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義妹のギャルに初恋を奪われた話  作者: 白藍まこと
本編

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38 恋愛相談


 他にも条件を検証してみる。


 ④ラインの返事が早い


 結崎といた時のラインも即既読、即返事が返ってきた。

 いや、でもハルは家でもスマホを触っている時間が長いから、たまたま見ていただけかもしれない。


 ⑤褒めてくる


 あまり、褒められたような経験はない気がする。

 相手を褒めるという事は、その存在を認めているという事。

 それがないという事はハルは私のことを好きというわけではないわけで……。


「今日のご飯なに?」


「唐揚げよ」


「いえーい、澪の料理は美味いから楽しみだぜ」


「……」


「え、だんまり?」


 褒められた!?

 そうだ、ハルは私の料理に関しては太鼓判を押してくれている。

 どうしよう……今のところは条件が全て一致してしまっている。


 判断に迷う。

 そもそもネットの情報など鵜呑みにしてもいいものか。

 私はどうするべきか。

 これは事の発端に聞かねばならない。




        ◇◇◇




「……どういう風の吹き回しなの、これ」


 休日の昼下がりお喫茶店にて、目の前には訝しがる結崎(ゆいざき)がいた。

 彼女は白のワンピースを着ており、黒髪ツインテールもあいまって清楚感が漂っている。

 注文は前回と同じで私はアイスコーヒー、結崎はカフェモカだった。

 呼び出した理由は単純明快。


「ハルが私の事を好きかもしれないの」


「ぶふっ」


 吹き出していた。

 汚い。


「あんた、わたしの服汚す気!? 何考えてんのよっ!?」


 間一髪、服には飛び跳ねなかったようだ。

 しかし結崎は憤慨し続けている。


「貴女が言い出した事でしょ?」


「確定事項を言っただけで、また改まって呼び出されるような事じゃないのよっ。何事かと思ったじゃないっ」


大事(おおごと)よ」


「黙りなさい。だいたいわたしはもう知らないって前回言ったはずだけど!?」


「そんな無責任は許さないわ」


「ただの世間話に責任なんかないでしょっ、他の人に相談すればいいじゃないっ」


「相談できる相手がいないわ」


「ふん、哀れなぼっちね」


「そうね」


「否定しなさいよっ、わたしが気まずいでしょうがっ」


「事実は認めるしかないわ」


「あんたには白花(しらはな)ハルがいるんじゃないのっ!?」


「そうだったわ」


惚気(のろけ)んなっ!」


 ……なんだこれ。

 中身のない会話のラリーを繰り返している気がする。

 特に声を荒げている結崎は肩で息をして苦しそうだった。


「……はあ、まあいいわ。話くらいは聞いてあげるけど」


「当然でしょ」


「別に聞かなくてもいいんだけどっ! あんたもうちょっとわたしに譲る姿勢を見せなさいよっ!」


 やはり声を荒げる結崎。

 どうにも普通の会話ですら、私と結崎との間では難しいらしい。

 とは言え、ハルの事に関しては彼女くらいしか話せる相手がいない。

 相談に乗ってもらわないと困る。


「条件を整理してみると、ハルが私の事を好きな可能性が高い事に気付いたのよ」


「……まあいいわ。もうツッコまないで聞いてあげるけど」


「それでも仮に、仮によ。ハルが本当に私の事を好きだったとしたら、どうすればいいと思う?」


「……え、なにそれ」


 結崎は目が線になりそうなほど細い目になって聞き返す。

 関心を失ったのかもしれないが、そんな興味のなさそうな態度はやめてもらいたい。


「言葉の通りよ。どうすれば最適解になるのかしら、私はハルとの関係性を壊したくないわ」


「……まあ、真剣に聞いてるのは何となく分かったから答えてあげるけど」


 そう言う結崎がずっと面倒くさそうな面持ちなのが気になるけれど。

 今回は私がアドバイスを求めているのだから文句は言えない。


「そんなのあんたの気持ち次第でしょ」


「私の気持ち……?」


「そりゃそうでしょ。色恋沙汰なんて他人がどうこう思ってもどうしようもないわ、当事者同士の話だもの」


「それはそうだろうけど」


「だから、あんたが白花ハルをどう思っているかなのよ」


 私がハルの事をどう思っているか……。

 もちろん大事な人だと思っているけれど。


「要は“恋愛感情が有るか無いか”って事よ」


「……」


「自分が持っている気持ちを相手に託すのが信頼でしょ。それの最たる感情が恋愛じゃない」


「……そう、なのね」


「そうよ、だから白花ハルとの仲を続けたいならあんたがその気持ちに応えるかどうか。親友でいたかったとしても答えは出してあげないと、あの子が可哀想よ」


 そこで初めて結崎はハルを“可哀想”と表現した。

 結崎がハルをそんな風に同情めいて話すのは初めてだと思う。


「で、そこんところ。どうなのよ?」


 結崎が問いを返す。

 それはつまり、私がハルの事をどう思っているかだ。


「……どうだろう。ハルの事を好いてはいるけれど、これが恋愛感情なのかと問われれば自信はないわ」


 ハルと他の人では違う。

 違うけれど、恋愛感情というもう一つ奥の感情に当てはまるのかは分からない。

 そんな深い感情を私は持ち合わせた事がないから。


「……ふぅん。まあ、あんたがどういう感情を持っているかなんて、あんたにしか分からないから何とも言えないけど。そこを整理すれば自ずと答えは出るんじゃない?」


 結崎は肩をすくめながら話を締めくくる。

 でも、それはその通りで。

 全ては私の気持ち次第で、私がどう結論づけるかだ。

 勿論、本当にハルが私の事を好きだったなら、の話だけれど。


「ありがとう、参考になったわ」


「ふん、本当なら無視しようと思ったけど。ちょっと白花ハルに同情しちゃったから思わずアドバイスしちゃったわ」


 結崎もハルに肩入れした事を認める。

 本当に珍しい事もあるものだ。


「珍しいのね、結崎がハルに共感するなんて」


「……報われない恋がツラい事くらいはわたしも分かるわよ」


 少しだけ、結崎は伏し目がちに声に影を落とす。


「貴女も苦労しているのね」


「ふん、いいのよ。まだチャンスはありそうだから、わたしはこれからよ」


 しかし、すぐにその瞳に輝きが灯る。

 そこにはいつも通りの結崎がいた。


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作者さんの小説に出てくる女の子の「〇〇しなさいよっ!」の語尾が毎回可愛い
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