二人目の仲間
「クエスト達成おめでとうございます。三千ジェイルになります」
クエスト管理者から報酬を受け取る。
「一人千五百ジェイルずつだね。はい、これ」
俺はジェイルの入った小袋を愛華に渡す。
「ありがとう!……さっそくだけど、喉乾いちゃったし先に何か飲み物飲みに行こっか?」
「そうだね。どこにあるかなぁ」
MAPを開き、店を探す。
「ここの区に喫茶店があるらしいよ」
「そんなのあるんだ。ゆっくり座って飲めるのは嬉しいね」
俺たちは喫茶店に向かうことにした。
「そーいえば、これ一応夢の中なんだよね? 味とかどうなってるんだろ?」
愛華が頭をかしげながら聞いてくる。
「んー、普通に見る夢でもなんとなく味を感じる夢も見たことあるから、俺たちの記憶から味の記憶とか引っ張ってくるのかな? とゆーか喉乾いたりしてることにも驚いてるよ」
「あぁでも、そう言われてみると私は喉乾いて水飲む夢見たことあるかも。夢の中だと色々再現できるんだね」
凄いシステムだと改めて感じる――。
「あ、あれかな? 看板が出てる」
愛華がお店を見つけたようで指をさす。
差した先にテラスのある喫茶店が目に入った。
「いらっしゃいませ。こちらでお召し上がりになられますか?」
どうやらテイクアウトも可能のようだ。
「ここでいただきます」
「かしこまりました。こちらにどうぞ」
テラス席に案内される。
「こちらがメニューになります」
ほとんど現実の喫茶店のようなメニューが並んでいる。
「俺はアイスコーヒーを一つ。愛華は?」
「それじゃあ……私はアイスティーを一つお願いします」
注文後、割とすぐに二つとも出してくれる。
俺は乾ききった喉を潤わすために出されたアイスコーヒーを一気に口に入れる。
「ぷはーっ! 運動後の冷たい飲み物はうますぎる! 身体の疲れも癒されるよ」
「ほんと、おいしー! そーいえば、途中から身体の疲れが楽になっていってたけど、もっと能力が上がっていけば疲れにくくなっていくのかな?」
「そうだね。もっとSTとかあげればいいのかな?」
「あと、こーゆーのも飲んでいくといいのかも」
愛華がアイスティーを持ち上げて言う。
「飲みだした時からバフアイコンが出てる」
愛華が出てきたアイコンを触る素振りをする。
アイコンを指で触れると効果が見れるようだ。
「MP回復効果だって」
俺も同じように出てきたアイコンに触れてみる。
「こっちはST回復効果だった」
どうやら飲み物の種類によって効果が変わるらしい。
「職業によって飲んだ方が良い飲み物があるみたいだね」
「色々飲み比べて効果を知っとかないとだな」
「うんうん。でも、よく飲むアイスティーがMPの回復で良かったー!」
「嫌いな飲み物とかが自分の職業に有利な飲み物だと嫌だしね……」
俺たちはのんびり話をしながらひと時を過ごす。
俺はふとお店にある時計を見ると、愛華と出会ってから四時間近くが経とうとしていた。
「お兄さんもうすぐ来るんじゃない?」
俺に言われて愛華も時計の方を見る。
「あ、そうかも。そろそろスタート地点に行かないと」
「俺も一緒に行くよ。お兄さんにも会ってみたいし」
「変なお兄ちゃんだよ?」
苦笑いで答える愛華。
「それはそれで楽しみだけどね」
スタート地点に到着する。
「でも、ほんと駿君のおかげで退屈せずに済んだよ。ありがとね」
「こちらこそだよ。愛華が声かけてくれてなかったら、俺はまだここでウロウロしてたかも……」
「あはは。私も一人じゃ心細かっただろうし、お兄ちゃん待ってて、ここを出れてなかったかも」
愛華が笑顔で返してくれる。……天使か!
