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箱庭の景色

「ビアンカさん、終わりました」

 

 僕がそうと言うと、ビアンカは「ありがとう。お疲れ様、シオン」と言って微笑んだ。

 

 ハルがいなくなってから、残された僕たち三人は、商館と庭の雑用を任せられるようになった。

 何日か置きに、僕たちのうちの一人に雑用が割り当てられる。作業する時は、いつもビアンカかライアンが傍についていた。

 今日は僕が芝刈りをする日で、ビアンカは日陰に設えられた椅子に座っている。

 

「ビアンカさん、芝刈り機って高いんでしょ?」

 

 僕はずっと気になっていたことを尋ねた。

 この家の芝刈り機は、使い切りの電動タイプのようだった。つまり、中に充填された魔石のエネルギーを使い切ったら、機械ごと廃棄するしかない。そういった機械は、国の機関から送電される電気を使う家具よりも何倍も高価――というよりもコストパフォーマンスが悪い、というのが僕がクシカで得た常識だった。

 

「良く知ってるのね?」

「うん、僕のお父さん、商人だったから。お父さんが話しているのを聞いたことがある」

 

 そう言うと、ビアンカはちょっと驚いたような顔をした。

 

「そうだったのね……。確かに芝刈り機は高いけど、これはうちの商会が取り扱っている製品だから、値段はあんまり関係ないの」

「ビアンカさんも商人なの? 鉱山もあるのに?」

 

 ビアンカが魔石の鉱山を持っているらしいことは、ユーリから聞いた。

 ここ最近は、個室の鍵は解放されていて、僕たちはお互いの部屋の行き来が許されている。だから、時々ユーリの小言を聞かされることもある。

 

「そうね、鉱山はそんなに儲からないのよ」

 

 僕は、むむ、と唸った。

 僕たち三人は、今、大した仕事をしていない。大して汚れていない部屋を掃除して、ほとんど伸びていない芝生を刈っているだけ。しかも、その間ビアンカかライアンが監視についているから、人件費ばかりが嵩んでいるはずだった。

 ビアンカがちゃんと利益を出しているとしたら、ハルが相当仕事をしていることになる。でもビアンカはハルにそんなことをさせないだろうから、多分、僕たちを買った利益なんて出ていないのだろう。

 

「そんな心配しなくて大丈夫よ」

 

 僕が考え込んでいると、ビアンカはそう言って、僕のぺたんと下がった耳を撫でた。

 ああ、また耳が動いちゃった、と反省する。みんな、僕の耳やしっぽが動くのを嫌がる。

 でも、この世でビアンカだけが、それを許してくれるみたいだ。


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