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“デッドライン・シフターズ”  作者: オタ ナオカズ
第二章 転移者(シフター)
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第12話 魔法訓練



カイ、ジン、リン、そしてルシアは少し町から離れた広い原野に到着していた。辺りには人工物が少なく、視界を遮るものもない平坦な場所だ。


ルシアが一歩前に出て、腕を組みながらジンに言う。


「じゃあ、今から魔法の基本を教えるわね。」


ジンはうなずきながら「頼む」と短く返事をする。


「まず、知ってるかもしれないけど、魔力を生み出すには魔原核が必要なの。ジンにはそれがあるから、あとは魔力を感じる訓練から始めるわ」ルシアは説明しながら、ジンの前に立った。


「今、魔力って感じる?」ルシアが問いかける。


ジンは首を振り、「いや、全然感じないな」と答えると、ルシアは少し微笑み、「じゃあ、まず魔力を感じるところから始めるわ。手を出して」と促した。


ジンが手を差し出すと、ルシアはその手に自分の手を重ね、目を閉じて集中する。「今から少し魔力を流し込むから、どんな感覚があるか、しっかり感じて」


ジンはしばらくすると、体の中に微かな力の流れを感じ始めた。「なんとなく分かった気がする」


ルシアはうなずき、「分かったら、その魔力を私の手に向けて集めるイメージで、送ってみて」と指示する。


ジンは目を閉じて集中し、魔力をルシアに送る感覚を試みると、ルシアが「ちゃんと魔力は流れてるよ!すごい、飲み込みが早いわね。才能あるんじゃない?」


ジンが少しだけ照れたように、「そうか?初めてだからよくわからんが」と返す。


ルシアは頷き、「いや、本当に上手よ。この調子なら、すぐに基本の魔法も使えるようになるかも」と軽く励ますように言った。


「次はその魔力を、魔法として発動するの。知識が必要なんだけどね…」そう言ってルシアはバッグから分厚い本を取り出し、ジンに差し出した。「これは私の世界の魔法書。古代の魔法言語で書かれてるけど、まずこの本に魔力注いで開いてみて」


ジンが本に手を乗せて魔力を送り込むと、パチッと音がして、魔法書が開いた。しかしページを見つめて、「…読めないな」と困った顔をする。


するとカイが興味津々に近づいてきて、「見せてくれよ!これが魔法書か?」と覗き込むが、やはり内容は理解できない。


ルシアが笑って、「それは当たり前。これは私の世界の古代言語だから、こっちの人には読めないのよ」と言った。


カイは不思議そうに「てか今思ったんだけど、なんでお前は普通にこっちの言葉が話せるんだ?」と尋ねた。


「私の世界にはね、人だけじゃなく、獣人やエルフなんかもいるの。種族ごとに言語が違うから、それぞれと話すためにはこの魔法が必要なのよ」


カイが興奮した様子で、「え、じゃあその魔法があれば、こっちでも外国人と普通に話せるってことか?」


ルシアは微笑み、「うん、使えば喋れるわよ」


カイはさらに目を輝かせて、「マジか!俺にもその魔法かけてくれ!」



「じゃあ、俺たちにもその魔法をかけてくれよ!」とカイが頼み、リンも「私も!」と興奮気味に言う。


ルシアは少し考えたあと、「まあ、3人にくらいならかけてあげるわ」と言いながら微笑み、 ルシアは少し手を前に差し出し、目を閉じて集中した。



そして、静かな声で「真言縛(ユニヴォークス」と唱えると、彼女の手から柔らかな光が広がり、ジン、カイ、リンを包み込んだ。


リンは目を輝かせながら光を見つめ、「すごい…」と呟いた。


光が消えると、ジンは手にしていた本をぱらぱらとめくり始めた。「お、これ…読める。今まで何も理解できなかったのに。」とすこし驚きの表情を浮かべる。


「よかった。じゃあ、今から自分に必要な魔法を考えてみて。」ルシアが微笑んで促す。


ジンは少し考え込みながら言った。「俺には再生能力とそれなりの力はあるけど、体が追いつかなくて力が分散してる気がする。それじゃ攻撃力が足りないんだ。体を強くする方法とか、何かないか?」


