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パーティ編成

 あれから一週間が経った――。


 俺たちはいつもの喫茶店で昼食を済ませているところだ。

「とうとうボス討伐当日だね」

「緊張するなぁ。心臓がドキドキだよ」

 そう言って胸を抑える愛華。

「ま、愛華は緊張しす、しすぎなのだ。こ、こ、この私を見習え」

 アメリアが声を震わせながら愛華にアドバイスを送る。

「お前も声震えてるじゃねーか!」

 ミズさんにつっこまれて言い返す。

「寒いだけなのだ!」

「今夏だぞ」

「うるさーい!」

 アメリアがヒートアップする。

「まぁまぁ、初めてのボス戦だし、緊張するのはあたりまえだよ」

 俺はアメリアを落ち着かせる。かくいう俺も興奮して心臓は高鳴っているのだが。

「腹が減っては戦ができぬってね。まずはしっかり食べて戦いに備えよう!」

 俺たちは食事の続きを楽しんだ。



「そろそろ時間だ。少し早いけど食事バフもついたし、集合場所に行こうか」

 俺たちは集合場所である、西区にあるフィラリス広場に向かった。



 集合時間前に広場についたのだが、すでに三十人ほど集まっているようだった。

「まだ十五分前なのに、いっぱい集まってるなー」

「みんな楽しみなのよ。初めての大規模戦だし」

「とりあえず、この辺で待ってればいーか」

 その後、続々と参加者が集まっていき、集合時間の十三時になる頃には、六十人ほどの人数が集まっていた。


 今回の大規模討伐を企画した、攻略組ギルド『聖騎士団』のギルドマスターであるフランク・リュミエールが特設された壇上に上がり、今回の討伐の説明を行った。

 どうやら現在五十九名が参加しており、九人一組と十人五組のパーティを組むらしい。俺たちは自分たちのパーティ構成も考えながら周りの参加者に声をかけることにした。

 何人かには他のパーティに誘われたと断られてしまったが、なんとか五人誘うことが出来た。

 全てのパーティが組み終わった後、ある程度の情報交換の時間が与えられる。

 寄せ集めのパーティであるため、パーティメンバーのジョブの確認、所持している魔法や技を確認しておくことは、パーティ戦においてかなり優位に働くためだ。


 俺たちは互いの顔が見えるよう円形に並んだ。

「メインタンクということで、このパーティのリーダーをさせていただく深見駿です。まずは自己紹介から始めましょう」

 話を切り出し、俺たちは時計回りの順に自己紹介をした。


「以上五名は同じギルドの仲間です」

 俺は自己紹介した他の四名が同じギルドのメンバーであることを伝えた。


「次はウチの番ネ。ウチはリィゥ 美麗メイリン。ファイターだヨ。メイリン呼んでネ!」

 シニョンを両側につけた黒髪お団子頭は、テンションが高く、元気な人間の少女だ。


「次は俺だな。俺はアルバート・クレイヴン戦士だ。アルでいい。お次どーぞ」

 そう口にしたのはガタイの良い赤髪ツンツン頭だった。種族はオーガだ。


「……リラ。リラ・アークライト……。リラで大丈夫……。クレリック……です」

 消え入りそうな声で話したのは、竜人族の白髪が綺麗なショートボブの少女だった。


「次は私だな。私はリディア・ベレージナ。ランサーだ。好きに呼べ」

 その容姿は高身長で凛々しく華麗で、腰まで伸ばしたその綺麗な薄い金髪は種族であるエルフを体現していた。このような女性を容姿端麗というのだろう。


「最後は僕ですね。僕はフリッツ・シュナーベル。マジシャンです。フリッツで構わないですよ」

 薄黄緑色のショートヘアで眼鏡をかけており、理知的な雰囲気を醸し出している。種族はハーフエルフだ。


「これで全員の自己紹介が終わったね。みんな今日はよろしく!予備の武器や薬品があれば、エリカに渡してください。修理が必要な際はアメリアに声をかけてくださいね」

 「俺のアックスは重いぞ。大丈夫か?嬢ちゃん」

 「大丈夫なのです」

 エリカはそう言うと、アルさんから自分の身の丈より大きいアックスを受け取り、自身のインベントリに入れる。俺も投げナイフ等の投擲武器を預ける。順次他のみんなも武器を預けていく。

