四.藍い瞳
「フユマル様!!」
ハッと、フユマルは顔を上げた。朝日が目に飛び込んでくる。見慣れた高い高い城壁も見える。フユマルは、あの城壁から落ちたちょうどの所の地面に横たわっていたのだ。
「ようございました!」
歓声が上がった。フユマルの周りには、兵士達をはじめ、ネコの国の住民が集まっていたのだ。
(夢?)
フユマルはそう思おうとした。が、後ろ足を見てとまどった。白い包帯が巻かれていたからだ。あの老婦人がフユマルに巻いてくれた包帯が。
「おどろきました。フユマル様のお姿が突然消えてしまわれて。国の者全員で昨夜からずっとお探ししておりました。一体どちらに行かれていらっしゃったのですか?」
「ああ・・・それより、ヒトの国は?」
「どうしたことか、あの後すぐに引き上げていきました。何をしに来たのか、何が目的だったのか、さっぱり分かりません。国王も皆も首をかしげております。フユマル様、どういうことなのでしょうか?」
フユマルは首を振って、集まっている猫達を見渡した。そして、ドキッとした。青い目を見つけたからだ。もちろん、それはハルミではない。灰色の猫だ。けれど、フユマルはその猫から目を離せなかった。いや、その猫が胸に抱いている、小さな子猫から・・・
「本当にそれでいいの?」
ハルミの声が頭に響く。本当に・・・本当に?・・・本当に・・・フユマルは、いつまでもその子猫を見つめ続けた。