大規模討伐戦
何度かモンスターの襲撃を躱し、最奥手前に到着する。
フランクさんが全員に指示を出す。
「皆の者、ここを抜けた先でオーク・ジャイアントとの戦闘が開始される。バフの準備や装備を整えてくれ」
「それじゃあ私とリラで強化魔法かけていくね」
愛華とリラがそれぞれ違う詠唱を開始し、俺たちに順番に魔法をかけてくれる。
「今の間に武器を修理しておいてやるのだ。エリカから武器の補充もしておくのだ」
「助かるよアメリア、エリカ」
俺たちはアメリアに武器を預け、エリカから予備の武器を受け取る。
「嬢ちゃん、俺はさっき預けたアックスと交換してくれ」
「はいなのです」
「今の武器と何か違うんですか?」
俺は疑問に思い聞いてみた。
「オークは水属性が弱点だからな、この武器は使用者の魔力を食って水属性魔法を付与することが出来るんだよ」
「そんなことができるんですか!?」
「最近見つかった技術みたいでな。武器に魔法文字が刻み込まれていて、鍔に埋め込まれたこの魔石に俺のMPを注入することで魔法を覚えてない俺にも魔法が使えるって寸法さ。まぁ効果時間はMP次第だから、MPのスキル値を上げてないとそんなに長くは使えないんだけどな」
「それでも、俺たち魔法が使えない職業からしたらMPが無駄にならないし、凄い技術ですね」
「そんな技術があるとは……遅れをとったのだ……」
話を聞いていたアメリアが悔しがる。
「次はアメリアが新しい技術を発見すればいいさ」
「勿論なのだ! 私の技術はフレイン王国一だからな!」
すぐに切り替えが出来るのはアメリアの良いところだな。
「MP依存ってことでしたらアルさんにもMPの自然回復力アップの魔法かけておきましょうか?」
「助かるぜ!」
俺たちの準備が万端になったところでフランクさんの声がかかる。
「皆そろそろ準備は出来たか?」
「大丈夫です」
俺や、他のパーティリーダー達が準備完了を伝える。
「勝って帰還するぞ!」
全員でオーク・ジャイアントがいる広場に突入する。
広場の中には先遣隊の情報通り、オーク・ジャイアントの周りを、オークロード、オークプリースト、オークソルジャー等様々なオークの群れが囲んでいた。
まずは四体いるオークロードを各パーティのメインタンクがタウンティングして分断する。オークロードの攻撃力が高く二体以上の攻撃を受けるとタンクのHPを全て削ってしまうからだ。オークロードを分断させ、各パーティで撃退後にオークジャイアントの討伐に合流する作戦だ。
俺とフランクさんのパーティはオーク・ジャイアントの担当であり、俺とフランクさんとで交代してオーク・ジャイアントのジャイアントクラッシュという名の強攻撃を受ける。この攻撃は二連撃の技で一撃目の攻撃時に大ダメージと対象の防御バフを全て取り払い、さらに防御力低下のデバフ効果を付与する。バフの無い状態ではジャイアントクラッシュの二撃目が防げないため、一撃目を受けた直後にタンクスイッチ(別のタンク職とモンスターの攻撃対象を入れ替える)を行う。
この攻撃はHP十パーセント間隔で発動してくるらしく、何度もタンクスイッチが必要であるのに、一歩間違えると全滅しかねないミスになる。自分のミス一つで全てを台無しにしかねないと考えるとなかなかのプレッシャーである。
「タウンティングオール!」
まずは、フランクさんがオーク・ジャイアントと周囲の取り巻きのタゲをとる。
俺たちは取り巻きを倒しつつ、オーク・ジャイアントに攻撃を仕掛ける段取りになっている。
「やーっと暴れられるぜー! カオスサイクロン!」
「ウチも、もっともっと倒すネ! 連撃拳!」
アルさんとメイリンが水を得た魚のようにオークを薙ぎ倒していく。
「僕たちも負けてられませんね。ヴァル、レック、ヌヴァール、エント……ウォーターストーム!」
オーク・ジャイアントの周りのオークが次々に千切れ飛ぶ。
「リディア俺に続け!虎閃」
「了解した! スパイラルスラスト!」
ミズさんとリディアさんの高速連撃がオーク・ジャイアントにダメージを与えていく。
オーク・ジャイアントのHPゲージが九十パーセントを切った頃、一回目のジャイアントクラッシュを放ってくる。フランクさんが残されている全ての防御バフを使い一撃目を凌ぐ。
「タウンティング!」
俺はすかさずオーク・ジャイアントのヘイトをとる。
二撃目を防ぐために一定時間無敵の技を使う。
「インプレグナブル!」
放たれた二撃目を無力化する。次にジャイアントクラッシュを出してきたときにフランクさんと交代するまで、俺がオーク・ジャイアントのタゲをそのまま維持する。
「そろそろ無敵時間が切れるな。バリアアーマー!」
俺は次の防御バフを使う。防御力を二十パーセント上昇させる技だ。
「さらに、アブソープション!」
効果中に与えたダメージの半分を回復する技を発動する。
オーク・ジャイアントの猛攻で普段とは比べ物にならない速度で減少する俺のHPを、愛華とリラが必死に支えてくれている。俺はなるべく負担をかけないように被ダメージを減らすように努める。
HPが八十パーセントに差し掛かった時、二回目のジャイアントクラッシュのモーションに入る。
俺は残りのバフを使い一撃目を耐える。すぐさまフランクさんがタウンティングを発動させ、俺と入れ替わる。
「駿君お疲れ様!」
「お疲れ……様」
愛華とリラに労われ、HPとST回復魔法を入れられる。
「まだまだだよ! 次もあるからね!……バーチカルスラッシュ!」
俺はHP回復後、再び攻撃に専念する。
その後何度かのタンクスイッチを重ねる。五十パーセントを切った頃、周りのオークロードや取り巻きを倒し切ったのか、他のパーティが加勢しだす。
全員がオーク・ジャイアントを一斉攻撃し始め、見る見るうちにHPが削れる。
十パーセントを切り、オークジャイアントが最後のジャイアントクラッシュを放つ。
俺は慣れた動きで二撃目にタンクスイッチを行う。
「良い感じだ! これで削りきる! シャドーバインド!」
俺は投擲技を使いオーク・ジャイアントの影目掛けてナイフを投げ、オーク・ジャイアントの身動きを一定時間封じる。
身動きがとれないまま次々に技を撃ち込まれ、オーク・ジャイアントの目に光が無くなる。
同時に血まみれのオーク・ジャイアントがその場に倒れこむ。
「我々の勝利だー!」
今まで冷静沈着だったフランクが大きな声で叫ぶ。
「うぉー!」
皆勝利に歓喜して大きく声を上げる。
俺も自然に、両の手の拳を天に突き上げていた。




