闘技大会
「昨日から町の至る所に張ってる例の張り紙見たか?」
アルさんが昼食の途中で口を開いた。
「見ました見ました。確か来週、北区の闘技場で国王主催の対人闘技大会が開催されるとか」
俺も少し興味があった件だ。
「そんなの張ってあったっか? あんま興味無かったから見てなかったな」
「お前は喜んで参加するものと思っていたがな」
興味のさそうなミズさんが意外だったようで、リディアさんが反応する。
「モンスターとの戦闘は嫌いじゃないけど、対人は別にそこまで興味ねーよ」
「噂では賞金百万ジェイルに加えて、副賞に国宝級の装備が貰えるらしいですよ?」
「マジ!?」
大声と同時に両手で机を叩きながら椅子の上に立ち上がる。
「マジです」
「やっぱ俺も大会出てみっかなぁ」
「業突く張りなヤツめ……」
リディアさんが呆れた様子でミズさんを見る。
「なんとでも言え!」
ミズさんが堂々とした態度で答える。
「そーいえば他のみんなは参加するの?」
愛華がみんなに問う。
「ミズさんが出るなら出てみようかなぁ、一度手を合わせてみたいと思ってたし」
前々から、この人と本気で戦ってみたいという気持ちは常にあった。
「私も出るぞ。ミズがでるなら尚更な」
「ウチも参加するネ! みんなと当たっても手加減しないヨ!」
「当然だろ! 全員叩き潰してやるぜ!」
リディアさんに、メイリン、アルさんもやる気満々といった様子だ。
「僕はパスで。自分で戦うより人が戦っているのを見る方が好きなのでね。皆さんの戦いを見学させてもらいます」
「リラも……パス」
「私たちはもともと見学するつもりしか無いのだ」
「皆さん応援しているのです」
「私も見学かなぁ。みんなと当たったら戦えないよ……」
愛華は優しいな……。
「五人のこと応援してるからね! みんな頑張って!」
「そうと決まれば、スキル上げと動きの再確認だな。当日はお互い敵になるだろうし、今週は各々バラバラに過ごそうぜ」
「今更手の内を隠そうなんて意外とせこいネ」
「うるせー、やるからには絶対勝つ! 勝つために少しでも可能性を上げるのは当然の行為だろ」
「流石お兄ちゃん……お金とかレアアイテムが絡むと眼の色が違うよ……」
「でも確かに、お互い手の内は知らない方が良いかもしれないですね。」
「そうだな、当日はフェアにいこう」
俺たちは大会当日まで各々でトレーニングに励むこととなった。
そして当日の朝を迎える――。
俺たちは朝食を囲んでいた。
「いよいよ今日ですね。今から緊張してきたなぁ」
人生初めての大会参加ということもあって、胸が高鳴っていた。
「何も気にせず、楽しめばいいんだよ」
「円形闘技場だから全方向から見られると思うと緊張しちゃって……」
「話したこと無い他人ばっかりだろ? いないのと一緒だろ」
「とんでもない理論ですね……」
「周りの眼なんて気にしても、ろくなこと無いんだよ」
「お前は何も気にしなさすぎだ」
ミズさんとリディアさんはいつも通りだ。大舞台に慣れているんだろうか。
「ウチは見られてる方が嬉しいネ! 注目されてると思うと興奮するヨ!」
「そこだけ聞いたらただの変態だぞ……」
「失礼ネ! 変態はみーちゃんだけで勘弁して欲しいヨ」
「誰が変態だよ!」
「まぁ変態どもは置いといて、試合になれば目の前に強い相手がいるんだ。その場に立てば、周りなんて気にしてられる余裕はねぇ。眼前の敵に集中するってもんさ」
「そんなものですかねぇ……」
アルさんの言うこともわかるが、実際に経験が無い分なかなかピンとはこなかった。
「駿君なら、いつも通りやれば絶対いいとこまでいくと思うよ! 頑張って!」
「ありがとう! 頑張るよ!」
愛華に応援されて喜ぶ分かりやすい俺。
「さぁさぁ! 腹が減っては戦は出来ぬのだ! しっかり食べて全員でいっぱい賞金稼いでくるのだ!」
「そーいや賞金って何位まで出るんだ?」
「たしか上位八名まで賞金が出るらしくて、優勝者だけ任意の武器と防具を一つずつ副賞で貰えるそうです」
「それなら最高で、全員が賞金を持って帰ることも出来るわけだ」
「そうそう都合よくはいかないだろうがな」
「何人くらい参加するんですかね」
「当日エントリーだし、わかんねーな。ただまぁ戦闘に自信があるやつだろうから、ボス攻略の時に見たような顔なじみが参加している率は高いんじゃないか?」
「攻略組のギルド員に当たると厳しい戦いになるだろうな」
「強い相手と戦う方が楽しいネ!」
「わかってんなメイリン! その通りだぜ!」
俺たちは食事を済ませ、出発の準備をするために各々の部屋に戻った。
出発の時間になり玄関に集まる。
「全員集まったね。それじゃあみんなで北区に向かおう!」
俺たちは北区に歩みを進めた。
闘技場に着くも、そこには見物客や参加者で賑わっていた。
「初めて近くで見たけど凄い大きい……!」
「やっぱり凄い人だかりだなぁ……」
「まぁこういった対人のイベントは初めてだしな」
「そーいえばそうだね。なんでだろ?」
愛華が人差し指を立てて、あごの下につけて悩んだ様子を見せる。
「俺らも一年以上経ってようやく上位職って感じだしな。全員が中位職以下じゃあんまり盛り上がらないんだろ?」
「まぁ確かに攻撃のバリエーションは少ないですね……。見てる側も今の方が絶対に見応えはあると思いますし」
現在の俺たちは、俺が『聖騎士』、ミズさんが『大将軍』、アルさんが『狂戦士』、メイリンが『マスターモンク』、フリッツが『ワールドマジシャン』、リディアさんが『ヴァルキリー』と上位職に上がっており、複合ジョブの必要スキルが多い愛華、アメリア、エリカは中位職のままだ。
「単独ジョブだと、カンストして最上位職になってるやつもちらほらいるしな」
「さてと、さっさとエントリー済ませちまおーぜ」
「そうですね、それじゃあ愛華たちとはここで一旦お別れだね」
「客席でしっかり応援してるからね! みんな頑張って!」
「一回戦で負けるなよ」
「皆さん勝ってほしいのです」
「賞金期待してますね」
「賞金で……みんなで……ご飯」
「みんなありがとう! 行ってくるよ!」
観戦組に別れを告げて、俺たちは闘技大会の受付に向かった。




