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“デッドライン・シフターズ”  作者: オタ ナオカズ
第二章 転移者(シフター)
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第11話 初めての味噌汁


朝の穏やかな光が差し込む中、ジンは窓際でタバコを吸いながら外を眺めていた。眠たげな足音が近づいてきて、リンが眠そうに目をこすりながら小さな声で「おはよう…」とあいさつする。


「おはよう、リン」とジンが静かに返し、そのままタバコを消す。


そこへカイが元気よく「おはよー!朝からいい匂いするな!」と言いながらリビングに入ってきた。彼が顔を上げると、キッチンで花が手際よく料理を作り始めているのが目に入る。


「おはよう、花さん」とカイが明るく声をかけると、花がにっこり笑って「おはよう、カイ。朝から卵焼きと鮭、味噌汁を作ってるのよ」と答えた。


その香りに惹かれるようにルシアもキッチンに近づき、「本当にいい匂いね」と感心するように言い、ふと鍋を見つめる。「何この茶色い汁…」


するとカイがすかさず、「それが味噌汁ってやつさ。うまそうだろ?この世界の料理だよ」と得意げに説明する。


ルシアは興味深げに「なるほどね、見た目はともかく香りはいいわね」と言いながら、茶碗に注がれる味噌汁をじっと見つめる。


やがて、花が「さぁ、みんな座って食べて」と声をかけ、朝食がテーブルに並ぶ。みんなで食卓を囲み、和やかな会話が続く中、リンも少しずつ目が覚めて元気を取り戻していく。


花が卵焼きと焼き鮭、そして湯気の立つ味噌汁をテーブルに並べ終えると、みんなが席に着いた。カイが目を輝かせながら、「いただきます!」と勢いよく手を合わせ、早速卵焼きに箸を伸ばす。リンも少し眠たそうな目を擦りながら、「いただきます…」と小さな声でつぶやき、卵焼きを一口食べてにっこりと微笑む。


「これ、おいしい!」とリンが嬉しそうに言うと、花が微笑みながら「よかった、リンちゃんの口に合って嬉しいわ」と優しく答える。


ルシアも不思議そうな表情を浮かべながら、恐る恐る味噌汁をすすってみた。少し驚いた表情をしながらも、「…これ、いいわね。温かくてほっとする味」と満足げにうなずいた。


カイは焼き鮭をほおばり、「うまい!やっぱり朝はこれだな!」と頷きながら食べ続ける。ジンも黙って箸を進め、朝食をゆっくりと楽しんでいる様子だった。



朝食が終わると、みんなが「ごちそうさまでした」と声を合わせた。花は片付けをしながら、ふと微笑んで「みんなとこうして朝ごはんを食べられて、本当に良かったわ」としみじみと呟く。その表情に、ジンも少し驚きながらも微笑みを返す。


ジンとカイはゆっくりと立ち上がり、それぞれ身支度を整え始める。ジンがさっとジャケットを羽織り、仕事用のバッグを肩にかけると、ルシアに向き直り言った


「とりあえず今日は頼んだぞ。何かあったら、すぐに連絡してくれ」


ルシアは軽く頷き、「わかった。しっかり見てるから、安心して行って」と静かに答えた。その言葉にジンも安心した様子で、少しだけ頷き返す。


玄関に向かうジンとカイを、花とリンが見送る。リンが小さな手を振りながら「気をつけてね!」と言うと、花も「いってらっしゃい、無理はしないでね」と優しい声で送り出した。二人は「行ってきます」と軽く手を挙げて、事務所を後にした。



夕方になり、オレンジ色の光が街を包む中、ジンとカイが仕事から戻ってきた。


玄関の扉を開けると、ほんのりと温かい照明の光が出迎えてくれる。ジンはふっと疲れを漏らし、肩をほぐしながら靴を脱ぐ。カイも同じように靴を脱ぎながら、軽く背伸びをして疲れを和らげた。


「ただいま」とジンが静かに声をかけると、奥から花が顔を出して「おかえりなさい」と微笑みながら返事をした。リビングの方を見ると、リンが楽しそうにテレビでアニメを見ており、

ルシアは傍らで様子を見守りながら、小さな本を読んでいる様子だった。


リンはジンとカイに気付くと、嬉しそうに立ち上がって小走りで駆け寄り、「おかえりなさい!」と元気に言いながら二人に笑顔を向けた。ジンはその様子にほっとした表情を浮かべ、リンの頭を優しく撫でた。


ルシアも軽く手を挙げて「おかえり」と言い、視線をジンに向ける。「こっちは問題なかったよ。仕事は順調だった?」


ジンは頷き、「そうか、まぁ、特に問題はなかったよ」と軽く応え、肩の力を抜いた。カイも「今日は平和だったな、たまにはこういう日も悪くない」と笑いながら言った。


ジンはルシアとリンの穏やかな様子を確認し、「そっちも問題なさそうだな」と安心した表情を見せた。リビングに全員が集まり、心地よい疲れとともに穏やかな空気が広がった。


ルシアが「そろそろ行くか」と立ち上がったとき、ジンが「ああ」と返すと、リンが「どこ行くの?リンも一緒に行く!」と興味津々に問いかけてきた。


ジンは「いや、お前はここにいてくれ」と答えようとするが、カイが「いやいや、ここにジンもルシアもいなくなったら、守る人いなくなるだろ?連れて行った方が安全なんじゃないか?」リンに向かってにやりと微笑む。


ルシアが少し呆れたように「…あんたが行きたいだけでしょ?」と突っ込みを入れると、カイは「いやいや、別に俺は…そんな行きたくて仕方ないわけじゃないけど…ほら、リンが…」と少しばつが悪そうに言い訳をした。



ジンは少し考え、「確かにそうだな…リン、一緒に行くか?」と優しく声をかけると、リンは大喜びで「やったー!」とジャンプしながら手を叩いて喜んだ。


その様子を見ていた、花が口を膨らませ、冗談っぽく「なんか私だけお邪魔者みたいね?」と肩をすくめる。少しため息をついた後、「まあいいわ。今日はもう帰るね。みんな気をつけて」と言って笑顔で手を振った。


ジンは「ありがとう、花。すまなかったな」と礼を言い、花は微笑んで少し手を振りながら帰っていった。



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