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“デッドライン・シフターズ”  作者: オタ ナオカズ
第二章 転移者(シフター)
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第15話 デバイスの完成の連絡

デバイス完成の当日、朝の事務所には、いつもと変わり少し緊張した空気が漂っていた。ジンがコーヒーを淹れ、カイは忙しない様子で部屋を行ったら来たらしている。リンはテーブルで絵を描き、ルシアは窓際で外の様子を眺めていた。


そのとき、事務所の電話が急に鳴り出した。花が電話に出ると、しばらく受話器越しに相手の話を静かに聞き、やがて少し驚いたような表情を浮かべた。そして、ジンに向き直り、声をかける。


「ジン、吉野さんから電話よ。」


ジンは一瞬顔を上げ、眉を少しひそめながら立ち上がって花から受話器を受け取った。


「吉野か。久しぶりだな。」


受話器の向こうから、どこかほっとしたような吉野の声が聞こえてきた。


「ジン、元気そうだな。ついに、デバイスが完成したんだ。これで準備が整った。」


ジンは短く息をつきながら、少しだけ微笑んで返事をした。「そうか、長かったな。無事完成して良かったよ、吉野。」


電話を切ったあと、ジンは振り返ってみんなに向けて静かに頷いた。「よし、デバイスが完成したらしい。全員、準備を整えて吉野のところに向かうぞ。」


ジンの言葉に、カイがちょっとした興奮を隠しきれない様子で声をあげた。


「やっとか!吉野のじいさん、頑張ったんだな!」


ルシアはジンの言葉に小さく息をついて、ほっとした表情で微笑んだ。


「やっと…本当に自分の世界に帰れるのね。こんな日が来るなんて、少し信じられない気持ちだけど…」


その言葉には、長い間抱えてきた不安や焦りが少しずつ解き放たれていくような安堵感がにじみ出ていた。


リンは少し不安げにジンを見つめ、「ジン、あの…危険なことはないよね?」と小さな声で尋ねた。


ジンは優しくリンの頭を撫でて微笑んだ。「心配するな。俺たちがついてる。何かあっても、お前をちゃんと守るからな。」


リンはジンの言葉に安心したように頷き、みんなが準備を整え始める中で小さく「ありがとう、ジン…」とつぶやいた。


数十分後、全員が準備を終え、事務所を出発した。車の中でカイが窓の外を眺めながらふと呟いた。


「デバイスが完成したってことは、これから何かが大きく動き出すってことだよな。今までとは違う展開が待ってる…覚悟はできてるぜ。」


ジンは静かにハンドルを握りしめながら、遠くを見つめて答えた。「ああ、ここからが本当の勝負だ。全員、気を引き締めろ。」






車を走らせ、彼らは吉野の元に到着した。


ジン、カイ、リン、そしてルシアが吉野の家に到着すると、玄関の扉がすぐに開き、吉野が笑顔で出迎えた。


「やあ、久しぶりだな、皆。」吉野は穏やかな微笑みを浮かべ、4人を迎え入れる。


ジンが軽く頷いて返事をする。「ああ、久しぶりだ、吉野。どうやらデバイスが完成したらしいな。」


吉野は誇らしげに頷いた。「そうだ、ついに仕上がった。長い道のりだったが、これで準備は整ったぞ。」


カイが興味津々に周囲を見回しながら話しかける。「デバイスってどんな感じなんですか?想像するだけでワクワクするんだけど。」


吉野は少し笑い、「カイ君もワクワクしてくれてるとはな。まぁ、実際に見てみてのお楽しみだ。」



リンは少し緊張した様子で吉野に近づき、「あの…本当にこれで、みんな無事に帰れるの?」


吉野は優しい眼差しでリンを見つめ、「そうだよ、リンちゃん。みんなのためにできる限りの準備をした。これで無事に君たちを送り出せるはずだ。」


ジンが肩の力を抜くように小さく息をつき、「…そりゃあ良かった。無事に行けるなら、それで十分だ。」


吉野は頷き、真剣な表情で部屋の奥へと案内し始めた。「さあ、デバイスを見せよう。説明も合わせてしていくから、ついてきてくれ。」


吉野はデバイスを指さし、説明し始めた。「このデバイスにはリンの特殊な能力を引き出す機能も組み込まれている。リンの力がこの装置と組み合わされば、異世界への転移精度が格段に上がる。」