「それなら、身体強化系の魔法がぴったりだよ。あと、フレアみたいな基本的な攻撃魔法も覚えておけば、いろいろ使えるから便利だと思う。」ルシアが真剣な表情で答える。


「なるほど…それなら、まずは身体強化から試してみるか。」ジンは頷き、本のページをめくりながら内容を確認する。


するとカイが興味津々でジンの背後から覗き込み、「ちょっと俺も見せてくれよ!俺もやってみたい!」と楽しそうに言った。彼は指を突き出して呪文のように「フレア!」と叫んでみるが、何も起こらなかった。


ルシアはそれを見てクスクスと笑らう。



カイは悔しそうに肩を落とし、「やっぱり俺には無理なのか…残念だなぁ。」とため息をつく。


だが、カイは何か思いついたのかルシアに尋ねた。

「言語理解の魔法が人にかけられるなら、身体能力強化も同じようにできるんじゃないか?それを俺にかけて、戦力強化にはならないのか?」


ルシアは軽く首を振り、「『真言縛ユニヴォークス』は魔法でもあるけど、実は呪いの一種なの。もともと異種族同士の争いの時に、言葉が通じない相手から情報を引き出すために開発された呪いで、唱える者の魔力しか必要としないから、誰にでもかけられるの」と説明した。


カイはなおも疑問を抱えた様子で、「じゃあ、なんで身体強化は同じようにできないんだ?」と続けた。


「身体強化は呪いじゃなくて、純粋な魔法だからよ」とルシアは言った。「魔法は、魔力を持つ者の力を引き出す形で効果を発揮する。もしも、対象者が魔法の使いすぎで魔力が尽きたとしても、魔原覚さえあれば、かける側が自身の魔力を注いで補助することは可能。でも、そもそも魔原覚を持たない者には、その魔力を保持する器がないから、魔法の効果が発揮されないのよ。」


カイは少しがっかりしたようにため息をつきながら、「そうか…俺もジンの横に立って戦いたかったんだけどな…」と呟いた。


ルシアは優しい表情を浮かべながら、「あなたの気持ちは十分わかるわ。でも、ごめんなさい。魔原覚がないと、どうしてもできないの」と申し訳なさそうに言った。


その様子を見ていたジンは、笑いを堪えながらカイの肩を軽く叩いて「まあ、俺が代わりに覚えるから。お前の分も頑張ってやるよ。」と冗談混じりに言う。



リンは楽しそうにその様子を見ていて、「ジン、すごい!魔法を覚えるんだね!」と興奮気味に言った。


ジンはリンの反応に少し照れながらも、「ああ、頑張ってみるよ。お前を守れるぐらいには強くなりたいしな。」と答える。


その後、ジンはルシアに教わりながら、ひたすら魔法の練習に励んだ。彼の集中力と真剣な眼差しに、カイも「お前、本気だな」と感心した様子を見せた。


それからジンは、毎日仕事が終わると夕方に野原へ向かった。長い一日を終えても、疲れた体を引きずるようにして足を運び、ルシアとの修行に臨む。薄暗くなり始めた空の下、彼は黙々と魔法の訓練に打ち込んでいた。


日が沈みかけた頃、風が肌寒さを増し、周りが静寂に包まれる。そんな中でもジンは集中を切らさず、ルシアの指導に耳を傾け、徐々に力を引き出そうとする。繰り返しの鍛錬が続くうちに、日が暮れるとカイがやって来て見守ることも日常の一部となっていた。


ルシアが「もう少しよ、その調子」と励まし、ジンは「わかった、もう少しやってみる」と答えた。彼の手のひらに、小さな光がちらちらと現れ始めた。


カイが驚いたように「おい、ジン、すげぇじゃん!」と叫び、リンも目を輝かせながら「すごいよ、ジン!」と声を上げる。


ジンは小さな成功に少しだけ笑みを浮かべ、「よし、これならもっといけるかもしれないな」とさらに練習を続けた。


幾日も同じように夕方を過ごす彼らの姿に、次第に修行が生活の一部となり、夕暮れ時の野原には新たな緊張感と期待が漂っていた。


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