表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
109/139

頭痛

「ヘレンキース伯爵様、何故私の無礼を許して下さったのですか?」

「くくっ……やっぱり、自覚があってやっていたのか。ということは、許される、と確信したから、そうしたんだろう?」

「確信、という程ではないですが。何だか、何でも知っているようにお見受けしたので」

「そう。まあ、君の無礼を許した理由は、概ね君の予想通りだろうね。でも、何でも知ってる、というのには、さすがの私も全面的に肯定はできないな。もちろん、大筋は知っている。報告書で5割、現地に赴いて3割把握したというところか。あとの2割は、私もまだ測り損ねているよ」

「ヘレンキース伯爵様、私は――」

「いいや、いいよ。ここで熱弁されても、私には今一つ響かないだろうから。それに、君自身、この先の身の振り方を決めかねているんだろう? まだ、ここへ来たばかりだ、それも無理はない。今の状況を良く見て、これからゆっくり決めていけば良い。ただ、ビアンカ嬢を愛しているのならば、彼女を失いたくないのなら、彼女の幸せについて、よく考えて欲しい」

 

 頭が痛い。

 一体、何なんだ。

 

 マルセル?

 名前を聞いてすぐ、ピンときた。

 マルセルにあれを送っておいて、これを送っておいて、金を送っておいて――。

 来週マルセルに会いに行くから、デートね、楽しみね――。

 

 最初は、何とも思っていなかった。

 気の多い人間なんて、珍しくもないし、今更なんとも思わない。

 それに、ビアンカのその気質は「博愛」と呼ぶに相応しいものではないかと、むしろ好意的に受け取ることさえできた。

 でも、それがハルの想い人となると、話は変わってくる。

 ハルが、俺たちのような獣人が、誰かと番を共有するなんて、無理な話なのだ。

 本人がいかに努力し耐え忍ぼうと、いつかはその性に押し負けてしまう。そうして悲惨な末路を辿った同胞は、一人や二人ではない。

 だから、ビアンカはやめとけ、と言いたかった。

 しかし、言おうと思った時には、もう遅かった。

 ならば、目を瞑るべきだと思った。

 思った矢先に、当のマルセルがここにやって来た。

 挙句の果てに、ヘレンキース伯爵と、はかりごとをしている。

 

 よろよろと立ち上がり、部屋を出る。隣の部屋に押し入り、後ろ手にドアを閉めると、ベッドに横たわる男と目が合った。

 ユーリは、気味悪いものを見るような顔で、こちらを見ている。

 

「ユーリ、お前、マルセルのこと、知ってたのか?」

 

 お前はなんであの時、あんなに不機嫌だったんだ。

 あの男が何者なのか、知っているのか。

 あいつが何をしに来たのか、知っているのか。

 

「はあ? 知らねーけどさ、あいつ多分、ビアンカと昔から関係あると思うぜ。前にビアンカは、シオンを見ていると自分の大切な人を思い出す、って言ってたけど、それって多分、あいつのことだろ」

「……」

「あいつがビアンカの婿になるならそれでも良いかなーって思ったけど、でも、なんか癪に障るんだよな、あいつ。あ、ハルにはまだ言うなよ。お前から話すと、ろくなことにならないから」

「……」

「ていうか、顔にも出すなよ。言っておくけど、お前、ハル以上に上の空でおかしいからな。わかったら、さっさと出てけ。あと、いい加減ノックを覚えろ」

「……」

 

 頭が痛い。

 片手で頭を抱えると、ひとりでに重い溜息が出てきた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