ギルド結成
俺たちは北区に辿り着いたのだが、辺りは日も落ちて暗くなり始めていた。
「もうこんな時間か、ギルド会館へ行く前に先に腹ごしらえをしようか」
「賛成ー! お腹すいちゃったよー」
近くにあるお店に入り俺たちは夕食を摂ることにした。
注文も終わり、落ち着いた頃に愛華が話始める。
「そういえば、アメリアが装備を作ってくれている間にギルドの名前を何にしようかって話をしてたんだよー」
「そうなのか? 名前は決まったのか?」
「ううん、アメリアの意見も聞きたかったから、各々考えておくってことにしてて、まだ決めてないよ」
「そうかそうか」
「アメリアも皆の意見聞きながら良いの思いついたら教えてね」
「わかったのだ。ただ、考えるまでも無いのだ。『アメリアと愉快な仲間た……』」
「却下だ!」
言い終わる寸前、被せるようにミズさんが遮断する。
「何が悪いのだ!だいたい、ミズだって大した名前考えてないくせに!?」
「お前と一緒にするな。……『焼きおにぎり―ず』なんてどうだ?」
「どうだ? じゃないわよ。お兄ちゃんが好きなだけじゃない……。もう!全然考えてくれてなかったんでしょ。」
「こういうのは、考え過ぎない方が良かったりするんだよ。」
「却下ですー」
頬を膨らませる愛華。可愛いすぎだろ。
「駿だって、間抜け面してるし絶対考えてないって」
完全に見惚れて気が緩んでいたようだ。
「ちゃ、ちゃんと考えてますよ! 夢の集い『Gathering of Dreams』とかどうかな……?」
「悪くないけど略称がgodだと、なんか中二病っぽいな。愛華はどんなの考えたんだ?」
「『Fellow meeting』とか考えてた。エリカは?」
エリカは少し考え、何かを思いついた様子で口を開いた。
「では、お二人の意見を合わせて『Fellow of Dreams』というのはどうでしょうか?」
「夢の仲間……か。良いんじゃないかな?」
他の皆も賛成ムードの様だ。
「それじゃあ『Fellow of Dreams』で決まりということで」
俺たちは夕食を食べ終え、ギルド会館に向かった。
到着後、受付予約をすませる。夜だったこともあるのか、人も少なくすぐに受け付けてくれた。
「ギルド会館へようこそ。どういったご用件でしょうか?」
「ギルドを新規で作りたいのですが」
「畏まりました。まずはこちらの書類に必要事項を記入してください」
申請用紙を渡され、記入個所を指示される。
皆で近くのテーブルに移動し記入することにした。
「えーと、まずはギルドマスターとサブマスターを記入しないといけないみたいだ。誰に……する?」
「マスターは駿君でいいんじゃないかな? 戦闘での指揮も的確だし」
「えぇ!? 戦闘感で言うなら、ミズさんの方が俺より適任だと思うけど」
「ミズがマスターとかありえないのだ。駿ならば私も構わないのだ」
「いや、ありえなくはねーだろ!」
ミズさんが即座につっこむ。
「まぁ俺は面倒くさいのは性に合わねーよ。駿と、サブマスは愛華でいいんじゃないか?」
「え、私!?」
愛華が不意を突かれ、慌てて反応する。
「駿さんと愛華さんなら、私も大賛成なのです!」
少しの沈黙の後、観念したように口を開く。
「うーん……、みんながそう言うなら……」
「まぁ別にマスターになったところで俺たちの関係が何か変わるわけでもないしな」
「わかりましたよ。それじゃあ書きますね」
俺は申請用紙を埋め、受付嬢に手渡した。
「これでお願いします」
「では、こちらで手続きさせていただきますね。少々お待ちください」
三分程で受付嬢の作業が終わる。
「それでは、目の前に出てくる情報に間違いが無ければOKを選択してください」
俺の目の前にギルド情報が記載されたテキストボックスが表示される。
俺は一通り目を通す。
「問題ない。みんないいね?」
みんなが頷き、俺はOKを選択する。
「お疲れさまでした。これでギルドの登録完了です。ギルド通話やギルドホームの購入が可能になります」
「ギルド通話?」
「ギルド通話は通話アイコンを押していただき、ギルドのタブを選択していただくと、離れていてもギルドメンバー全員と通話することが可能です。ギルド通話選択時は周りの方に対して自動で音声がミュートになり、ギルドメンバー以外には声が聞こえなくなります」
「そんな機能があるんだ」
「ギルドホームですが、町の中にある空き家物件等を購入することが可能です。ギルド内で購入に必要なジェイドを貯めていただき、購入したい物件の前で取引してください。詳しいことはチュートリアルにも記載されていますので、そちらをご覧ください」
「わかりました。ありがとうございました」
一礼し、ギルド会館を後にした。
「ギルドホームかぁ、どれくらいするんだろ……?」
「まぁまだしばらくは資金不足で買えないだろうな」
「とりあえずどれくらいするのか見て回ろうよ」
「そうだね。目標金額が明確な方がいいしね」
俺たちは町の購入可能な物件を見て回った。
騒がしいところより静かなところが良いという意見から、商業エリアから離れた南区に入った。
「この辺は川も流れていて並木道もあるし、物静かで好きかも」
「俺もこの雰囲気好きかも。みんなはどう?」
全員頷いてくれる。
「それじゃあ、この辺りで探してみようか」
「空いてる物件あるといいなぁ」
「今空いてても、いざ買うときに買われてる可能性もあるのだ」
「見つかってもないのにそんなこと考えてどーすんだよ」
しばらく見て回っていると、愛華が大きな声を上げた。
「あったよ!」
川のすぐ横で、庭付き二階建ての洋風建築が目に入った。
「立地も良いし、雰囲気も良さそうだね。値段は……と」
家の表札に触れ、情報ウィンドウを表示させると二百万ジェイルと記載されていた。
「二百万ジェイルかぁ……みんなの所持金を合わせても全然足りないなぁ……」
愛華が残念そうにため息をつく。
「今度のボス討伐が成功すれば、結構な報酬金もらえたんじゃないかな?」
俺はボス討伐のクエストに多額の報酬金がかけられていたのを思い出した。
「そうなのだ。ボス討伐の報酬金が入ればかなり目標に近づくのだ」
「負けられない理由が出来たな」
「私も頑張るのです!」
みんな何だかんだでギルドハウスの購入が楽しみの様だ。
「それじゃあ、みんな! 来週までしっかりスキル上げ頑張ろー!」
「おー!」
みんなで声をそろえて士気を高めた。