二回戦
戦闘不能になったアルさんは、すぐさま救護員が駆けつけて回復魔法を受ける。
起き上がり救護員に礼を言うと、こちらに向かって歩いてきた。
「格好悪りぃな。一回戦で負けちまって」
「そんなことないです! ナイスファイトでした!」
「慰めはいらねぇよ。全力で負けてスカッとしてるしな。後でアメリアの嬢ちゃんには怒られるだろうけどよ」
「ウチが仇をとってやるネ!」
「任せたぜ!」
アルさんとメイリンが拳を突き出しコツンッ合わせる。
「あとはお前らの応援に回るぜ。今日はこの特等席で見てられるしな」
「アルさんの分まで頑張りますよ!」
一回戦もついに最後の試合となった。
「ウチの雄姿を存分に見ると良いネ!」
メイリンが名前を呼ばれてリングに向かう。
相手はテイマーのようで、大型の虎型モンスターを連れていた。
「あんなのありネ……!?」
「それでは、一回戦の最終戦を行う! 始め!」
「こうなったら先手必勝ネ!疾風衝!」
メイリンからしかける。テイマー本体に向けての先制攻撃が当たるかと思われた瞬間、虎型モンスターが主人を守るかのように襲い掛かる。
「おっとっと……! 危ないところネ」
技を解除し、寸前のところでバックステップで距離をとる。危機回避能力は流石だ。
「やっぱり主人の前に猫ちゃんを倒さないといけないみたいネ!」
「そう簡単にやらせない! ギガンティックウィップ!」
テイマーが虎型モンスターに鞭を入れた瞬間、一回り大きくなり凶暴性が増した。
速度も上がり、一気に距離を詰めて連続ひっかき攻撃を繰り出す。
右に左に間一髪の所で回避していき、攻撃が止んだところで反撃体勢に入る。
「大きくなるとか反則ヨ……! 飛連脚!」
連続飛び蹴りが直撃したのだが、全く微動だにせず目玉がギョロッっと動いてメイリンを睨みつける。
メイリンが少し怯んだところに右前腕のひっかき攻撃がヒットする。
当たる瞬間に後方に飛んだことでダメージを逃がしたものの、左肩に裂傷を負う。
継続ダメージがメイリンのHPをじりじりと削っていく。
「強化された状態に無暗に突っ込んでも勝てないネ……。効果が切れてから再使用される前に倒し切るしか無いネ」
メイリンは身軽に数回バク転しながら距離をとった。
「クイックステップ!」
移動速度を高める技を発動する。
虎型モンスターが攻撃を緩めることなく襲い掛かるも、その全てを回避していく。
「しっかり狙いなさい!」
再び飛びかかろうとした瞬間、効果時間が切れ元のサイズに戻る。
巨大化した反動か、虎型モンスターが少しよろめいている。
「今ネ! 双龍撃!」
メイリンの腕から放たれた二体の龍の形をした拳圧が虎型モンスターの頭を捉える。
唸り声と共に後方にはじけ飛ぶ。
慌てて回復呪文を唱えようとするテイマーの正面に高速で移動するメイリン。
「まだやるネ?」
顔の前で技を寸止めし、笑顔で尋ねる。
「ギブアップします……」
「試合終了! 勝者! 劉美麗!」
リングから降りてこちらに向かってくる。
「なんとか勝てたヨ!」
「お疲れ様! テイマーの戦闘って見たことなかったから凄い参考になったよ」
「ペットと一緒に戦えるのは面白いかもしれないネ」
「うちでもいたら面白いだろうなぁ」
「フリッツにでも勧めてみるか。物理攻撃手段にもなるしな」
「大賛成だぜ! そうなれば船の動力源から解放されるしな……!」
「そーいやそうだった! 良いこと尽くめじゃねーか!」
アルさんとミズさんが必死で力説する。
「何を他人任せにしているのだ」
リディアさんが呆れた様子で口にする。
「いや、お前らは俺ら任せにしてるじゃねーか!」
全ての試合が終了し、審判員が説明を始める。
「これにて一回戦を終了します。リング整備の後、二回戦第一試合を始めます。補給等を済ませた状態でお待ちください」
「俺はいつでも準備万端だぜ!」
「結構時間ありましたしね」
「気は抜くなよ、全員一回戦を勝ち上がった者たちなのだからな」
「誰が来ても関係ねーよ。全員……斬るだけだ。さてと、時間までのんびりしとくぜ」
一瞬の殺意に背筋が凍る。
「やる気なさそうなくせに、あーゆー切り替えの速さは一人前だな」
アルさんが関心する。
リング整備も終わり、そろそろ試合が再開する時間だ。
審判がリングに上がり、俺とミズさんを含めた出場者の名前を呼ぶ。
「俺たちがやり合うためにも、ここでしくじるなよ」
「わかってます! 勝ちますよ絶対!」
俺たちはそれぞれのリングに上がり対戦相手と対峙する。
次の相手は和装に和弓をもっているポニーテールの女性だった。
見た目は華奢で綺麗な女性だが一回戦を勝ち上がってるからな……。気を引き締めないと!俺は両頬を手のひらで叩いて気合を入れなおす。
「それでは、二回戦第一試合を行う! 始め!」
最初に動いたのは向こうからだった。
「春嵐」
走りながらの三連射が放たれる。
放たれた矢は俺に近づくにつれ加速し、風を纏う。
俺は反射的に盾で受けたが、矢に纏った暴風が俺を襲う。
「うわぁぁぁぁぁぁ!」
鎧の上からでもダメージが入るとてつもない風だ。
「距離をあけるとダメだ! ソニックスラッシュ!」
俺は距離を詰めて切りかかる。
「簡単にはやらせません!」
先ほどまで持っていた和弓と入れ替え、薙刀で応戦してくる。
鍔迫り合いの末、薙刀を払って切りかかる。
「ゲイルスラッシュ!」
肩口から切りつけたかと思った瞬間、目の前から姿が消える。
「……縮地か」
俺はすぐさま相手を視界に入れようと辺りを見回すと、まさに矢を放つ瞬間だった。
「ソニックショット!」
俺は腰に付けていたナイフを矢に当たるように投げる。
「危なかった。流石に強いな……一筋縄じゃ行かない」
俺は残ったナイフで牽制しながら近づく。
「ペネトレートスロー!」
相手は再び薙刀に持ち替え、回転させてナイフを薙ぎ払う。
「これなら! エクスプロードスロー!」
着弾と同時に爆発する投げ技を放つ。
同じように薙ぎ払おうとした瞬間、爆炎が上がる。
「キャー!」
相手の叫び声が聞こえ、怯んでいるのが分かった。
「今だ! バーストスラッシュ!」
俺の斬撃が薙刀を切断した。その瞬間俺はバックステップで下がる。
下がったと同時に薙刀の切れた部分が爆発し、相手を弾き飛ばした。
審判員が近づき相手の状態を確認する。どうやら爆破の衝撃で気絶しているようだ。
「戦闘不能! 勝者! 深見駿!」
またしても辛勝だが、なんとか勝ちを拾うことが出来た。




