被験者6『警察官 松本の場合』3
「現場応援ですか?」
「ああ、近くにベテラン政治家の家があっただろ。
そこだ。」
「事件ですか?」
「自殺…だろうな。」
「えっ、あの人は殺されても死なないような人でしたよ?」
「あの人…時給が0だったらしい。しかも、悪事が諸々ばらされて借金まみれで家族にも見捨てられたらしい。」
「それは…」
「この制度は確かに努力してたのに評価されなかった人達に光をあててるかもしれないが、時給が0の人には厳しいよな。生きてる価値がないって言われてるようなもんだし、今までの悪事に対して挽回のチャンスもなく
切り捨てられるんだからな。
あの人だけでなく0だった人は一定数いたらしい。
その人に対する迫害も起きてるらしい。
役に立たないって判断されたら人じゃなくなるのか?
何をもって価値がないと決めつけられてんだ?
生きてるだけでも素晴らしいって歌ってた歌手の人がいたけどそれだけじゃダメなのか?
もう俺には何が正しいのかもわからんよ。」
先輩は悲しそうに言った。
現場につくと憔悴した感じの高齢の男性が一人でうつむいていた。自殺の現場を少し覗くと、ふくよかというよりも肥え太ったという方が適切なくらいだった政治家の面影もなくガリガリで頬もこけている男が天井から釣り下がっていた。
「おい、やめとけ」
先輩に呼び戻された。
「すみません。」
「いや、別に悪くはないけどさ。
見てて気分の良いものでもないだろ。
家族に見捨てられて、後ろ指差されるのが怖くて外出もできなくて食べ物もほとんど何もなかったらしい。
最後は一人で首を吊ったらしい。
確かに色々悪い事してたみたいだけど、さすがにこれはひどいよな。この社会って本当に正しいのかな・・」
先輩の言うこともわかる。
常に監視され、悪い事をしたら評価が下がる。良い事をしたら評価が上がる。でも、その『評価』は誰にとっての良し悪しなのだろう?この制度になった途端に街中でごみ拾いをしだす人が続出した。ごみの奪いあいまで起こるほどだった。町中にごみを捨てないのは当たり前なのにそれが当たり前じゃなかった社会。
頭の悪い高齢者が『この国を作ってきたのは私達だから敬え』とか怒鳴ってる所を見た事がある。
経済は発展せず諸外国に依存している現状、政治家の不正でまみれた社会は政治不信を起こしていた。
こんな国を作ってきた高齢者の何を敬えというのか理解できない。なんなら若者やこれから生まれてくる世代に土下座して謝るべきなのではないかと思う。
今回の時給生活とか言う政策も完全に責任のがれと政治家の職務放棄でしかない。
AIの判断ですべてが決定されるなら、人間の政治家は必要なくなる。もしAIの判断で社会に貢献できてない人は不必要だから処分するとかになったらどうするのだろうか?よくあるSF映画みたいにAIが暴走して、人間の評価を低く見るようになり、社会全体がブラック企業のようになったならどうするのだろうか?
そんな嫌な想像が頭の中で走り回った。
まさか本当にそんな事になるとこの時は思ってもいなかったのに・・・・・




