表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/26

プロローグ1

 DDMMORPG(Dream Dive Massively Multiplayer Online Role-Playing Game)

 商品名DDO(Dream Dive Online) 二一七二年に開発され、一般化された新未来型VRMMOである。



 二一二二年に医療を目的として開発されたDDS(Dream Dive System)。これは睡眠時の脳に干渉し、本来見るはずの夢の代わりに人工的に作られた夢(VR空間)に入り込むためのシステムで、例えば『全盲』、『難聴』、『植物状態』であったとしても、人工的に作られた夢の中で『見る』、『聞く』、『意思疎通』を可能にした画期的システムである。

 開発当時は医療のみの使用であり、大型で価格も数十億円と一般化には程遠かったが、あれから五十年の時を経て小型化され、遂には一般のゲームソフト等にも利用される技術となった。

そのうえ、五十年という月日は、ただコストダウンのための時間経過ではなく、この技術にさらなる進化をもたらしていた――。



 当初、現実世界の経過時間イコールVR空間の滞在時間であったが、現在では開発が進み『睡眠時間中に一日を体験する』という開発者の計画が叶う形となる。

脳に特殊な信号を発信することで体感時間をある程度操作する技術が出来上がったのだ。

 それにより睡眠時間六時間に対し、VR空間滞在時間二十四時間という現実の時間経過に比べて四分の一程の速度経過を実現した。つまり寝ている間にVR空間で一日過ごせてしまうのだ。

 当初は使用し続けることで脳への負担を懸念されていたが、実験を重ね一日に現実時間六時間までの使用であれば、安全性も実証された。



 この技術革新のおかげで二一七二年現在、一日おきに一般生活とVR空間での生活を交互に楽しんでいるという人々が増えた。

 販売されたソフトには、例えば山や海、リゾート地等を模した癒しのVR空間を収録したものがあり、『リフレッシュに使う人』、『仕事や学業の勉強時間に当てる人』がいたりと、様々な用途に使われている。中でもDDOはその第一号のソフトであり、発売時には躍起になった人々が長蛇の列を作った。



 DDOの特徴は、よくあるレベル制のゲームとは違い、上限値有りのスキル制にある。

このゲームでは戦闘を重ねていくことで使用したスキル値が一ずつ上昇していく。例えば剣で敵を倒していくと剣のスキル値が上がり、回復魔法を使えば回復魔法のスキル値があがっていく。

 スキルの種類は五十以上あって、それぞれのスキル値は千が上限となっており、スキル値が高いほど高度な技や魔法が使えるようになっている。全体で取得できるスキル値の上限が一万に設定されていて、自分が選んだスキルに好きな値を割り振っていく形になる。


 一つ一つのスキルに千ずつ振ると、そのスキルは最大限の力を発揮できるが、振れるスキル数が減るので汎用性が低くなっていく。

逆に沢山のスキルに少ない数値を割り振り過ぎると器用貧乏になってしまう等、自分のプレイスタイルに合わせたカスタマイズが快適にプレイできるかの鍵になってくると同時にこのゲームの醍醐味である。



 スキルとジョブ(職業)の数はとても豊富で、スキルだけでも数十種類あり、そのスキル一つ一つを極めていった場合の単独ジョブ、四から六程の複数の特定スキルを極めていった場合の複合ジョブは下位から中位、上位、その上の最上位職も含めると数百を超える。

 こういったゲームの場合どのジョブや構成が一番強いのかという議論が付きまとうが、このゲームに関して言えば『この構成を使えば最強!』といったジョブやスキル構成は存在せず、スキル構成と個々のプレイスタイルやプレイヤースキルとの相性が強さに繋がってくる。

 誰とも違う、自分に合った自分だけのスキル構成を探求するのもまた、このゲームの楽しみの部分でもあるといえる。


 そういった楽しみを味わうためにも先ずはスキル上げである。

スキル値を上限まで上げきるまでは、それ相応の時間は費やすことになるが、上限に達してからはゲームのログイン時間によるレベル差を気にすることなく、気軽に誰とでも遊べることをコンセプトに作られている。



 アバターも豊富で、装着した機器のスキャニング機能により自身をモデルに、人間からエルフ、獣人、ドワーフ等様々な容姿に変更することが可能であり、それぞれの種族で種族値が設けられている。

