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三回戦

 俺がみんなの元に戻ると、既にミズさんが帰って来ていたようで声を掛けられる。

「よっ、苦戦してたな」

「流石に二回戦ですね。強い人が残ってます」

「そんなことで三回戦勝てるのかよ?」

「なんとか頑張ります……! ミズさんは流石ですね」

「前の試合が早く終わって、相手の戦いはしっかり確認しているからな。まぁ相性の問題もあるだろうし、運も実力のうちってやつだ」

 四戦同時に行われるため、試合が早く終われば次の相手の手の内を、ある程度把握することが出来る。


「二人ともお疲れ様ネ」

「ありがとう!リディアさんとメイリンも頑張ってね」

「あぁ、こんなところで負けてはられないからな」

「まかせるネ!」


 第一試合も全て終了し、リング整備が行われる。

「次は私の番だな」

「ヘマするなよ」

「問題ない。私も一回戦は早めに終わって、相手の戦い方はある程度把握しているからな」


 リディアさんの名前が呼ばれ、間もなく試合が開始される。

 試合開始の合図と同時に飛び出し、言葉通り相手の行動を読み切って圧倒した。

 結局、相手にほとんど何もさせずに完勝し、リングを降りた後こちらに戻ってきて一言。

「つまらん。動きが想定していた範囲内だったな」

 やはり凄腕の相手には想定外の行動も必要だと感じさせられた。底を知られないよう一戦一戦戦い方を変えることも勝利するための策の内だ。

 ミズさんやリディアさんには、お互いに言えることだが手の内がバレ合っている。俺に二人の想定を越える動きが出来るだろうか……。


「私も続くネ!」

 メイリンも難なく勝利を収め、三回戦に進むこととなった。


「あと一勝……。なんとか勝ちたいですけど……」

「三回戦まで来てんだ、自信持てよ。 お前に負けた相手はみんな弱かったのか?」

 自信なさげな俺にアルさんが口を開いた。

「そんなことないです! 全員強くて、紙一重でした……」

「だったら、そいつらに恥じない戦いをすればいいんだよ」

「はい!」


 リング整備も終わり三回戦第一試合の出場者である俺、ミズさん、リディアさんの名が呼ばれる。

「絶対勝つぞ!」

 ミズさんの一言に俺とリディアさんが頷く。

 

 俺の三回戦の相手は、攻略組ギルドの一つでもある『漆黒の闇』のギルドマスターであるクラウス・フォン・ハーツフェルド、通称クラウスさんである。

 クラウスさんはダークナイトのジョブであり、暗黒魔法等の魔法も使う魔法騎士だ。


 クラウスさんが口を開く

「久しぶりだな駿。この間の大規模討伐以来だから、ひと月ぶりくらいか?ここまで上がってくるくらいには元気そうだな」

「そうですね。クラウスさんもお元気そうで何よりです」

「お前とは以前から一度手合わせしたいと思ってたんだ」

「光栄ですよ。ここまで来たからにはクラウスさんには悪いですけど、勝たせてもらいます!」

「言うようになったじゃないか。俺も負けるつもりはないぞ!」


「それでは、三回戦第一試合を行う! 始め!」


「暗黒魔法を使わせると厄介だ……先制して流れを掴む! シールドストライク!」

 俺は盾を構えながらの突進攻撃をしかける。

「まずは力勝負といこうか! シールドストライク!」

 クラウスさんが同じ技で対抗する。同じ技同士でぶつかった場合筋力のスキル値が高い方が有利になっている。

「パワーじゃ負けるつもりはないぞ!」

 次第に俺が後ろに押され始める。

「くっ……!流石ですね……。これなら! シールドバッシュ!」

 俺はありったけの力を込めて盾を横に薙ぎ払った。

 クラウスさんに隙が出来たところを見逃さず、すかさず攻撃態勢に入る。

「デッドリースラッシュ!」

「そう簡単にいくと思うなよ! サクリファイスリフレクション!」

 俺の攻撃がクラウスさんの腹部に直撃したと同時にクラウスさんが受けたダメージと同じ位置に同じダメージをくらう。

「ぐぁっ! いったい何が……」

 攻撃を与えたと思った瞬間にダメージを負ったため、俺は何が起きたのか把握できていなかった。

「リタリエイション!」

 考える間もなく反撃が飛んでくる。受けたダメージと等倍のダメージを返すカウンター技だ。

 一気にHPを削られ俺は反射的に後ろに後退する。

 しかしクラウスさんは追撃してこない。どうやら向こうもあまり余裕が無いようだ。

 よく見ると、クラウスさんにも今俺が斬られたダメージが入っているようだった。

「この技は効果時間中、発動させた相手とお互いのダメージを共有する。つまりこんなことも出来るということだ!」

 クラウスさんは剣で自身を傷つける。

 その瞬間、またしても同じ個所にダメージが入った。

「痛っ……! こんなダメージの与え方があるなんて……」

「ちなみにお前が防御系のバフを使っても俺が受けたダメージを反射した場合、受けたダメージと同じ値を受けることになるから使う意味は無いぞ」

 こちらの防御力無視か……厄介だな……。

「お前の防御性能の高さは何度も見てきてるからな」

「このままだとお互いダウンしちゃいますよ……」

「確かにそうだな。だったら! エント、フィール、グランツ、シェイン……従者召喚!」

 クラウスさんの周りにコウモリの群れが召喚される。

「悪食!」

 コウモリを掴み、食べだした……。同時にクラウスさんの傷が回復していく。

「回復手段があっての行動か……。当然だな……」

 とりあえず、向こうの回復を止めないと勝ちが見えない。

「思い通りにはさせませんよ! シャドーバインド!」

 俺はクラウスさんの影にナイフを投げつけ、拘束技を発動させる。

「利用させてもらいます。アブソープション! ループスラッシュ!」

 コウモリの群れを全滅させ、与えたダメージの半分量のHPを回復する。

「流石だ。このまま削り合うとこちらが不利だな」

 クラウスさんがサクリファイスリフレクションの効果を解除する。

「このまま削り切ります」

「そんなに上手くいくと思うなよ。エント、レック、キュア、セプト、ヌヴァール……アブソリュートダークネス」

 俺が技を出そうと振りかぶった瞬間、クラウスさんが詠唱を始める。

 クラウスさんの周囲から黒い煙幕のようなものが広がり、リング全体を球状に覆っていく。

「視界を奪われた戦闘は慣れが必要だ。一朝一夕でどうにかなるものではないぞ」

「確かにそうですね……。そうだと思います……」

 闇の中で振りかぶられた剣を俺は受け流す。

「まぐれにしては上手く捌いたな」

 クラウスさんが一度下がり、再び別方向からの斬撃が繰り出される。

 俺はその全てを捌ききり、反撃の体勢に入る。

「バーストスラッシュ!」

 最大の一撃が直撃し、クラウスさんのHPが十パーセントを切る。

「終わりか……」

 クラウスさんが魔法を解除する。


 闇が完全に晴れ、審判の判定が下る。

「試合終了! 勝者! 深見駿!」


 リングを降りようとした瞬間声を掛けられる。

「お前にはあの暗闇が見えていたのか……?」

「見えては無いですよ。普段から慣れているだけです」

「そうか、それじゃあ勝てないな……。ありがとう全力で戦えた」

 クラウスさんが悟ったような顔を浮かべた後握手を求めてきた。

「こちらこそありがとうございました。」

 握手を交わし、みんなのもとに戻った。

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