表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
“デッドライン・シフターズ”  作者: オタ ナオカズ
第一章 はじまり
4/17

第4話 川井 花

次の日


朝日が窓から眩しく差し込み、昨夜の雨が嘘のように晴れ渡った青空が広がっていた。ジンは目を覚まし、タバコに火をつけて、窓の外を見つめる。部屋のソファで寝ているリンは、静かに穏やかな呼吸をしている。


しばらくすると、玄関の方から足音が聞こえ、ドアがノックされる。


「おはようございまーす!」


明るい声と共に、川井花が元気よく入ってきた。玄関で靴を脱ぎながら、ジンに挨拶する。「おっはよう、ジン。外、すっごく晴れてるよ!まるで昨日の雨が嘘みたいね。」


「昨日拾った子だ。ちょっと厄介なことになっててな…とりあえず、ここで休ませてる。」ジンは短く答えると、またタバコを吸い、外の風景に視線を戻す。


「ふーん、そうなんだ。でも、ここなら安心だし、大丈夫よ!」花は微笑み、気軽に話を受け流しながら、荷物を机に置いた。


リンがまだ眠っているのを見て、花は声を少し低くして、「今日はどんな仕事?」とジンに尋ねる。


「まずは、鈴木のおばあさんの屋根修理だ。昨日の雨でまた屋根が漏れたらしい。その後は、町内のゴミ置き場のフェンス修理だ。何かで壊されたらしい。」ジンは次の仕事のことを考えながら答える。


「忙しいわねぇ。まあ、ジンならすぐ片付けるでしょ。」花が微笑む中、玄関の方からカイが軽快な足取りで入ってきた。


「おっはよう、花さん、ジン!」カイがニヤリと笑いながら、袋を手に持って事務所に入ってきた。「リンちゃんの朝ごはんもちゃんと買ってきたぞ。」


「おっ、気が利くじゃん!」花が笑顔でカイを見やる。


「それで、何買ってきたんだ?」ジンがカイを見ながら尋ねる。


「パンとコーヒー、リンちゃんにはジュースとサンドイッチだ。」カイは袋から朝ごはんを取り出しながら、「さ、みんなで朝ごはん食べて、仕事に行く準備でもするか!」と明るく言った。


「お、主役がしっかり朝ごはんまで調達するとは珍しいな。」花が冗談めかして言うと、カイは胸を張りながら「当然だろ、今日は俺が主役だからな!」とふざけた調子で応じた。


「えぇ、主役?屋根修理の?」花がからかうように笑うと、カイは少し照れながら、「いや、まぁ…鈴木のおばあさんも俺に惚れてくれるかもな」と冗談を返す。


「そりゃ、80歳を超えたおばあちゃんがカイくんみたいな若造に惚れ込むこと間違いなしだわ!」花は大きく笑い、カイも「もうちょっと若い方が良いんだけどな」と肩をすくめて返した。


「ま、主役はお前に任せるさ。」ジンが冷静に言い放つと、カイは一瞬間を置いてから、「いやいや、そこは助けてくれよ、ジン!」と苦笑した。


「じゃあ、リンちゃんは私が見ておくから、安心して行ってきてね。」花はリンを見つめ、優しく微笑んだ。「この子、すぐ慣れるわよ。


カイが袋から取り出したサンドイッチとジュースをテーブルに並べると、ジンがリンに目をやった。「リン、起きろ。朝だぞ。」


リンはソファで静かに寝ていたが、ジンの声に反応して目をこすりながらゆっくりと起き上がった。「…おはよう…」


「おはよう、リンちゃん。」元気な声で花が挨拶する。彼女はリンに向かって柔らかく微笑みながら、「私は川井花、みんなからは花って呼ばれてる。今日はよろしくね。」と自己紹介をした。


リンはまだ少し眠そうだったが、起き上がって花を見つめ、緊張しながらも小さな声で返した。「…笹川凛です。リンって呼んでください…」


「リンちゃんね。いい名前じゃない!よろしくね、リンちゃん。」花は優しい笑顔を浮かべ、リンの名前を親しげに呼んだ。


「ありがとう…」リンは少し照れながら、ジュースを手に取った。


そのやり取りを見ていたカイが、軽い口調で「さ、みんなで朝ごはんにしよう。リンちゃん、ちゃんと食べないと元気出ないぞ。」と笑顔で言った。


「そうだね、朝ごはんは大事だからね。リンちゃんも遠慮せず食べてね。」花が促すと、リンは少しだけ恥ずかしそうにうなずき、サンドイッチを手に取った。


テーブルを囲み、みんなで食事を進める中、少しずつ会話が始まる。


「リンちゃん、昨日は大変だったみたいね。少しは落ち着けた?」花がリンに優しく尋ねた。


リンは一瞬戸惑いながらも、「はい…皆さんが優しくしてくれて…少し安心しました。」と控えめに答える。


「よかった。それにしても、ジンが女の子を連れてくるなんて珍しいことだね。」花が冗談めかしてジンに言うと、ジンは特に反応せずにパンをかじっている。


カイが笑いながら「そうだよな、ジンが女の子の面倒を見るなんてちょっと想像つかないよな。」とからかうように言うと、ジンはただ一言「余計なことを言うな」と冷静に返した。


「でもリンちゃん、ここは安全だから安心していいよ。私もいるし、何か困ったことがあったら何でも言ってね。」花は優しい声でリンに声をかけた。


「…ありがとう。」リンは少し緊張しながらも、花の優しさに少しずつリラックスしてきた様子だった。


「そうだ、今日は何か手伝ってもらおうか。簡単なことから始めてみようか?」花がリンに声をかけると、リンの表情が少し明るくなり、興味深そうに花を見つめた。


「…手伝い?うん、私やってみたい!何か私にできることあるかな?」リンは少し嬉しそうな声で返事をした。


花はその反応に微笑み、「もちろん、あるわよ。ちょっとした書類整理とか、お掃除とか、難しくないから安心してね。」と優しく説明する。


「お掃除とかやったことあるよ!それならできるかも!」リンは少し自信を持ったように話し、期待に満ちた表情を浮かべていた。


「そうね、じゃあ一緒にやってみようか。」花はリンの頭を軽く撫で、「一緒にやれば、きっと楽しいよ。」と微笑んだ。


リンは花に笑顔を返し、「うん、がんばる!」と嬉しそうに頷いた。


その様子を見ていたカイが、「おっ、リンちゃん、早速花さんの助手か。俺たちが帰ってくる頃には、バッチリ事務所がピカピカになってるかもな。」と軽い冗談を飛ばす。


「そしたら、リンちゃんがこの事務所のプロフェッショナルだね。」花も冗談を返し、リンと二人で笑い合った。


その後、ジンがふと立ち上がり、「俺たちは鈴木のおばあさんの屋根修理だ。リン、しばらく花とここにいろ。」と淡々と告げた。


「じゃあ、リンちゃんは私と一緒にお手伝いして、ここで待ってようね。」花が微笑みながらリンに声をかけ、リンも控えめに頷いた。


玄関で靴を履きながら、ジンがふとカイに耳打ちするように言った。「仕事が終わったら、あの住所の場所に行くぞ、準備しておけ」


カイは少し驚いた表情を見せながらも、「わかった。あの住所だな…」と確認する。


「そうだ。夜にはそっちに向かうから、仕事はさっさと片付けておけよ。」ジンは冷静に告げ、カイは「了解」と短く答えた。


二人は仕事の準備を整え、事務所を後にした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