捕らえられた獣
散々殴られて、意識が朦朧としていた。
おまけに手足は縛られ、頭には麻袋を被されている。
そんな中でも、奴らがざわめき始めたことは、すぐにわかった。
耳を澄ますまでもなく、奴らの会話が聞こえる。
「何? 四匹とも売れたのか?」
「ああ、キーリー男爵が四匹まとめて買うってさ」
「商品も見ずにまとめ買いか。噂通りの好色家だな」
「まあ、男爵にとっては安い買い物だろ。こいつら牛よりも安いからな。戸籍もないから、飽きたらいつでも殺せるわけだし」
下卑た笑いが耳につく。
最悪な気分だった。
あと少しで、国を渡れたのに。
俺たちはこの国では、家畜と同じか、それ以下の価値だ。いや、前の国でだってそうだった。
せめて、出くわしたのが軍人だったのなら、見逃されただろう。彼らにとって、手負いの獣人など大した価値もないものだろうから。
だが、運悪く、俺たちが出くわしたのは猟銃を持った狩人だった。
獣人は強いが、何日も満足に食事が摂れず衰弱した状態で、銃を持った人間相手に抵抗するのは難しかった。ましてや俺一人の問題ではない。他の三人が撃たれるようなことがあってはならない。
もといた山の中でじっとしているべきだったのだろうか。
でも、いつだってひもじい思いをしていたし、まだ成人もしていないシオンがガリガリに痩せていく様を、これ以上放置できなかった。
獣人を保護している国があると聞いた後、藁にもすがる思いでその山を後にしたその選択は、間違っていたのか――。
それでも、「四人まとめて」、というのは不幸中の幸いに思えた。
今は無理でも、いつか必ず俺が、刺し違えてでも、他の三人を逃がす。
のんびり連載したいと思います。