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40☆つまり、そういう事っすよね?!《ラザロの場合》②




「ラザロ様!! ラザロ様!!!」



 聖女の気配が完全に消えたくらいのところで、その影が小声で焦ったように話しかけてくる。空気の読める影だ。

 振り返ると、そこにいたのは昨日ラザロを叩き起こした若い神官だった。



「どうした?」

「ラザロ様!! ヤバいです!! 大変ですって!!」

「お前、私が高位神官だって理解して話してるのか?」



 呆れたようにラザロが若い神官に問う。

 実はこの若い神官。彼もラザロと同じ貧民街出身なのだ。そのため、口調はたまに粗暴になることもあるが貧民から神官になっただけあり、実力は確かなものがある。

 そして、同じく貧民街出身のラザロに何かとなついている神官の一人でもある。



「いや!! これはこんな口調になるくらい本当にヤバいんですって!!」

「お前、いつもそうだな。それで? それは聖女に聞かれたら困る内容なのか?」

「ヤバすぎて神殿爆発します」

「そりゃヤバいな。話してみろ」



 神殿爆発はちょっとおもしろいな、とラザロが不謹慎にも興味津々で先を促すと、若い神官が「まず、ベアトリーチェ・スカーレット嬢が昨日皇宮で《違法薬物製造・不正流通の疑い》でアズーリ騎士団に逮捕されて!!」と続けたので、一気に空気が変わった。



「はぁ!?!? なんだと?!?」



「そうなんです!! ラザロ様が神殿に帰ってきた後、令嬢は皇宮に行ったらしいんですけど、その先で逮捕されて投獄されたらしくて!!」


「クソッ……それを早く言え!!」



 違法薬物の製造だと!? んなわけあるか!!

 もし、本当に令嬢が関わっているのなら《鑑定スキル》持ちの自分をわざわざ自室によんだりしないだろう。

 不正流通に関しては、彼女というより父親の方が確かにきな臭くはあるが、それなら娘のために高位神官である自分を公爵邸に呼ぶことを許可しないだろうし――アズーリ聖騎士団は何を根拠に令嬢を拘束したのか。

 


 もっと早くに気付いてやれれば、せめて《投獄》なんて事態は免れただろうに。

 ラザロが舌打ちし「ならば私は今から皇宮に向かう! ほかの者には市内巡回に行ったと伝えろ!」と若い神官に言うも、その神官に思いっきりローブを引っ張られた。



「な ん だ ?!?!?!?」


「待ってください!!」


「まだ何かあるのか!?」


「あるから止めてんですよぉッ!!」 



 ラザロもだが、若い神官も大分混乱しているようだ。

 そういえば、確かに《ベアトリーチェ・スカーレットの投獄》なんて話を聖女リリィに聞かれたところで《神殿が爆発する》とは思えない。

 むしろ、「これで悪は成敗されましたね!」なんて喜びそうだ。まぁこれはさすがに偏見だが。


 もしかすると、本題はここからなのか? と、察しのいいラザロが、一時停止して若い神官に向き直る。




「ならば本当にヤバい話とはなんだ?」

「それがですね………」



 若い神官も掴んでいたラザロのローブをいったん開放して、呼吸を整える。

 何回か深呼吸したあとで、「確かに、令嬢は《投獄》されたんですけど、今は《牢獄内にはいない》ようで」と語る。



「どういうことだ? 釈放されたという事か?」

「あ、いえ、疑惑はまだ晴れてないっぽいです」

「というより、なんでお前はそんなに詳しいんだ」

「友達が皇宮の警備してて、昨日夜勤だったみたいで。わざわざ勤務上がりの足でここまで遊びに来てくれて教えてくれたんです」

「……………」



 おれ、交友関係広いんスよね~~!! と自信満々に言うが、守秘義務が息をしていない。お前も友達もどうかと思う、と言いたいが話が進まない上に聞いてしまった以上自分の共犯なので観念し「それで?」ととりあえず先を促した。



「そう!! それでスカーレット嬢が投獄はされたんですけど!! スキルも持ってないし悪女だから~って看守もなしに牢獄に放り込んでたらしいんですよ!!」


「…………クソだな」


「俺もクソじゃんって言いました! んで、友達は優しいんで可哀そうだな~って思って令嬢を見に行こうとしたらしいんですね! そしたら、なんと!! あの皇帝陛下がですね!! 牢獄に来てたみたいで!!」



「皇帝陛下が……?」




 脳裏に先ほど浮かんだ死んだ魚の目が浮かぶ。

 先の戦争で、死神と呼ばれただとか、戦闘狂とよばれただとか、色んな噂はあるが圧倒的な絶対覇者のオーラを持つ皇帝陛下が、何故彼女に――まさか、と青ざめる。


 



「令嬢は……無事なのか!? まさか《拷問》にかけられたのか?!」

「ン゛ン゛ン゛~~~~~そう!! そこなんですけどぉ~~~~ッ!!」





 焦りのあまり、若い神官の肩を掴んで問いただす。すると、なぜか神官は途端に歯切れ悪くなり、頬を赤らめだした。なんだこいつ、気持ち悪いなという顔をしていると「顔ォ!」と指摘された。



「友達曰く、拷問された様子はなかったみたいで」


「なら何をしに皇帝陛下は牢獄に出向かわれたんだ」


「それが、皇帝陛下がなぜか令嬢を牢獄から連れ出したみたいで」


「は?」


「しかもぉ、そのあと、どうやら自室に令嬢を連れ込んだっぽくてぇ………」



「…………は?」



「俺も、よ、よくわかんねーんスけどォ…!! それって、つまりっ…《そういう事》ッスよねぇッ……?!!?」




 皇帝陛下大好きな聖女様がこんなの聞いちゃったら神殿爆発しちゃいますよねぇ?!

 そう顔を赤らめる神官。

 確かに、その情報を聖女に聞かせないという判断は間違いなく《最適解》だ。 

 しかし、誤算もあった。




「はあああああああああ?!?!?!!?」




 ラザロも爆発したからだ。

 ラザロは渾身のがなり声をだしながら、尋常でない猛スピードで神殿をそのまま飛び出し、馬車で眠りかけていた御者を叩き起こすと「スペクトル城へむかえ!! 今すぐにだ!!!」と高位神官らしからぬ形相で脅したのだった。


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