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“デッドライン・シフターズ”  作者: オタ ナオカズ
第二章 転移者(シフター)
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第10話 よろしくね。

ジンたちは車を降り、「便利屋サブロー」に到着した。玄関の扉を開けると、すでに中で待っていた花とリンが出迎えてくれた。花は微笑みながら、腕を組んで彼らを見つめていた。


「遅かったわね、ジン」と花が軽い調子で声をかける。


リンもすぐに顔を上げて、「遅すぎ!」と少し拗ねたように言う。


ジンは申し訳なさそうに頭を掻きながら、「悪かったな、遅くなって」と謝った。


花は優しく笑い、「大丈夫よ。リンちゃんと仲良くおしゃべりしてたから、ね、リンちゃん?」と言って、リンに視線を送る。リンは小さく頷いた。


「で、そちらは?」花がルシアを見て、少し不思議そうな顔をする。


「俺の知り合いだ。しばらくここにいてもらうことになった」とジンが簡単に説明する。


「へぇー、そうなんだ」と花が興味深そうに言った。


ルシアは一歩前に出て、軽く頭を下げながら自己紹介をした。「初めまして、ルシアと言います。よろしくお願いします。」


花は微笑みながら少し前に出て、「こちらこそ、私は花、よろしくね。」と自己紹介をした。


リンも続いて、少し恥ずかしそうにしながらも、「私はリン、よろしくお願いします。」と挨拶をする。


花は微笑みながら、少し近づいてカイにささやくように言った。「なんか綺麗な人が来たわね。」


その言葉にカイは思わずアタフタし、顔を赤くしながら「え、あ、そ、そうだな…」としどろもどろに答える。


花がそんなカイの様子を見てクスクス笑い、「冗談よ」と手を後ろに回した。


そのやり取りを見守っていたジンが、「花、俺たちが帰ってきたし、もう休んで大丈夫だ」と軽い口調で言う。


花は笑いながら「わかった。じゃあ、また明日ね!」と手を振り、帰っていった。




ジンたちが一息ついた後、ルシアはリンの方に顔を向け、少し優しげに微笑んで声をかけた。


「リンちゃん、って言うのね。初めまして、私はルシアよ。」


リンは少し緊張した様子で、じっとルシアを見つめていたが、すぐに顔を上げて笑顔を見せた。「うん、ルシアさん。はじめまして。」


「なんだか、不思議な力を感じるわね。リンちゃん、特別な力を持っているんじゃない?」ルシアは優しく、しかし興味深そうにリンに問いかけた。


リンは少し戸惑った表情を見せつつも、うつむき加減で答えた。「うん…私、よくわかんないけど、お父さんとかがそう言うの。でも、普通の子供だよ。」


ルシアは微笑みながら、リンの頭を軽く撫でた。「大丈夫よ、誰にでも特別な力があるわ。きっとその力は、いつか自分を守ってくれるはず。」


リンは不安そうに顔を上げ、「本当に…?」と小さな声で尋ねた。


ルシアは力強く頷いた。「もちろん。私も似たようなものよ。私も昔、自分の力が何なのか、どう使えばいいのか分からなかった。でも今では、その力で大切な人を守ることができる。だからリンちゃんも、焦らずに信じて。」


