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一回戦

 俺たちはエントリーが終わり、待機室に移動することになった。

「すでに結構な人数がいますね……」

「人数なんて気にするだけ無駄だ。どーせ当たったやつ全員倒さないと優勝できねーんだし」

「それはそーなんですけど……」

「駿は実力と反比例して自信が無さすぎだ。もっと自信を持て」

 リディアさんに叱咤される。

「善処します……」


 受付時間が終了し、出場選手が決定した。

 待機室に係員が数名入室してくる。今大会のルール説明が行われた。


 大会は午前と午後に分けて行われるらしく、午前はベストエイトが決まる三回戦まで四試合ずつ消化していき、午後は一試合ずつ行われるようだ。

 試合形式はトーナメント方式で、どうやらキリが良く六十四名が参加しているようで、三回勝てば賞金が手に入り、六回勝てば優勝できる計算になる。 

 試合順は、番号の書かれた球を係員が用意した箱から一球ずつ引き、数の小さい順から並べられていく。 一番と二番、三番と四番、五番と六番、七番と八番が一試合目をするといった感じだ。

 

 勝負の判定は相手のHPを先に十パーセント以下にするか、どちらかがギブアップするまで続けるようだ。

 戦闘中に手助けをした場合、された場合や試合以外で戦闘があった場合は反則となり、調査後に相応の罰則が与えられる。最悪の場合は出場停止処分を下されるようだ。


 トーナメントの順番決めが始まり、呼ばれた者から順に球を引きに行く。

 しばらくして、ミズさんに順番が回ってくる。

「俺は七番だったな」

「一試合目ですか! いきなりですね」

 すぐに俺の名前も呼ばれる。

 俺は係員の持つ箱に手を入れる。

 せめて一回戦から仲間同士で当たりませんように……!と祈りながら球を引いた。

「僕は……十二番でした」

「十二番ってことは……ベストエイトまで上がってきたら俺と当たるな。俺とやる前にやられんなよ!」

「はい! ミズさんと戦えるように頑張ります!」

 どちらかは準決勝にいけなくなるのだが、ミズさんと戦えるかもしれないということに俺は喜びを感じていた。

 アルさんの番になる。

「俺は三十六番だったぜ。お前らとは……決勝まで当たらねーな」

 メイリンが呼ばれる。

「ウチは五十八番だったヨ。お互い勝ち続ければ、アルちゃんと準決勝で当たるネ」

 最後のリディアさんが呼ばれる。

「私は十八番だな。準決勝までいけば駿かミズと当たることになる」

「もしかしてこいつは、上手くいけば全員賞金コースか!?」

「負けるつもりは毛頭ないが、そんなに甘くはないだろ」

「攻略組の面々もやっぱり出場してきてますしね……」


 そんなことを話していると横から大きな声で話しかけられる。

「決勝だの、準決勝だのと、誰ださっきからふざけたことぬかしてる奴は!?」

 見たことない巨体の大男が俺たちに絡んでくる。

「ふざけてねーよ、参加する以上優勝するつもりで参加するのが当然だろ?」

「馬鹿者。 こんなつまらん男の喧嘩など買うな……!」

 男に反応したミズさんを止めに入るリディアさんだが、リディアさんも喧嘩売ってますよー……。

「つまらん男だぁ!? おい、ねーちゃん! 強がりも大概にしておかないと、後で後悔すんぜ!」

「試合の前に粋がって絡んでくる男を他に表現する方法があるのか?」

「ふざけやがってぇ……! おい、女! チビ! ここでぶっ倒されてーのか!?」

 男が顔を真っ赤にして叫ぶ。

「ルールを聞いてなかったのか?試合外の戦闘はルール違反だ。誰がお前みたいな脳筋(脳みそまで筋肉)野郎倒して罰則受けるかよ。試合で当たったら望み通りぶっ倒してやるから、大人しく待っとけ」


 そんな話をしていると、後ろから女性に話しかけられる。

「何かトラブルですか?」

 騒ぎを聞きつけた係員のようで話に割って入る。

「いやいや、何でもないですよ。便所の場所を聞かれただけです」

 ミズさんが適当に話を流す。

「そうですか。揉め事は無いようにお願いしますね。」

 お辞儀をし、係員が去っていく。

「チッ! 覚えとけよ!」

 男もそう言い放って、どこかに去っていった。

「何処にでも面倒臭ぇやつがいるもんだな」

 アルさんが呆れたような顔で口にする。

「あまり目立ったことをしない方が無難ですね」

「自分の試合が回ってくるまでは観戦を楽しむのが良いネ」

「対戦相手になるかもしれない相手の手の内も見ておいた方がいいしな」


 俺たちは一戦目の試合を見るために、待機室を後にして出場者専用の観戦席に向かう。出場者は観戦者と違い一階の近い位置で観れるようだ。


「凄い……」 

 会場に出ると既に客席は満席になっており、空席が見当たらない。

 中央には同時に四戦出来るよう円形リングが4つ配置されていた。


 審判を務める係員がリングに上がり、一試合目の出場者の名前を呼ぶ。

「よっしゃ! 行ってくるわ!」

 大歓声とともに、ミズさんや他の一試合目の出場者がリング上に移動する。


「いよいよですね……ミズさん大丈夫ですかね?」

「やつがこんなところで負けるとは思えんし、問題ないだろ。駿は次の試合だろ? しっかりウォーミングアップしておけよ」

「そーですね。先ずは自分の準備を整えておきます」

 俺はストレッチをしながらミズさんの試合を観戦することにした。


「只今より、一回戦第一試合を行う! 始め!」

 試合が開始したにも関わらずミズさんは武器を構えず、相手を見てがっかりした様子だった。

「がーはっはっは! 誰が相手かと思えば先ほどのチビではないか!」

「お前が相手だったのかよ。面倒臭ぇ……」

 よく見ると相手は先ほど絡んできた大男だった。

「一回戦から俺様に当たるとは運のねーやつだな! がーはっはっは!」

 先ほどの憂さ晴らしが出来ると思い喜ぶ大男。

「きたねぇ笑い方だな」

「何とでも言うがいい! 貴様は今からこのジェスター様に一発でぶっ倒されるんだからな!」

 そう言うとジェスターと名乗るその男は鎖付きのハンマーをぶん回す。当たればとんでもない威力がありそうだ。

「おー、すげぇすげぇ。」

 ミズさんが棒読みで反応する。

「これをくらってからでも、そんな余裕が見せられるかー!」

 男の大きな叫びとともにハンマーが投げられ、ミズさんが先ほどまでいた場所のリングが大きく破壊される。

「おーおー、確かに当たれば一発かもな。」

 ジャンプして避けたミズさんがハンマーの上に降りて、余裕ありげに答える。

「ふざけやがってー!」

 ハンマーを戻したり飛ばしたりを繰り返し、連続攻撃を仕掛けてくる。

 その全てを回避するミズさん。

「一発じゃなかったのか?」


「凄い……完全に見切ってる……」


「クソがー!」

 我慢できず、ハンマーを大きく振りかぶった刹那、離れていたはずのミズさんが一瞬でジェスターの目の前に移動する。高速移動技『縮地』だ。

「虎閃!」

「うぐぁぁぁ!」

 高速の一撃がジェスターの腹部にカウンターで入り、泡を吹いて倒れる。

 同時に審判が判定を下す。

「勝者! 水原都嵩!」

 スタートが遅かったにもかかわらず、どこよりも速く試合を終わらせた。

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