被験者1 「フリーター多奈川さんの場合4」
人通りの多い公園のベンチに座り、明細書に目を通した。
明細書の項目は勤労給、社会貢献給とその明細項目、その他、その人の当月時給、来月の時給とそのプラスマイナス、そして当月分の給料の合計が記されている。
僕の今月の勤労給は4つのバイト先から国経由で振り込まれた21万2千円で、社会貢献給が10万2千円となっている。
社会貢献給の明細は普通に生活していただけなのに基本給が8万円もある。つまり、『私の普通』は8万円の価値があったのだろう。それで言うなら私の普通を作ってくれた両親には感謝しなければいけないと思う。その他の明細には時間厳守やごみ拾いなどがあった。無遅刻・無欠席でバイトに行ったりした事が評価されたようだ。ごみ拾いに関しては善行とは何かを考えて落ちているごみを拾ってみたりした事が評価された。でもごみ拾いに関してはみんなが同じ事を考えていたためにもう道にごみは落ちていない。ごみのポイ捨ては不法投棄だから犯罪行為なのでマイナスポイントになるため、ごみを捨てないし落ちないようにも細心の注意が払われるようになった。だから、来月も同じようにごみ拾いをする事は実質できなくなっている。
その他にも色々と試したことの評価額も加わってのこの社会貢献給となっていた。965円だった私の時給は1,235円となっていた。私は初めて努力を認めて貰えたようでとても嬉しかった。
私の今月の収入は31万4,000円と前月から10万円以上も上がった。真面目に一生懸命生きていれば認めて貰える。
生きる価値が見いだせなかった私の普通の生活には8万円の価値がある。無意識ではあるが誰かの役に立っていると思うととても嬉しくなった。
ただ、私の浅はかだったのが無意識にという点だった事を後になって後悔する事になるとは、この時の私はまったく思っていなかった。いつもより多い給料に舞い上がってしまっていたのもあるがそもそもが考えられていなかったのである。