なんてバカなこと考えていたら、一人の声が聞こえた。
「おーう。お待たせ―!」
見知らぬ男が愛華に声をかける。その姿は髪がラベンダーブルーに染まった子供のように小さい男だった。
「もしかして、お兄ちゃん!?」
「え!? お兄ちゃん?」
「ん? 誰だ、この間抜け面?」
顔に出ていたか……
「失礼よ! お兄ちゃんが遅いから、今まで一緒にパーティ組んでくれてたのよ。それに、なんでそんなに小さいの!?」
愛華も驚く小ささだったようだ。
「なんでって、アバター作成時に種族変更出来たから、一番身長が小さいドワーフ選んだだけだぞ。小さいほうが動きやすいじゃん」
「お兄ちゃんの方が小さいってなんか違和感……」
「俺は結構気に入ってんだけどなぁ。っと、悪いな。俺は都嵩、水原 都嵩だ。よろしくな!」
そう言って握手の手を出す。
俺は握り返し答える。
「深見駿です! よろしくお願いします」
「駿でいいか? 俺のことはミズって呼んでくれ。昔からのあだ名で呼ばれ慣れてる」
「オーケーです。ミズさん」
「とりあえずチュートリアルだけさっと目を通すから、ちょっと待っててくれ」
そう言ってメニュー画面を開いて真剣な目を向ける。
「この後どうしよっか? しばらくはクエスト受けてスキル上げかな?」
「そうだね。お兄ちゃんも今始めたばっかりだし」
「とりあえず、ミズさんの武器とか技を買いにいかないとだね」
「私たちも魔法とか技買わないと」
「そーいえば、俺まだ一つも技覚えてなかった……」
「お待たせ! もう大丈夫だ」
ミズさんがチュートリアルを確認し終わったらしい。
「それじゃあ、武器とか買いに行きますか?」
「そうだな、行くぞ!」
俺たちは再び武器や技、魔法を調達しに行くことにした。
ミズさんは刀のスキルを上げたいらしく、木刀を購入することにしたようだ。
俺と愛華も技や魔法を買い足し、一通り買い物を終えた。
「よーし、これで準備万全だな。この後はクエスト受けてスキル上げか?」
「そうですね。とりあえずまだスキル値が低いので、町から出てすぐのところでモンスターを狩るのがいいと思います」
「それじゃあ、クエスト受けに行こ。今度は三人だし、時間も気にしなくてもいいから、いくつか受けて行った方がいいかな?」
俺たちはクエストを受注し、リクサール平原へと向かった。
「さーて俺の初陣だな。お前らはもう一時間くらい狩ってたんだっけか?」
「そーだよ。お兄ちゃんが遅かったからだよ。早く追いついてね」
愛華が意地悪く返す。
「まぁすぐ追い抜いてやるさ」
「さぁさぁ、狩りましょう! 俺が敵を引き付けるんでミズさんはどんどん切っていっちゃって下さい!」
兄弟の言い合いに割って入るように発言する。
「あ、駿君ちょっと待ってね。防御力アップと新しく覚えた回避力アップの魔法かけるから」
愛華が詠唱してくれる。
「ありがとう! これで怖いものなしだよ」
「お兄ちゃんには攻撃速度アップの魔法かけるね」
「お、サンキュー」
俺たちはクエスト対象のモンスターを狩り続けた――。
あれから三時間程経過しただろうか――。
「こいつでラストだ!」
ミズさんが今まで戦闘していたシルバーウルフにとどめを刺す。
「これで受注したクエスト全部終了ですね」
「休憩なしだったから疲れたよー」
愛華が座り込む。
「何これくらいでへたり込んでんだよ」
「MP使い過ぎて回復させてるの。……そういえば、ずっと後ろから見てて思ったんだけど、お兄ちゃんだけなんか強くない? 動きがなめらかというか」
「あぁ、それは俺も見てて感じた。俺の動きとは全然違う……」
ミズさんの動きは俺の動きとは違い、無駄のない動きで攻撃の連携も見ていて惚れ惚れするものだった。
「そうか? あれかな、アシスト機能切って自分で動いてるからかな?」
「え!? もうアシスト機能切ってるんですか!?」
「いやだって、アシスト有りで技使うと隙も大きかったし、攻撃も繋がりにくかったしな」
「俺なんてまだまだ当分アシスト機能外せる気がしないですよ……」
「そんなに難しいか?」
「お兄ちゃんが特殊なんじゃないの……?」
「そんなことねーよ。普通だろ」
その後、色々な情報が出回ってくるが、実際アシスト無しで技を使ったり繋げたりするのはかなり高難度なようであり、ゲーム開始すぐに出来てしまったミズさんが異常なようだ。