ジンが眉をひそめながら問いかける。「つまり、リンの能力を使って異世界への座標を安定させるってことか?」


「そうだ」と吉野は頷いた。「リンの能力は、異世界の座標を正確に視認する力を持っている。通常、転移には誤差や危険が伴うが、リンの力を活用すれば、計画どおりに送り先の世界へ到達できるんだ。」


ルシアは少し驚いた表情で、リンの方を見やる。「つまり、リンの力がこのデバイスの成功に不可欠ってことね…そんな役割を持っていたなんて。」


リンが少し不安げに吉野を見上げると、吉野は安心させるように微笑んだ。「安心してくれ、リン。君の力はただ装置のサポート役だ。それ以上のことは必要ない。」


ルシアが静かにほっとした表情で聞き入る一方で、ジンは真剣な眼差しを吉野に向けた。「だが、まだ気になることがある。研究所には捕らわれているシフターたちがいるんだろう?そいつらをどうするつもりだ?」



ジンの問いに吉野は、淡々と説明した。


「ルシアとリンを元の世界に送り返す方法についてだが、このデバイスには小型のレーザーポインタのような光が備わっている。このレーザーをシフターに向けて照射し、スイッチを押すと、彼らが元いた世界に転送される仕組みになっているんだ。」




ジンがその説明を聞きながら頷き、「つまり、このレーザーを当てたシフターが自動的に元の世界に戻るってことか?」と確認する。


吉野は頷きながら続けた。「そうだ。ただし、捕らえられているシフターたちを順番に解放するが、ケイジだけは例外だ。」


ジンはその名前に反応し、「ケイジ?そいつはどんな奴なんだ?」と問いかける。



吉野は少し考えた後、真剣な表情で答えた。「彼は…超能力支配線から来た初めてのシフターだ。強大な力を持つ男で、長年ファントムセクターに囚われている。彼が持ち込んだある物体が異世界転移装置の基礎となっている。それゆえに、装置を破壊するためには、彼の知識とその物体が必要なんだ。


「装置の元となった初めてのシフター?…つまり、ケイジを解放して、彼に装置のキーを壊させるってことか?」ジンが理解を深めようと問いかける。



吉野は頷き、「ああ、ケイジを助け出したら、装置を破壊し、装置の元となった物を彼の世界に持ち帰ってもらう。彼の協力があれば、装置を完全に破壊し、二度と悪用されることはなくなるだろう。このデバイスでルシアを元の世界に送り返し、リンをパラレルワールドに飛ばす。これで目的は達成できる。」



吉野は少し表情を引き締め、ファントムセクターの拠点について語り始めた。


「ファントムセクターの本拠地は、都市の外れにある工業地帯に隠されている。表向きは廃工場のように見せかけているが、内部は完全に改装され、研究施設になっている。」


吉野は地図を取り出し、拠点の場所を指しながら続ける。「このエリアは監視カメラやセンサーが張り巡らされていて、不審者を発見するとすぐに武装兵が動く。シフターたちもここに閉じ込められていて、厳重な拘束具でその力を封じられている状態だ。」


吉野はカードキーを差し出しながら言った。「これを使って侵入してくれ。このカードキーで許可を入れるから、正面から警備員のように入り込むことができるようにしてある。」


ジンがカードキーを受け取りながら少し疑問の顔を見せると、吉野は続けた。「それから、警備服とIDも用意しておいた。みんなこれに着替えて、中では警備員を装って行動してくれ。私も一緒に行くから、何かあれば現地で対応する。」


カイが肩をすくめながら、「なんだかスパイ映画みたいだな…」とつぶやいた。


吉野は地図を指しながら続ける。「一階を抜けたら監視エリアを通過する。そこさえ越えれば、地下にシフターが収監されているエリアがある。まずはそこでケイジを見つけて、彼の協力を得ることが最優先だ。」


ジンが深く頷き、カードキーを確認した。「ケイジを見つけた後はどうする?」


「その後は三階にある異世界転移装置に向かうんだ。装置は厳重に保護されているが、君たちの力ならきっと破壊できるはずだ。デバイスを壊せば、シフターたちも元の世界に戻ることができる。」


ジン、カイ、ルシア、リンはそれぞれ決意を固め、警備員の服に身を包んでファントムセクターの侵入準備を整えた。

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