約束の戦い
俺が戻ると、既に試合を終えた二人が声を掛けてくれる。
「おつかれさん」
「まずは三人勝ち残れたな」
「ありがとうございます。なんとか残れました……」
ウォーミングアップを終わらせたメイリンと、それに付き合っていたアルさんも近づいてくる。
「お前らなら大丈夫だろうと思ってたぜ」
「三人とも良くやったヨ、次はウチの番ネ!」
「メイリンも頑張って!」
しばらくしてリング整備も終わり、午前の最終試合が始まる。
序盤からしかけていったメイリンが攻め切り、難なく勝利を収た。
試合終了後、勢い良くこちらにブイサインをしてこちらに喜びを伝える。
これでベストエイトが出揃い、俺、ミズさん、リディアさん、メイリンの四名が準々決勝に駒を進めた。
昼食休憩のため、一度解散となり、俺たちは一旦みんなでギルドホームにて昼食をとることにした。
「みんなおつかれさまー!」
みんなでグラスを打ち付け合う。
「ぷはっー! うめー! さっきまでの鬱憤も晴れらー!」
アルさんがジュースを一気飲みする。
「アルさんも良い試合でしたよ! あのフランクさん相手に凄かったです」
「アル……頑張った……」
愛華とリラ
がアルさんを称える。
「とにかく4人ベストエイトに残ったのはでかしたのだ!」
「これで賞金が四人分確定だぜ!」
アメリアとミズさんがニヤニヤしている。
「お前たちは本当に……」
リディアさんが呆れた様子で二人を見ている。
「午後は一戦目からお二人の試合ですね」
フリッツが俺とミズさんを見て口にする。
「まぁ八人中四人も身内がいたら、当たるのは仕方ねーさ」
「お兄ちゃんと駿君の試合かぁ……どっちを応援したらいいか迷っちゃうよ……」
「どっちも……応援……する……」
肉にかぶりつきながらリラが返答する。
「午後の対戦楽しみにしてます!」
「対戦は楽しみにしてるが、負けるつもりはないぞ」
「俺もそうです!」
「どっちが上がってきても私が倒してやるがな」
「優勝はウチが貰うネ!」
「みなさんバチバチなのです……」
「これで全員負けたら笑ってやるのだ」
俺たちは談笑しながら昼食を楽しんだ。
「そろそろ時間だな。闘技場に戻ろうか」
昼食を終え、俺たちは闘技場に向かうことにした。
闘技場に着くと昼食を終えた人々でごった返していた。
「それじゃあ俺たちはここで」
愛華たち観戦組と別れて出場者入口に向かう。
午後の受付を終わらせ、時間まで控室で待機することにした。
準々決勝一試合目の開始時刻が近づき会場に移動する。
午前と違い、広いリングが中央に一つだけ配置されていた。
程なくして審判がリング中央に立ち、俺とミズさんの名前が呼ばれる。
「勝っても負けても恨みっこ無しだぜ」
「恨むとか無いですよ! ただ……」
「ただ、なんだ?」
「本気で戦って欲しいです。ミズさんここまで刀一本しか使ってませんよね?」
「あぁ、そんなことか。よく見てんな。安心しろ……お前には手ぇ抜いて勝てるとは思ってねーよ……」
ミズさんから一瞬殺気のようなものを感じ、寒気を感じた――。
俺とミズさんがリング中央で向かい合い、審判の合図を待つ。
「只今より、準々決勝第一試合を始める! 始め!」
ミズさんの今までの戦闘から、いきなり仕掛けてくると想定していたのに、構えたまま微動だにしない。
その異様な雰囲気に警戒心を緩めず、盾を構えながらにじり寄る。
もう少しでこちらの間合いに入るというところでミズさんの姿が消える。
反射的に振り向き、盾を出した瞬間に衝撃と共に斬撃音が響いた。
「よく防いだな」
「まぐれですよ……」
本当に見えておらず、盾を出したところにたまたま当たっただけだった。
ミズさんが即座に反応し、身体を捻って蹴りを繰り出す。俺は盾を蹴られ後退してしまう。
「虎閃」
なんとか盾で防いだものの、体勢を崩したところに高威力の一撃を撃ち込まれたことで後ろに吹っ飛ばされてしまう。
慌てて起き上がるも姿が見えず、周囲を見渡す。
「どこに……」
そんな言葉を発したと同時に後方から矢が突き刺さり、背中に痛みが走る。
「これは……ハイドショット……」
「ご名答。気づくのが遅かったけどな」
弓を持ったミズさんが目の前で着地すると、装備を刀二本に持ち替える。
「やっぱり凄いですね……でも、このままあっさりやられませんよ! シールドスロー!」
「盾を!? クロスガード!」
刀を交差させて攻撃を受ける。
「今だ! ソニックスロー!」
腰に装備していた二本のチャクラムと呼ばれる輪状の刃を投げつける。
「両側からもかよ! 双剣乱舞!」
盾を勢いよく弾いた後、チャクラムも二本の刃で受け流す。
「今のは危なかったぜ。まさか盾を捨ててくるとはな」
「身長の低いミズさんに盾を持ってても隠れ蓑にされるだけですからね」
「やっと俺の身長の利点がわかったか?」
ミズさんが含み笑いを浮かべる
「本当に、すばっしこいミズさんにピッタリですよ! ラディアルスロー!」
逃げ道を塞ぐように放射状にナイフを投げる。
「燕返し!」
避けずに刀で払い落とす。
「シャドーバインド!」
影を捉えたと思った瞬間、姿が消える。
「また縮地……」
振り返ると弓に持ち替えて技を放つ瞬間だった。
「五月雨!」
上空から大量の矢が降り注ぐ。
「ダメだ、避けきれない……インプレグナブル!」
無敵技でなんとか攻撃を凌ぐ。
「使ったな!グランツ、セプト、レック、アイン、ウィータ……エンチャントライトニング!」
こちらの無敵時間中の隙を使って付与魔法を詠唱完了する。
「もうすぐ効果時間終了だろ? こいつを避けきれるか!? 百雷!」
今度は雷魔法を帯びた矢が大量に降り注ぐ。
「バリアアーマー! マジックプロテクト!」
防御力と魔法耐性を上げて耐えるものの、かなりのHPを削られる。
「まだです……まだやれますよ……!」
「良い根性だ。だが、これで終わりにしてやる。鳴神!」
ミズさんが再び二刀に持ち替え、雷を帯びた刀で俺にとどめを刺そうと物凄い速さで近づいてくる。
「エクスプロードスロー!」
俺は地面に投げ技を放ち、爆発させて粉塵を巻き上げる。
「ちっ!」
爆風で後退した隙を逃さず追撃する。
「デッドリースラッシュ!」
隙をついた一撃は寸前で躱され直撃は無かったものの、ミズさんの腕をかすめて僅かにダメージを与える。
ミズさんがすぐさま反撃体制に入ったが、先ほどのダメージからか俺の身体は思うように動かずその場に立ち竦んでしまった――。
「叢時雨!」
ミズさんの高速連撃が俺のHPを十パーセント以下まで削り、その場に崩れ落ちた。
「試合終了! 勝者! 水原都嵩!」
リングを降りようと立ち上がろうとしたものの、気を失いかけて再び崩れ落ちそうになる。
「っと、危ねーな。大丈夫かよ?」
寸前の所でミズさんが抱えてくれる。
「良い試合だったぜ!ゆっくり休め」
「ありがとう……ございます」
俺は気を失った。




