被験者5「死刑囚・鈴本の場合6」
『お前は死ね』と言われた事は今までに何回もあった。
ガキの頃は毎日のように親から言われて、親がいなくなっても周りの大人達から言われて、本当に何で俺は生きてるんだろうと思う事しかなかった。生きる理由も目的もなくそのときの感情で動いてたから今は牢屋の中で天井を見つめる生活を送る事になったわけだろう。
最終的には国から『お前は死ね』と言われたのに、今度は『何もしなくて良いから生きろ』と言われたわけだ。
よくよく考えると日本人の三大義務とやらを一切やって来なかった俺を国が必要とするわけなんてない。
教育も受けてなければ、まともな仕事にも就かず、税金なんて払うほどの所得や物を持っていたわけでもない。
本当に何で生きていたんだろう?
特段で死にたい理由がなかったし死にそうになるタイミングもなかったというのが生きていた理由とかではなく死んでないだけの理由だった。
本当に下らない。人の価値って一体なんだ?
社会に馴染めたら価値ありか?
お金を稼げたら価値ありか?
友達が多かったら価値ありか?
学力が高かったら価値ありか?
そもそも、その価値の有無の判断をするのは誰だ?
馬鹿が馬鹿なりに色々と考えて見ても答えなんて出るわけない。ああ、でも今は機械様が人の価値を決めてんのか。そう思いながら腕につけたブレスレットを見た。
行動を監視してそれを元に人の時給を決める?
金を産み出さない俺を生かして、俺が受けとるはずの金を賠償金として支払っている?俺は三食昼寝つきで働かなくてもそこそこの食べ物が出て暮らしてるのに外では価値無し認定で自殺するやつや自棄を起こして犯罪に走るやつも出てきてるらしい。
どっちがいい生活を送ってるのか疑問だ。
そう言えば今日は誰も何も話してない。
というか、なんか順番に牢から出されてどこかに連れていかれているので数自体が少ない。
なかなか帰ってこない所を考えると少し不安になった。
もともと誰も話さないし隣の人がいようがいまいが関係ない生活だったのに最近はみんなが話しているのが当たり前になっていたために少し寂しさすら感じるようになっていた。そこに看守が来て、
「鈴本。次はお前だおとなしく一緒にこい。』
特に反抗する必要性もなかったので看守の言う通りに牢から出た。




