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09 9月15日 北天満山南面、大谷吉継本陣 密議その2 亥〈い〉の刻(午後10時ごろ)

重大な書き間違いのご連絡ありがとうございます。

これからも、よろしくおねがいします。

(わし)達自身が?とな?」


「俺(三成)はな、今まで色々な材料を集めてそこから物事の行く先を考えてきた。」


「誰でも同じだろう?」


「そうだ。だから間違う。集める材料に漏れがあれば、簡単に間違うのだ。」


「まあ、それはそうだが…皆だからこそ失敗も有るのではないか。」


「皆はそれで良い。だが、俺達はそれでは駄目だ。」


なんという傲慢(ごうまん)な…と珍獣でも見るような目で中島氏種が見ている。島左近は始まったな…と諦め顔だ。

良し、やはりこの感じが三成で正解だ。だいぶ掴めてきた。


「俺達は間違う訳に行かぬ。そこで別の方法も加えて間違いを取り除く。」


「ほぅ?何を考えついたのだ?」


「今までに判っている結果から、逆に見落とした材料を見つけ出し加える。そして既に出ている結果はそれが必然だと受け入れるのだ。」


「?すでに出ている結果など、皆受け入れて居るだろうが。異な事を云う…。」


「紀之介、本当にそう思うか?それは傲慢だぞ。」


三成に傲慢といわれては吉継の立つ瀬が無いが、三成の為人(ひととなり)をよく知る吉継なので黙って聞いてくれる。


「俺(三成)には武運が無い。幾多の戦場での結果が其れを証明している。」


「いや、それは運も…」


「運を入れるのは傲慢だ。結果を受け入れるのだ。俺には武運は無い。これは確定だ。」


「………」


「そして紀之介、貴様も武運に乏しい。」


「え?」


島左近が驚いている。大谷吉継は秀吉に軍才を認められた軍略家だ。それが武運が乏しいなどと…


「考えても見よ。紀之介に本当に武運があれば、すでにどこかの戦場で武功が有るはずだ。だがとくに無かろう。」


「…言われてみれば確かに無いな。」


「だろう。文官不足で後方支援に駆り出されていた事は理由にならぬ。後方支援に回らざるを得なかった事、それ自体が武運の乏しさを証明している。紀之介には軍才はあれど、それを具現化する武運が乏しいのだ。」


「…ふうむ。筋は通っている。」


「だから、俺(三成)は軍の指揮を執らぬ事にした。俺が軍を指揮すれば、必ず不測の事態に見舞われ良くない結果になる筈だ。」


( 左近殿、三成殿は御自身の事でも()()なので御座るか? )

( まあ、(おおむね)ねは()()でござるな。 )

( 誤解されやすい性格であらせられる。 )

( 全くその通りで……… )


「成程。それで裏方に回ったのか。」


「紀之介は普通の兵の進退なら大丈夫だろう。軍才は有るからな。だが、奇策を用いると必ずや裏目に出る。奇策を成功させるに足るまでの武運は無いぞ。」


「佐吉。やっとお主が言いたい事が判ったわ。この刑部は平凡な当たり前の兵の運用に徹しろ、そうすれば大過なくこの戦をこなせる…そう言いたいのだな。」


「判ってくれたか。」


「受け入れ難い事だが、その通りやも知れぬ。」


「われら二人の一番根本(ねもと)の問題だ。此処を抑えておかねば全てが無駄になりかねぬ。」


「了解した。普通の将が普通にこなせる事を手堅くする事としよう。」


「すまぬ。これでやっと具体的な事に移れる。」


「うむ。聴こう。だが普通の事しか出来ぬぞ。ふふ。」


「大丈夫、普通の事だ。真田昌幸殿に頼みがある。風魔と繋ぎをつけて貰いたいのだ。」


「なに?あの北条お抱えだった風魔か?」


「小田原の北条氏は滅んだが風魔は滅んではいない。関東一帯に散り潜伏している。」


「そうなのか。確かに太閤様も特に風魔を殲滅せよとは言われなんだので、直接風魔に敵対してはいないな。」


「真田殿であれば風魔にも渡りを付けられよう。」


「うむ。だが風魔を抱えるには治部の身代では無理だろう。」


「なに、『禄は豊臣が引き受ける。』と、この治部少輔(じぶのしょう)が請け負った…と伝えれば良いだけだ。何せこの治部少輔(じぶのしょう)は豊臣家で専横を極めていると評判だからな。」


「ふっ。どうやら本当に裏方に徹する覚悟が出来ているのだな。まあ、それも佐吉らしい事ではあるか。」


「ついでと言っては障りも有るが、真田昌幸殿へもう一つお願いしてくれ。」


「ほう、まだ有るか。」


「小諸城を(つつ)くなど、方法は昌幸殿にお任せするので秀忠隊の後方で嫌がらせをしてもらい、


”昌幸殿の悪さを抑えられるのはご子息の真田信之殿しか無い…”


そういう流れに持って行き信之殿がこの戦場に来ないようにして貰いたいのだ。」


「成程、それは良き思案。信之殿と直接干戈を交えるのは都合が悪い。よく気が付いた。」


「今出来る事はこれぐらいであろうか。他になにか無いか、紀之介。」


「吉川広家は如何(いかに)致すのだ?」


「元康殿が着陣されれば、手も有ろう。元康殿であれば、秀元殿にも顔が効く。」


「広家もそう考えるぞ。だから明日はいきなり小早川などが突撃して決めに来る可能性が高いが。」


「そこで長曾我部殿の出番よ。もう、そのように頼んである。」


「そうか。されば儂は宇喜多殿や、もしもの場合は島津殿と普通に支えていれば良いのだな?」


「そうだ。かりに長曾我部殿の挟撃に小早川が耐えたとしても、明日中に立花宗茂殿を先鋒に毛利元康殿が来る。立花・毛利両隊だけで1万5千を超える。小早川と朽木など四将は普通に潰えるだろう。」


(………この二人はどう見ても普通ではない………)


中島氏種はぼそりと(つぶや)くのだった。






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