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44★《過去》①

☆☆☆




「ダンテ。今日も剣術の指導を頼む」

(ことわ)る」




 夕暮れ時。(あかね)色に色づく空。

 遊び疲れた子供たちが孤児院の中に入り、週に何度か手伝いに来てくれるシスターたちが夕飯を作ってくれるわずかな時間。


 その貴重な時間に、自分は木で作った棒を剣術の先生でもあり、親友の(ダンテ)に手渡しながら、いつものように教えを()うも、彼は思いっきり嫌そうな顔をして一刀両断(いっとうりょうだん)してきた。




「なんっっっでだよ!!」

「お前、昨日いつ寝た?」

「ん?」

誤魔化(ごまか)すな、一晩中ガキどもをあやしてただろ」




 裁判官のような厳しい眼差しで、彼が詰問してくる。

 その罪状に身に覚えはあったが、それとこれとは関係ないだろうと判断した自分は「何を言い出すんだ?」と言わんばかりに腰に手を置き添え、彼を見た。

 



「しょうがないじゃないか、まだ赤ちゃんなんだから」

「お前が()んだのか?」

「産むわけないだろう?! 僕はまだ16歳(こども)で《男》だ!!」

「その年齢(とし)でガキ産まされているガキなんてごまんといるが?」

「それは、そうだけど……」



 ダンテの言う言葉は事実だ。

 自分がまだ清らかな身で過ごせているのも、売られず、子も産まされずに済んでいるのも。親しい仲間内にも自分が《男》だと偽り、その嘘をつらぬき通しているからに過ぎない。

 女の姿のままでいたならば、今頃どうなっていたかわからない。それが、今自分たちが住んでいる場所の現状なのだ。




「しかも、昨日お前が見ていたガキなんか、孤児院の前に()てられてたガキだろ? なんでお前が自分の睡眠まで削ってみてるんだ」

「孤児院に来てくれたんなら、あの子はもう僕の家族だからだ」

「……捨てられたガキだぞ」

「母親だって自分の手で育てたかったのかもしれない。望まない出産を強いられるものよくある話だろ」



 言いつつ、ジッと彼の赤目を見据えると、ダンテはぐぐっと眉間にシワを寄せてこちらを睨んだ。それを正面から受け止めた上で「でも、自分一人では無理だと判断したから、孤児院(ここ)を頼ってくれたんだろ」と、穏やかに続ける。




「よかったよ。どうしようもなくて、自分の手で(あや)める母親だっているのに、ここに預けてくれて」

「………ここは、ゴミ捨て場かなんかなのか?」

「ゴミなわけないだろ。みんな大事な家族で人間だ」

「…………」


 

 自分の言葉にダンテは理解しがたいと言った顔で、「………とにかく、今日はダメだ。お前は寝ろ」と続けつつ、木の棒を返そうとしてきたが笑顔で「いやだ」と断る。



「君に教わるとしたら今の時間しかないんだ。教えてくれ」

「……あのな、なぜお前はそんなに剣術を覚えたいんだ?」



 騎士にでもなりたいのか?

 そう、ダンテに問われる。



「違うよ。僕には力がないから、家族を守る力が欲しいだけだ」

「その奇妙な魔術があるだろう」



 ダンテが木の棒を握る右手を指さす。まだ神聖力として完全覚醒していない力。自分は右手を見つつ「あぁ、これか」と返す。




「これで人は傷つけられないし、僕が教えてほしいのは《傷つけるための力》じゃない」


 

 またダンテを見る。夕日に照らされた彼の赤い瞳は太陽のような輝きを放っていて綺麗だ。

 彼は自分の瞳を毛嫌いしていたが、自分はその鮮烈に輝く《紅》が大好きだった。



「守るための力が欲しいんだ」

「……また意味の分からんことを」



 呆れたように「俺の剣術は人を斬りつける(ワザ)で、凶器だ。守るだとかなまっちょろい気持ちで覚えるな」と厳しく指摘される。



「しかし、ここが一番《盗賊》に狙われやすい場所なのは知ってるだろう?」

「…………」

「領主様は基本不在。大人はたまにくる(シスター)くらいで、子供しかない。男だって僕らが最年長(さいねんちょう)だ」

「俺がいるだろ……」

「君がいない時にここを狙われたら?」

「………」


「頼むよ、ダンテ。僕は君たちを守りたいんだ。そして、その技術をもっているのは、君だけなんだ」




 一歩、彼に近づく。

 彼は予想外に逃げなかった。自分の瞳を探る様にジッと見つめて、その意志を確認しているようだった。

 だからこそ、ひときわ瞳に力を込めた。




「僕に教えてくれ」



 自分が、彼の《赤い瞳》を(この)ましく思っているように、彼がこの奇妙な《虹色の瞳(プレシャスオパール)》を、気に入ってくれているのは知っていた。

 お互い、無いものねだりなのだ。




「教えた後に寝ると約束するか?」

「する」

「お前の『する』は信用ならん」

(ひど)い!!」

「酷くない。約束しておいて結局今夜もガキを見るんだろうが」



 どっちが(ひど)いんだ、と言われて唇を噛むことしかできない。完全に行動を読まれている。さすが9歳から16歳までの7年間、そばで自分を見続けてきた彼だけある。



「す、すまな……」

「俺と交代(こうたい)だ」

「え?」

「お前が寝ている間は俺がガキを見ておく。だからお前は寝ろ」

「でも、そうしたら君が」

「最年長組は俺らだけなんだろう?」



 じゃあ、俺らでガキを見るしかないだろう。

 険しかった目線を悪戯に細めながら、彼はそう言った。

昨日は更新できずすみませんでした……。

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