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奈落の悪魔と雨に踊れば  作者: 青山喜太
出会い編
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第1話 邂逅!!

よろしくお願いします!

 今日で死のうと思う。

 もう疲れた、私は生きたくないんだ。だからここまで来た。

 この廃ビルの上に。


 何年か前、ここ、アガミ市で災害があった、都市直下型の大地震、その地震はとてつもない犠牲者と、破壊を伴った。


 結果インフラはまだ復旧できず、もはや誰もが住んでいないアガミ市はゴーストタウンならぬ、ゴーストシティとかした。


 政府も復興は諦めたのか、現在、建物が倒壊する恐れがあると言って、この市、丸ごと封鎖している。


 そのおかげで私は一人でここにいられる。この廃ビルの上で。フェンス越しに数々の建物の墓場を眺めながらここで死ねるというわけだ。


「お父さん、お母さんへ」


 遺書を書かなくちゃ、思い出した私はスマホの録音機能を操作し録音を始める。ああ、死んだらこのスマホともお別れなのだろうか、いやなんだこの変な気持ちは。


「ごめんなさい、今日、私死にます、理由は……もう生きてるのが辛くなりました、せっかく中学に入ったのに行けてないし……イジメ……られてるし」


 あーあ、なんだかやになるな。こんなことを両親に報告するのは。

 早く終わらせよう。


「だから、今日でお別れ、バイバイ、界ヒナタより」


 最後に自分の名前を呟いて録音を完了、そして、送信の前に少しだけ目の前の景色を見る。

 フェンス越しの景色は壊れたビルや、窓ガラスのないビルのせいで殺風景だが今日の晴天の天気と併せ持ってどこか幻想的だ。


「……行こう」


 もう、感傷に浸るのは充分。

 私はフェンスを登る。幸い、有刺鉄線はついていなかったため、なんとかフェンスの向こう側に行けた。

 そして廃ビルの縁に足をつけた瞬間、実感する。


 巻き上がる風に、今いる廃ビルの十階分の高さ。間違いない飛び降りれば死ぬ。

 誰にも迷惑をかけずに。


「ここで、死ぬ! 今日、ここで!!」


 いけない何か、息が上がってきた。怖いの? いやそんなことない、私は怖くない、大丈夫飛び降りれば楽になるから。

 そうだ遺書を、録音したやつをお父さんとお母さんに送らなきゃ……。


 ポタリと、水滴が落ちた。


 雨?

 違う私の涙だ。

 なんで今更……。

 思い出してきた、最初の日の……入学した時のこと。


 初めて制服に袖を通した時嬉しかった。

 新しい人生が始まるんだって思ったから。

 でも今の私はただの不登校児童だ。


 情けない、悔しい、消えてしまいたい。

 そうだよ、だから今日死ぬんじゃないか。


「死にたい……」


 その時だった、バン、と廃ビル屋上の扉が開いた音が聞こえたのは。


 誰かが入ってきたのか、私は思わず身構え、フェンス越しに扉を見る、扉は外開きで、開いたまま風に揺られていた。

 そしたら、その扉の影からそいつは出てきた。


 ムーンウォークで。


「フォォォォォォォォォォ!!!」


 そんな叫び声を上げて、私に目線を合わせながら出てきたのは、太ったの全身黒尽くめの男だった。


 黒い昭和の学生帽みたいな帽子に黒いストール

 そして黒い学生服を身に纏ったそいつは。屋上の真ん中までムーンウォークで歩いた後ぴたりと止まった。


 何? この状況。


 黒い髪を帽子からのぞかせるソイツはじっとこちらを見つめている。

 普通に怖い。


 すると突然、ソイツはマイクを持つように手を丸めると、それを口に持っていき──


「しゃびどびトゥオシャバダバダ」


 歌い……始めた……。


「どうか死なないで〜♪ いいことだってあるさぁァ!」


 イラッ、漫画だったらそんな効果音が聞こえてくるところだ。

 私のことをコイツには何がわかるのだろう。というか誰。


「ラララ……♪ ダメであるか」


 突然歌うのやめた、ソイツは、腕を腰に当てると笑いながらそう言った。


「あの、誰ですか貴方……何しに……」


 私はずっと持っていた疑問をやっとぶつけた。

 ソイツは少し考えた後、鏡を取り出した。鏡面を私に向ける。やめてくれ。


 鏡に映るのはダサい私、地味にな黒髪に、泣き腫らした顔、野暮ったい上下のジャージ、惨めな内面が滲み出しているそんな気がした。


「君の笑顔を取り戻しにきた」


 鏡に映る私を指しながらソイツは言った。

 ふざけてる。

 なんなんだ、この男は


「何言ってるかわかんない! ここからいなくなってよ! 私これから死ぬんだから!!」


 思わず私は声を荒げてそう叫んだ、初対面の人にここまで強く出れたのはなんでなんだろうか、自分でもよくわからない、多分、少し気が動転してるせいなのかもしれない。


 これから自殺するんだから、だからきっとそのせいだ。少しだけ私を嫌な人間にしているのかも。


「ふむ、吾輩はそうは見えないな」


 でもソイツはそんな私に対して一歩も引かない。


「吾輩にはよくわかる、人は誰かに助けてほしい時ほど涙を流すものである君もきっと同じなのであろう?」


「そんな……こと……」


 違うといえば嘘になるでも──。


「私は──!」


 そんな時だった強風が吹いたのは。

 体が押される、踏ん張ろうとしたけどダメだった。私の体はバランスを崩して、踏み外す、ビルの外へと。


「あ!!」


 私はそんな間抜けな声を上げながら、ビルから滑り落ちる。

 落下に浮遊感が体を襲った。

 時間の流れが遅くなる、ああこれが走馬灯か。

 ようやくこれで死ねる。

 そんな時だって言うのに思わず、思っちゃった。


 ──死にたくない!!


 あーあ情けない、なんとなくわかっていたことだけれど、こんなことを思うなんて。

 最悪だ、私は、結局死にたくないな思っちゃう未練タラタラな奴なんだ。

 こんなことなら──。


 先輩に告白でもしておけば──。


 パシリと手を、私の手を誰かが握る。


「セェェフ!! なのである!」


 アイツだ黒尽くめのあの太っちょだ。


「あ……あ……」


 ダメだなんもいえない、助けられたのに何も。

 でもただソイツはニコリと笑って言った。


「もう少しだけ生きてみないであるか? 吾輩が絶対に君を笑顔にして見せるから!!」


 その言葉に私はコクリと頷いてしまった。



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