被験者4「政治家・麻田の場合7」
ピーっという機械音と共に視界が真っ暗になった。
手足は拘束され目には何かの機械が取り付けられている。状況の把握をしたくても何が何だかわからない。
混乱状態の私に声をかけて来た者がいた。
「おはようございます、麻田先生。
いかがでしたか、自殺するまでに自分の行いを悔いる気持ちは?」
この声には聞き覚えがある。政府が国民に秘密裏に雇っているマッドサイエンティストだ。
「おい、たしか困野だったな?これは何だ早く私を解放しろ!」
「おやおやそれが人にものを頼む態度ですか?
そんな調子だと現実でも首をつる事になるかもしれませんよ?」
私はゾッとした。経験した事もないのに首にはロープで締め付けられる痛みや苦しみの感覚がある。私が震えていると困野が
「ご安心ください。シュミレーションは終了しました。
ほら、寝相の悪い人っているじゃないですか。シュミレーション中に動き回られても困るので軽く拘束させて貰ってるだけですよ。先生の装置を外してくれ。」
誰かが近づいてきて手足の拘束と頭の装置を外した。周りを見ると黒服のゴツい男が二人と私のつけられていた機械と同じようなものがいくつか、そしてまだ装置が付いた人が数人いるように見えた。そして周りをキョロキョロしている私を面白そうに見ている困野がいる。
「これはどういう事だ。説明してくれ。」
「先生がおっしゃったんじゃないですか?
あなたのご子息が提案された行動監視による国民に時給を各個人に割り振り社会を管理する政策の有用性には疑問がある。
そもそもそんな未知の政策では社会が崩壊する。
私は自分の見たものにしか賛同しないと。」
そうだ。確かに次男が経済の低迷、犯罪の複雑化等を是正するために国民を管理する政策の立案を行い私を含む年配議員が紛糾した場で私が言った。私が黙っていると
「この装置は現在のその人の情報を入力しシュミレーションを行います。ああ、誤解のないように申し上げますが、このシミュレーションにシナリオはありません。シュミレーション内でのその人の判断を元に色んな分岐が精製されます。
つまり、先生が最終的に自殺を選んだのも家族や周囲の人間に見捨てられたのも実際のデータから導かれた結末であり、今からでも改善をしないと遠くない未来に訪れる現実でもあるんですよ。」
「そ、そんな……………」
「先生の今までの不正の証拠まで我々は持ってますよ?
公表してさしあげましょうか~?」
「好きにしろ。私にはもう何もないという事だろう。お前がしなくても次男や長男がするんだろうからな。もう私には味方は誰もいないという事だ。」
「おや、そうでもないでしょう?あなたには最後まで味方してくれてた人がいたじゃないですか?後援会の会長が。」
「そういえばそうだな。あいつは別に企業の偉いさんでも地元の実力者でもないのにずっと支えてくれてたよ。
小学校でたまたま隣の席になって遊ぶようになって、こんな私にいつまでも付いてきてくれたのはあいつだけだった。」
「まぁ、先程も言いましたが遠い未来ではなくてもまだ実際に起こった事でもありません。いま気がつけたなら変えれば良いんですよ。罪を認め謝罪しやり直すための改善を行えば良い。
許されるかどうかはご家族次第ですが少なくとも会長さんは何があっても支えてはくれますよ。」
「なぜ、そう言いきれる?」
「今日もお迎えに来てくださってるからですよ。いつ終わるかわからないって言ってたのに朝早くからお待ちですよ。」
「ふん、腹が減ったな。あいつと二人で旨いものでも食って帰る事にする。」
私は目に浮かんだ涙で前が見にくいながらも友の待つ方へと歩を進めた。
「フフフ鬼の目にも涙ってやつですかね。
今まで自分がすべてで周りが見えてなかったあの人が今後どう変わるか変わらないのかは知りませんが現実でも首をつらない事を願うばかりですよ、フフフ。
さぁ、問題解決するシュミレーションばかりですかね?そろそろ地獄を見る方も出てくるかもしれませんね~。楽しみです。」
困野は一人でまだ装置が付いた人達を見回した。