 武器や服装・装飾品も豊富であり、プレイヤーが作る装備品に関して言えば、プレイヤー各々が考案したデザインを反映させることができる。つまり、世界に一つだけの自分だけの武器や装備が作れたり、自分のデザインしたものを他のプレイヤーに販売し、使用してもらうことも可能である。



 装備作成以外にも、栽培、料理、大工等、他にもたくさんの生産スキルが存在する。

その全てのアイテム作成には実際の手法に近い手法が取り入れられている。

 そう聞くとアイテム制作にとてつもない難易度があるように感じるが、それを補うために何段階ものアシスト機能が存在している。

スキルを上げて技やアシスト機能を使うことで、誰でも簡単に制作することが出来るようになっている。


 制作に慣れてくれば、アシスト機能を外していくことで、例えば武器や装備アイテムの能力向上や追加効果を付与したり、作成した料理を食べることで得られる能力アップ効果や持続時間等を上昇させることが出来る。ただし、上昇値はアシスト機能の段階ごとに変わる。

このアシスト機能を外す行為は生産職だけではなく全てのスキルに共通する。例えば、アシスト機能を外して戦闘職の技を繰り出すことで技の威力や精度が向上したり、技発動後の硬直時間の短縮や技と技を組み合わせたオリジナル技を作ったりと、プレイヤースキルの向上やプレイの幅を広げる仕組みが取り入れられている。

勿論アシスト機能を全て使っていても支障はない程度に活躍することが出来る。



 驚かされるのはマップの広さであり、地球丸ごと一つ分程の広さがある。そのため、離れた地域にいる人間には一度も会わないということは当然のようにある。

ただし、移動手段は魔法によるテレポートや移動速度アップの魔法等があるため目的の場所に向かう分には困ることはない。


言語に関しても全ての言語を収録していて、自動翻訳機能により、どこの国の誰とでもゲームを楽しむことが出来るのが最大の魅力だ。


前述した様々な要素により、発売から一年たった今もDDOの勢いは衰えることを知らない――。





 俺がDDOを始めて丁度一年が経とうとしている――。


「一年って長いようで短いよなぁ……」

 そんな月並みな発言をギルドハウスのリビングにあるソファーの上でくつろぎながら呟く。

「何当たり前なことブツブツ言ってるの?」

 そう口にするのは栗色の髪を肩の少し上まで蓄えた、俺にとっては女神のような存在である。

「ゲームが始まってから俺らが出会って一年近く経つからさ。みんなとの出会いとか色々思い出してたんだよ。」

「えぇっ! 改めて思い出されると恥ずかしいよー。もうっ! くだらないこと考えてないで、後で来週のウンディーネ討伐作戦の説明お願いね!」

「くだらないとは失礼な! 俺たちの感動の出会いを!」

「お前らそんな感動的な出会いしてたのか?」

 赤髪ツンツン頭につっこまれる。

「それはもう聞くも涙、語るも涙の出会いがですね」

「はい、はい! もうすぐ会議始めるよー」

「わかったよ」

 俺たちは話を切り上げて会議が始まる時間を待つ。



 今から一周年記念ということで、来週末予定しているリムール湖の湖底に潜むウンディーネの討伐作戦会議を行うところなのだ。


 俺たちのギルドは総勢十人で構成されていて、盾職二人、回復職二人、攻撃職四人、採集職一人、生産職一人という構成であるのだが、これはボス攻略をするには少し心もとない数である。

 というのもボス攻略をする際、通常は全滅しない余裕をもって、三から五パーティ(一パーティ最大十人)の三十から五十人規模の大勢で動くことが多い。ただ、みんなのプレイヤースキルやチームワークであれば今回のウンディーネ討伐は、なんとか討伐できるのではないかという話になり、現在に至る。


 俺たちのギルドは今回のようにギリギリの戦いを挑むことが多い挑戦型ギルドである。

 他のギルドと協力して挑戦する大規模討伐戦に参加することもあるのだが、俺はこのギルドメンバーだけで試行錯誤し、攻略していくことに一番の楽しみを感じている。

 まだ一年ほどの仲ではあるのだが、俺はみんなと一緒にいるときが一番気持ちが落ち着く。みんなに出会うまで、今までずっと友達と呼べる友達がおらず、満たされていなかったから……。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 設定は面白いと思います。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