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一.序章

フユマルは、ネコの国の王家の一族だ。高い高い城壁に囲まれたネコの国の住民は、全て猫だ。その全ての猫達に、フユマルは慕われていた。フユマルはどの猫達にも優しく、また、勇敢な戦士でもあったからだ。国王の信頼も厚かった。国王には王子となる子がいない。そのため、フユマルを我が子のようにかわいがっている。いずれフユマルがネコの国の王となる。国王も、家臣達も、ネコの国の全ての住民達も、そう思っていた。 ところで、ネコの国は、二つの国の間に挟まれている。一つはイヌの国。もう一つはヒトの国。この三つの国は仲が悪い。いや、憎みあっていると言ってもいいだろう。常に争いが絶えなかった。ネコの国に攻め込まれたこともある。だから、ネコの国は高い高い城壁を造ったのだ。猫には登れるこの城壁を、人も犬も越えることができないから。ネコの国が攻め込んで行ったこともある。もっとも、勝利を得ることはできなかったが。そして、どの戦いにおいても、フユマルは先頭に立って、兵を指揮しながらも、一緒に戦った。それがネコの国のためだと信じて。 


ある日、またヒトの国の軍勢がネコの国に攻め寄せて来た。フユマルは、いの一番に城壁に駆け上がり、敵を迎え撃つために兵達を指揮した。ところが、この日、ヒトは新たな武器を用意していたのだ。三日月のようにしなった細い棒。その棒には何やらつるがはられている。そして、羽のついた棒をそのつるに当てて引き、放った。その羽のついた細い棒がおそろしく高く飛ぶのだ。しかも、羽の反対側には、鉄でできた三角形のとがったものがついている。それが、フユマル達ネコの国の兵がいる城壁の上の、ほんのわずか下あたりまでせまってくるのだ。(後日、それが弓矢と呼ばれるものであることを知ったが)

猫達は初めて見る武器におそれおののいた。逃げ出そうとする兵まで出てくる始末だ。


「ひるむな!まだここまでとどいていない!たとえ来たとしても、我々は身軽だ!よけられる!」


フユマルが叫んだ時だった。ひときわ高く飛んだそれの一本が、フユマルの後ろ足をかすめた。フユマルはよろけた。そして、足を踏み外して、城壁の上から地面へ真っ逆さまに―いや、普段のフユマルはこの高さから落ちても問題はない。途中で身をひるがえして、着地することができる。この時も、いつものように着地しようとした。だが、今日はそううまくいかなかった。武器がかすめた後ろ足に力が入らない。あっと思った時には遅かった。フユマルは地面にもろに体をぶつけてしまった。目の前が一瞬で真っ暗になる。フユマルは意識を失ってしまった。         

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