被験者5「死刑囚・鈴本の場合4」
「なぁ、お隣さん。」
天井を見上げていたら横の独房の人が話しかけてきた。
ここには結構いるが話しかけられたのは初めてだ。
「どうかしました?」
「なんだまともに話せる人だったのか。そう言えば刑務官ともしっかり話してたもんな。俺は池田っていうんだ。
少し暇潰し付き合ってくれよ。」
「囚人同士で話してたら怒られるんじゃないですか?」
「まともに会話が成り立つやつが少ないってだけだったり、死刑囚なんだから人と関わっても意味ないとか思うやつが多くて話してないだけだ。まあ、いけない話を同居して聞いて犯罪して戻ってくる馬鹿とか多いらしいけどな。
俺らは出られないんだろうから何話しててもどうでも良いだろ。
そう思わないか?」
「確かにそうですね。ちなみに池田さんは後何年死ねないんですか?」
「なんだお隣さんは死にたいのか?」
「鈴本です。生きてても何も良いことなんかありませんでしたからさっさと終わりにしたいですね。」
「まぁ、そうなるのか。俺は後………35年と3ヶ月ってとこだな。
それを待つまでもないわけだけどな。」
「どういう事ですか?」
「あはは、単純に68歳の俺が35年って100歳超えてるし、うちは親父もお袋も癌で死んでるから俺も同じように死ぬだろ。
それなら払い終わるまでなんて待たなくても死ぬんだよ。」
「良いですね。俺はまだ30にもなってなくて77年ですから本当に寿命が来るまでここにいるわけですよ。」
二人でどんな事をやらかして死刑になったのか身の上話など話し続けていた。途中で刑務官が来る事もあったが特に注意される事もなかった。久しぶりに人としっかりと話したが以外と楽しいものだった。ここでしか出会えない人でここでしか話す事もなかったような人だが、案外人と話すというのも悪くないと思えた。
池田さんは色んな人に話しかけるようになった。
実際に話しかけると普通に話せる人が多く気づいたら池田さんを中心に話す場所となっていた。
死刑囚にちょっとした希望を持たせた池田さんが俺には眩しい人のように思えた。実際は顔も見たことないがそんな気がした。




