演
しかし、月影新聞の経営もまた、苦しくなっていました。
インターネットが普及し、多くのウサギたちが新聞を読まなくなっていました。かつて里で圧倒的な部数を誇っていた月影新聞の収入は、年々減り続けていたのです。
しかし、彼らは他の企業がするように、新しい事業を始めたり、経営の無駄を省いたりといった改革は行いませんでした。その代わり、減った収入を別の方法で補填していたのです。
それは、特定の団体や企業から、新聞とは関係のない名目で多額のお金を受け取ることでした。当然、お金をもらったそれらのウサギたちに不利になるような記事は、紙面には載せませんでした。それどころか、彼らが喜ぶような、都合の良い記事をこっそりと掲載するようになりました。
また、今回の事件のように、依頼されれば不都合なことは記事にせず、世論を操作することすら厭わなくなったのです。
これは、かつて「真実を伝える」ことを唯一の使命としていた、ジャーナリズムを標榜していた新聞社の、悲しい堕落でした。
月影新聞は、オオカミの軍部に代わって、今度は金銭を出す者たちの意向に沿って、里の情報を操るようになったのです。そして、そのことに気づいた子ウサギたちは、自分たちの里の自由が、見えない糸によって少しずつ縛られていることに、恐怖を感じ始めたのでした。