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“デッドライン・シフターズ”  作者: オタ ナオカズ
第三章 研究施設
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第16話 研究施設。潜入。

夜の闇に包まれた道を車が静かに進んでいく。ジンが運転し、隣には吉野が地図を手に持っている。後部座席にはルシア、リン、そしてカイが座り、全員が真剣な表情で目的地を見つめていた。


「ここから少し進むと研究所の近くだ、バレないようにこのあたりで車を止めて歩いていこう。」吉野が地図を指差しながら説明する。


ジンは静かに頷き、適当な空き地を見つけるとゆっくりと車を止めた。エンジンを切ると、あたりは一気に静まり返り、緊張感が漂う。ジンが後部座席に向かって「降りるぞ」と声をかけると、全員が無言でドアを開けて車を降りた。


夜の冷たい空気が体を包み、全員が身震いする。研究所のわずかな光が遠くに見えるが、それ以外は完全な闇に覆われている。


カイが小声で「さあ、いよいよだな…」と呟くと、ルシアが少し微笑みを浮かべて答える。「心配しないで、私たちならやれるわ。」


ジンは吉野に向かって軽く頷き、「案内は頼んだ」と言う。吉野も短く頷き返し、「もちろん。まずは入り口を目指す。」と前方に歩き出す。


リンがジンの手を握りしめながら、「本当に大丈夫だよね…?」と不安そうに尋ねると、ジンは彼女の頭を軽く撫でて「心配するな」と静かに励ます。


数分の静かな歩行の後、ようやく研究所の巨大な入口が見えてきた。まるで廃工場のように見える建物は無機質で、冷たい雰囲気を放っている。


吉野が再度みんなに振り返り、低い声で指示を出す。「ここからは慎重に行こう。私の指示に従って進んでくれ。」


全員がうなずき、緊張を漂わせながら静かに歩き、 

入口に着くと。


吉野が腰からカードキーを取り出し、小声でみんなに「静かに。これでセキュリティを解除するから、音を立てないように。」と指示を出す。ジン、カイ、ルシア、リンがそれぞれの位置に立ち、彼の背中を見守る中、吉野は慎重にカードキーをリーダーにかざした。


「ピッ…」という低い電子音が響き、機械が短く作動音を立てる。ドアのロックが解除され、重々しい金属製のドアがゆっくりと開いていく。


「よし、行こう。」吉野が小声で言うと、ジンが先頭に立ち、彼に続いて全員が中へと一歩踏み入れた。


室内は薄暗く、人工的な冷気が肌に触れる。足音をできるだけ抑えながら進むと、無機質な廊下が続いており、ところどころに監視カメラが設置されている。吉野は慎重に前を確認しながら手で合図を送り、全員がその指示に従ってゆっくりと廊下を進んでいく。


カイが小声でジンに囁いた。「本当にセキュリティ抜けられるのか…?なんかゾッとするぜ、この場所。」


ジンは無表情のまま短く答えた。「今は余計なこと考えるな。気を引き締めろ。」


ルシアも周囲を警戒しながら、低い声でリンに言う。「大丈夫、私たちが一緒にいるからね。」


リンは少し不安そうな表情を浮かべつつも、しっかりと前を見つめてうなずいた。


吉野が手を挙げて立ち止まり、再びカードキーを使って次のドアを開けた瞬間、廊下の向こうから二人の武装した警備員が近づいてくるのが見えた。ジンが瞬時に後ろの仲間たちを止めるために手を挙げ、全員がその場で足を止めた。


カイが小声で「やばい、どうする?」と囁くと、吉野がすぐに応答する。「落ち着いて。まずは自然に振る舞うんだ。会話で乗り切るしかない。」


警備員たちはすぐに彼らの存在に気づき、近づいてきた。「おい、お前ら、何してるんだ?」一人が厳しい視線を向けながら尋ねてきた。


吉野が冷静に答えた。「新人の研修中です。初めての現場なんで、見回りのルートを確認してるところです。」


警備員は少し疑いの目を向けるが、目を細めて彼らを見回し、小さなリンに視線を移した。「あんたたち、そんな子供まで連れて何をしてるんだ?ここは遊び場じゃないんだぞ。」


リンが緊張で小さく身をすくめると、カイがすかさず割って入り、笑顔を浮かべながら言った。「あ、彼女ですか?ここの新たな天才分析官です。見た目に騙されちゃダメですよ。彼女がいなければ、ここでの情報整理がうまくいかないんですから。」


ジンも負けずに冷静な顔で続ける。「俺たちのサポート役です。規則通りにやっているので問題ありません。」


警備員たちは一瞬戸惑った様子だったが、リンに再度視線を向け、疑い深そうに言った。「天才分析官ねぇ…。随分小さなサポート役だな。」


ルシアが微笑んで、軽く頷きながら言った。「彼女は実力があるんです。本当に頼りにしてますから。」


警備員たちはため息をつきながら肩をすくめ、完全に納得したわけではないが、特に追及することもなく引き下がった。「分かった…ま、頼むから邪魔だけはしないでくれよ。」


警備員たちが去った後、全員が小声で安堵の息をつき、ジンが低い声で言った。「なんとか切り抜けたな。行こう。」


地下1階に降り立つと、空気がひんやりと冷たく、どこか異様な静けさが漂っていた。長い廊下を進むたびに、かすかな呻き声や鎖が揺れる音が耳に届き、ジンたちは緊張感を隠しきれずに歩を進める。


やがて、一際頑丈そうな鉄扉の前に辿り着いた。扉の向こうから、重苦しい気配が漏れ出しており、その先に何かがいることを感じさせる。


吉野が小さく息を呑み、低い声で言った。「ここがシフターたちの収容エリアだ。慎重に行こう。」


全員が鋭い目つきで互いを見つめ合い、ジンがゆっくりと手を伸ばし、扉に触れる。そして、静かに押し開けたその先には、想像を超える光景が待っていた…

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