「話し合いをしている間に、装備を万全にしておいてやるのだ。みんな武器を出すのだ」

「ありがとうアメリア。お言葉に甘えさせてもらうよ。アメリアに武器を修理してもらっている間に、残りの時間で盾職、回復職、攻撃職に分かれてバフのタイミング等の話し合いをしておこう」

 俺たちはそれぞれの職に分かれて話し合いをすることにした。



「各々話し合いは終わったようだな!」

 フランクさんが声を上げる。

「それでは今より、我が同胞の神聖魔術師による転移魔法でガラリム鉱山前まで転移する。皆の者準備は良いか!?」

「おー!!」

 参加者全員の地鳴りのような声が鳴り響く。

「それでは一パーティずつ順番にこちらに来てくれ」

 一パーティずつテレポートでガラリム鉱山に飛ばされる。


 俺らの番が回ってきた。

「お願いします」

「ではいくぞ。ヌヴァール、ベルタ、フィール、セプト……テレポート!」

 俺たちの足元に黄色い大きな魔法陣が現れる。目の前が光に覆われ、次に景色が見えた時には鉱山前に到着しており、先に着いていたパーティの姿があった。


「テレポート、凄い便利な魔法だなぁ」

 テレポートは地域や町の出入り口等に瞬間移動できる魔法だ。

「私も早く覚えたいなぁ……まだスキルが二百くらい足りないよ……」

 愛華が下を向いて嘆く。

「愛華は全部の魔法上げてるから仕方ないよ」

 愛華のように全種類の魔法スキルを上げるのと、一つの魔法を集中的に上げるのでは、上りが悪いのは仕方のないことだ。

 「なんにせよスキルをあげりゃーいいさ。今日もガンガンスキル上げだぜ!」

 アルさんが威勢のいい声をあげる。


 しばらくして、全員がテレポートを完了したのを確認し、フランクさんが再び声を上げた。

「転移できてない者はいないな! それでは、皆の者! 坑道内に進むぞ!」

 

 彼の率いるパーティが先導を切り、坑道奥へと進んでいく。

 俺たちのパーティは事前の打ち合わせ通り、最後尾で背後の奇襲に備えながら後を追う。

 前の敵は、先導パーティが倒していってくれているため、俺たちとしては無駄な戦いをせず、力を温存できている半面、戦闘できずに退屈な者もいた。

「ガンガンスキル上げだ! とか言っといてまだ一度も戦えてねぇ……」

 アルさんが恥ずかしそうに嘆く。

「まぁ六パーティもいる最後尾だからな……。仕方ないだろ」

「ウチも戦いたくてモヤモヤしてるヨ!」

「我々は無駄な体力を使わず、ボス戦で活躍すれば良い」

「僕たちにも必ず見せ場はありますよ」

「私たちはどのみち戦えないから、戦闘は無い方がいいのだ」

 アメリアがそう言うとエリカが頷き同意する。


そんな話をしていると、明らかに人ではない群れの足音が聞こえてくる。

「噂をすればなんとやらってか! 戦闘準備だ!」

 脇道からゴブリンの群れが襲い掛かる。

 俺たちはすぐさま戦闘態勢に入ろうとしたところ、ミズさんが誰よりも早く反応し、直線範囲技を繰り出す。

「まかせろ! 一閃!」

 ゴブリン五体の身体が一気に真っ二つに切り飛ぶ。

「速い……!」

 リディアさんがその反応速度に驚く。

「私も負けてはいられない。ツイストランス!」

 こちらも直線範囲技であり、狭い空間で放たれた直線技は、躱すことが出来ず、後方にいた残りのゴブリン四体を真っ二つにする。二人とも坑道内の戦いを熟知しているようだ。

「そっちもやるじゃん」

 ミズさんもリディアさんの健闘を称える。


「二人ともはえーよ! 俺の分がねーじゃねーか!」

「ウチの分もとっておいて欲しかったネ……」

 アルさんとメイリンの欲求不満組が落胆している。

「早い者勝ちだろ」

「そういうことだ」

 どうやらミズさんとリディアさんは気が合うらしい。


「前のパーティから少し離されましたね。先を急ぎましょう」

 俺たちは先を進むパーティを追った。

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