被験者4「政治家・麻田の場合6」
いったい私の何がいけなかったのだろう。
家族の誰もいない広い家にポツンと一人でいても考え事しかできない。テレビを付けては私と面識もなければ会った事もないような奴が私のすべてを知っているかのように話している。
私が必死になって取り組んだ事に私の功績としてのものは何一つ無く批判を浴びたものばかりが羅列され、私がどんなに無能だったかという話ばかりが展開される。
お前らが使っているシステムの中にも私が実現させたものはたくさんあるのに悪い場所ばかり切り取って放送している。
こんな事ばかりしているから視聴者に呆れられテレビ離れが加速しているのではないか等と考えてしまう。
政敵がやられていたら特に何も思わなかっただろうしなんなら協力してやっていたかもしれない。
こんな事ばかりやっていたから私は家族に呆れられ捨てられてしまったのだろう。
妻がこの家を出ていく時にこのテレビを置いていったのは私にニュースを見せて『お前は捨てられて当然だ』と伝えるためだったのかもしれない。私はその時その時を一生懸命に生きてきたし、政治家とはそういうモノだと親に教わり、『上手い生き方』というのを先輩議員から教わってきた。
その教えをした人達はもう誰一人としてこの世にはいなかったから『お前達の教えは間違っていたじゃないか!』と責める事もできない。本当に大事な事を誰も教えない社会にもうんざりするし、自分が当事者にならなければその危険性にもまったく気がつかない私にもうんざりする。
私はただ周りからの『こう生きろ』というレールの上に乗っていただけだったし自分から何か変えようともしなかった。
亭主関白が当たり前の時代に生まれ育ったからそうしてきたら、時代は女性の活躍を支援し、家庭とは夫婦で共に支えあって作っていくものに変わっていた。大黒柱の男が偉そうにしてる家庭なんてもうないし、あったとしてもそれはただのモラハラ夫と呼ばれるものらしい。まさしく私の事だ。
今さら悔やんで遅い。私にはもう何も残っていないし、時給が0の私には収入もないからこれから生きてもいけない。
貯金もほとんど賠償に使っているから本当に何もない。
見栄を張るためにリビングにつけたシャンデリアが今はむなしく揺れている。差し押さえように家をしきっている黄色いロープが目にはいる。揺れるシャンデリア、目に入ったロープ。
私はすでに思考が停止し勝手に体が動いていた。
ロープをシャンデリアに結び、輪っかを作り首を通す。
この瞬間になっても恐怖を感じない。乗っていた台を蹴り飛ばし首に力がかかっても死への恐怖はなく安堵感が訪れて私は目を閉じた。