リンは少し安心したようで、「うん、ありがとう」と微笑んだ後、ふと好奇心が湧いたように聞いた。「ねぇ、ルシアさんはどんな力を持ってるの?不思議な力を持ってるの?」


優しく、「私、魔法が使えるよ」と言って、リンを見つめる。


リンは目を丸くして驚いた。「えっ、本当に?すごい!魔法が使えるの?」


ルシアは微笑んで頷き、「うん、見せてあげるね」と言うと、指先を軽く上げて小さく呪文を唱えた。「フレア。」


すると、ルシアの指先に小さな火がポンッと現れ、ふわっと揺れた。


リンの目はキラキラと輝き、「すごい!本当に魔法だ!」と興奮気味に叫んだ。


その瞬間、カイも興奮した様子で、「え、え?それが魔法なのか?すげぇ!本物だ!」と大きな声を上げた。


そんなカイを見てルシア自信満々に言った。

こんなの簡単よ。なんてたって私は天才魔導師なのよ。」


カイは首を傾げて言った「うんーでももうちょい派手なの期待してた」


ルシアは鋭くカイに答えた、「こんなところで派手なの使ったらみんな死ぬでしょ…」と言って、指先の火を消した。


リンはまだ興奮したままで、「本当にすごい…魔法が使えるなんて、すごいね!」とルシアを見つめて、さらに感心した様子を見せた。




リンが興奮して魔法を見た後、少し経つと、疲れたように眠りについた。


ジン、カイ、ルシアはリンが寝ているのを確認してから、テーブルに集まり、今後の話を始めた。


「で、今後どうするんだ?」カイがジンに尋ねた。


ジンは腕を組み、「まあ、吉野のおっさんが言ってた通り、装置が完成するまで待つしかないな」と冷静に答えた。


「そうだな…でも、リンちゃんが特定されるのも時間の問題かもしれないわね」とルシアが冷静に言った。


ジンは頷いて、「そうかもな。まだファントムセクターは動いてないみたいだが、油断はできない。とはいえ、ルシアがいるから心強い」と続けた。


カイは冗談交じりに笑って、「確かに、ルシアがいるし、魔法が使えるってすごいよな。次はもっと派手な魔法も期待してるぜ」そう言って肩をすくめた。


ルシアは軽く笑いながら、「魔法は確かに強力だけど、私一人で全部相手にするのは無理よ。それに、ファントムセクターは今この瞬間も技術を進めているかもしれない。油断はできないわ」と淡々と答えた。


「確かにな…俺たちも普通に生活しながら待つしかないな」とジンは少し考え込むように言った。


ジンがルシアに目を向け、「リンのことはお前に任せる。お前が見てくれるなら安心だ」と頼んだ。


ルシアは頷いて、「任せて。できる範囲で守るわ。でも、気を抜かないでね。ファントムセクターは何をしてくるかわからないから」と冷静に答える。


その後、ジンがふと思い出して言った。「そういえば、昨日リンを助けたとき、顔が傷だらけの男と戦った。多分シフターだろうと思うが、

あいつのこと知ってるか?」


ルシアは少し眉をひそめて、「知ってるわ。あいつはファントムセクターに協力してるやつよ。実は、昨日の夜、私もリンを追ってた時、あの傷のある男ともう一人がいたの。

リンを見つけて助けようとした時にもう一人のやつが邪魔してきて、そいつとやりあったんだけど、逃げられたわ」と答えた。


カイは驚いて、「なんでお前、魔法使えるのに勝てなかったんだ?強いんだろ?」と疑問を口にした。


「街の中だったから、強力な魔法は使えなかったのよ」と言うと、ルシアは指先からさっきよりも少し大きい火の玉を出して見せた。「さっきもみせたけど、これが本物のフレア。火炎系でも一番弱い魔法よ。でも、これでも鉄のフェンスを溶かすぐらいの力があるわ。」少し見せたあと

、火の玉は小さくなって指の先から煙となって消えた。


カイは驚いたように、「え?ゴミ箱のフェンス溶かしたのお前か?あれ、俺たちが直したんだぞ…」


ジンは少し鼻で笑って、「まあ、そんな強力な魔法なら、簡単に使えるわけがないよな」と冷静に言った。


「そうよ、簡単には使えない」とルシアが軽く肩をすくめて答えた。


ジンが続けて、「俺は昨日あの傷だらけのシフターと戦ったんだが、全然効かなくてさ。だから、魔法を覚えたい。もしまたあいつが現れたら、倒せる力が欲しいんだ。」


ルシアはさらっと答えた。「大丈夫。攻撃系、防御系、強化系、いろんな魔法があるけど、強化系なんかが一番この世界の戦いにいいとと思う。攻撃魔法でもさっきのフレアぐらいなら、簡単に覚えられる。」


ジンは真剣な顔で、「それなら早く覚えたい。明日、仕事が終わったら教えてくれ。」


「わかった。人それぞれ覚えやすさは違うけど、教えれば覚えられると思う」とルシアは軽く返した。


リンがねこどにしながら、「ああ、ありがとう…」と小さくつぶやいた。


ジンがそれを見て、静かに言った。「もう遅い。みんな、今日は寝てくれ。」


カイも少しあくびをしながら「そうだな、明日もあるしな」と言い、席を立つ。


ジンがルシアに向かって、「あの部屋、使ってくれ。リンと一緒に頼む」と言った。


ルシアは短く頷き、「分かった。ありがとう」と静かに応え、リンを抱きかかえて部屋へ向かった。


ルシアがリンを抱いて部屋へ向かうと、ジンとカイはその後ろ姿を見送り、静かに息をついた。


「これで少しは安心だな」とカイがつぶやく。ジンは黙って頷きながら、暗い窓の外を見つめた。


「明日はまた、色々動き出すだろう。今は休もう」とジンが静かに言うと、カイも疲れたように肩をすくめ、二人はそれぞれの部屋へと向かっていった。


夜の静けさが、少しだけ落ち着いた空気を取り戻していた。

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