被験者5「死刑囚・鈴本の場合8」
健康診断の結果は良好で血液型に関しては特に珍しいわけでもないAB型だった。骨髄に関しては難しくて何をいってるのかわからなかったので、適合者がいれば協力はすると伝えて終わった。自分の牢に帰る頃には周りの人達も戻ってきていた。
「おう、鈴本さん。身体はどうだった?」
「いたって健康らしいです。血液も骨髄も採りたければ好きなだけ採れって言ってやりましたよ。」
「そうかい。でも、これって血を作る家畜みたいなもんだよな?牛乳採るために牛を飼うのと変わらないじゃないのか?」
「いやいや、死刑囚の使い道に人道的な話を持ち込むのが間違ってんじゃないか?死刑になるくらい酷いことしてしまったんだから何されても文句言えないのかも知れないよな。こんな扱いされたくなければまっとうに法律やマナーとか守って生きろって話なんじゃないか?」
「でも、実際に人からしか得られないモノってあるよな。輸血用の血も骨髄も必要なもんなんだもんな。」
「いや、ここでなんでも受け入れたら次は内臓よこせとか言われるようになるかも知れないぞ?」
「まぁ、どちみち死ぬまでここにいるんなら、必要な人のために内臓の提供もしてさっさとくたばらせてくれた方が俺等にしたら良いのかもな。」
皆が口々に言うこともまったく勉強してこなかった俺には難しいことのように聞こえた。
早く死ねるなら心臓移植にでも使ってほしいなと思ったのは俺だけだったのかもしれない。
人には血が流れている。型が違えばなんか不都合があるらしいが、見た目はみんな同じ赤色だ。
死刑囚になったからって青や緑になる訳じゃない。
ここの人が言うように法律を守り、真面目に生きてればこんな生活にはなってないのかもしれない。他の人がどうかは知らないが俺はこうしか生きられなかった。まともな生活もさせて貰えず、何が正しいのかもわからないし教えても貰えない生活のなかで必死に生きてたらこうなっていたのだ。悪いのはこうしか生きれない俺か?それともこうしか生きさせなかった社会や環境か?親のどちらか一方でもまともなら違ったか?周りの大人が幼少期の虐待されてた俺を見つけてくれて保護してくれてたら?もしも過去に戻れたとして俺はどこに戻ればこうならなかったのだろう? 答えのでない疑問に悩みながら自分の独房の天井を眺めることしかできなかった。




