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奈落の悪魔と雨に踊れば  作者: 青山喜太
出会い編
5/63

第5話 いきたい

「あ、あっち! あっちにドラッグストアあるから!」


「了解! なのである!!」


 ジンドーは羽を羽ばたかせ、そして、降下する。そのドラッグストアの少し離れたところ人通りの少ない路地裏に、着地した彼は辺りを見回した。


「ふぅ! 何事もなく、あのシティから生還完了! なのであるな! 人にも見られてないし! 多分!」


 ジンドーが、降り立ったのは、アガミ市の隣の市、クロカミ市だ。

 私のいわゆる地元である。

 帰ってきた、自殺を決意していたのに、私はいつのまにか帰ってきていた。

 だと言うのにジンドーと同じく、私も安心を感じていた。


「あ、そうだすぐに! 買ってくるから! 待ってて! なのである!」


 そう言った、ジンドーは急いでドラッグストアに駆け込んだ。彼の背にはいつのまにか翼は生えていない。


 ああ、そうか。

 混乱していたが思い出した。私、怪我をしているんだった。怪我の位置は左の膝小僧。思い出してようやく痛みも戻ってきた。


 そして1分も立たないうちに、土煙が出来そうな勢いで彼は走り、路地裏に戻ってきた。

 大量の絆創膏と、消毒液、ガーゼに天然水……いやなんかプリンとか買ってきてる。


「手当てするのである!」


 どこからともなくピンセットと折り畳みの椅子を取り出したジンドーは(本当にどこから出したんだ? 見えなかった)私を座らせて、天然水で、傷口を洗った後。消毒液をガーゼて傷口に押し出てきた。


「って、し、染みる!! 染みる!! 痛いってジンドー!!」


「あ、ちょ、動かないで」


 悶えた私は足でジンドーの手に持っていた消毒液を少し蹴飛ばした。

 そして、その衝撃で思わず消毒液を噴出させたジンドーはそのまま自分の目にぶちまけた。


「マイアイィィィィ!!!」


 そんな間抜けな声を上げた、ジンドーは地面に転げ回った。馬鹿なことをしてるうちに日は暮れていく。二人の男女が痛みの訴えが路地裏に響き渡っていた。


 ─────────────


 ふぅ、と私は息を吐く、疲れた。

 結局、自分で貼った絆創膏は少し不恰好だった。


「いやあ、よかった! 傷が化膿したら命に関わるであるからな!」


「そんな大袈裟な」


「じゃあ早速、君を家まで送るのである!」


「待って!」


 私は元気はつらつなジンドーに待ったをかけた。状況を整理したかった。


 目の前にいる再び背中から光と共に羽を生やしたイケメンは首を傾げる。


「どうしたのであるか?」


「もう、あなたがその、奈落の悪魔だってことも信じる。だからその教えて欲しいんだけど」


 ジンドーは私の言葉に感激していた、私が奈落の悪魔を信じると言ったことがそんなに嬉しいようだ。腕を組み喜びを彼は噛み締めていた。


 そんな彼を無視して、私は疑問をぶつける。


「あの化物はなんだったの?」


「わからんのである」


 即答だった。少し落胆する私にジンドーはさらに話を続ける。


「化物の正体はわからんが、なぜ狙われたのかはわかるのであるぞ! 恐らく、君が自殺しようとしたことが原因なのである!」


「え?」


 驚く私にジンドーは説明し始めた。


「君は、身を投げた。風に押されたとしても、その前までは死を願って自ら死のうとした。それが生者と死者の境界を少しずらしてしまったのかもしれない」


 ジンドーが言いたいこと、それってつまり──。


「私が死のうとしたから、あの化物は、私を嗅ぎつけたってこと?」


「そう考えられるのである」


 ゾクリと、背筋が震える。


「もし、あの化物に殺されてたらどうなったの?」


「十中八九、魂は食われるのあろうな。そうなれば、死後の世界には行けないのである」


 私は唖然とした、私は楽になろうとして死を選んだ、だがもし、あの化物に食われていたら──。

 想像するだけで恐ろしい。


「普通ならあんな化物は寄り付かない、あのアガミ市が特殊だったのかもしれないのであるな」


「自殺スポットだったの……」


「?」


 首を傾げたジンドー。


「ネットで調べて……自殺するには良いって書いてあって……」


「そうか、それで、なのかもしれないのであるな、自殺スポットで有名になるほどの場所なら生と死の境界が曖昧になる、故に化け物も出るはずである」


 そう言って納得したジンドー。

 だが今の話を聞いて私は恐怖を覚えていた、もしあそこで死んでいたら、ジンドーが現れなかったら私は化物に魂を……。

 いや考えるのはやめよう。


 生きていた、それが重要だと私は思った。

 笑ってしまう、死のうとしていたのに私は今死ぬのが怖い。

 楽になると思っていたのだ私は、化物に死後まで脅かされる覚悟なんてなかった。


「あぁ、うまくいかないな、自殺まで」


 私はそうこぼした。


「まだ死にたい?」


 ジンドーが聞いた。少し寂しそうに。


「まだ、生きたいって言えない」


 私はそう返した。

 するとジンドーはニコリと笑い、そして私の袖を引いた。


「なら遊びに行こうなのである!! 今日は疲れたろうし明日はどうである? 絶対に楽しくするであるから!」


 ジンドーは笑いながらそう言う。

 私は少し考えた後、思った。

 まあ少しくらいならいいんじゃないか、って。

 まだ生きたいって言えない。でも。


「うん、行きたい。私、遊びに行きたい」


 それくらいなら思えるようになった。

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