被験者4「政治家・麻田の場合4」
「麻田先生、時給が0だったと噂になってますが本当の所はどうなんでしょうか?」
同じ政党の議員の一人が事務所に来て聞いてきた。
長男を初めほとんどの秘書が辞めてしまったため、秘書に追い返させたりする事もできない。
自分で追い返す事もできないから取り合ったが、ここ最近はこういうやからがひっきりなしに来てはグチグチと文句を言って帰っていく流れができてしまっている。
時給0というのが変えられない事実であるために強く言い返す事もできないから相手の言う事をそのまま聞いているだけとなっている。私は無価値だと言われてから何もやる気にならず時が流れるのをひたすら待っている。
「それでどうなんですか?噂は事実なんですか?」
「ああ、もういい。疲れたよ。」
「なんですか、急に?」
「もうはぐらかしても無駄なんだろ?
もうわかってるのにわざわざ来てダラダラしゃべってるんだろといってるんだ。そうとも私は時給0だ。
なぜこんな事になったのかもわからないまま、私は職も家族も失いどうしようもない状態だ。
これが聞きたかったのだろう、満足か?」
私がまくし立てるように言うと議員は少しひきぎみになり、
「えっ、いや、そのー…………」
「時給の公表までもう時間がないから、全議員の時給を把握しておきたいとかそんな理由だろ?
良かったじゃないか、ひとつ仕事が終わったぞ!
満足したら帰ってくれ、もう誰とも話したくない気分だ。」
追い出した後で私は脱力感に襲われた。
私がこんな状態になっても誰も心配してくれないという事が私がいかに嫌われていたかを表しているように感じられた。
家にいても居心地が悪いから事務所に引きこもっているのに、その事務所にも私を追及しようとする者達が押し寄せて来て心苦しい。私がトイレに行こうと立ち上がると玄関の呼び鈴が鳴った。
さっきのやつが戻ってきたのか、それとも違うやつが来たのかと思いドアを開けるとスーツ姿の体格の良い男が二人いて、
「衆議院議員の麻田先生ですね。我々は警視庁捜査二課の者です。あなたに収賄並びに強要、恐喝罪のため逮捕令状が出ています。もうお分かりだとは思いますがそちらのブレスレットをつけると行動の監視や情報を収集される事があります。
あなたがこれまでに大企業や支援者から金銭を受け取り、取締の緩和や贈賄側の利益となる行動をとってきた事がすでに観測されています。また、あなたのご長男さんをはじめ多くの方から告発も受けてますので、否定されても無駄だという事はお伝えしておきますね。」
「私は国民の意見を聞くために色々としていただけだ!それが仕事なんだから犯罪だと言われるのは聞き捨てならんな。」
「これらの容疑はおそらく時給にも影響してるんじゃないですか?どんな良いわけをしても無駄ですよ。社会にとって害になると思われる行為をとった場合はAIの判断で逮捕令状が発布される形式に変わったんです。
なので、逃げる事はできませんよ。」
警察官は私の腕をつかみ手錠をはめた。私は目の前が真っ暗になるのを感じた。




