被験者4「政治家・麻田の場合」
私は68歳の与党に属する国会議員の麻田信雄。
当選8回で父も祖父も国会議員だった名門の政治家一家だ。
財務や外交の大臣を歴任したが総理にはまだ(・・)なれていない。派閥に属しているがいつまで経っても会長のお鉢が回ってこない事にかなり不満を感じているが、派閥の会長が現職の総理だから仕方ないともいえる。今回の組閣では何の役職も貰えなかったが全体的に若い者に経験を積ませるという事だった。
別の選挙区から出馬させている息子が経済財政担当相に抜擢されているから、今回はおおめに見てやろうと思っている。
私の政治家生命はあまたいる報道に一度も名前のでない国会議員とは違い順風満帆だといえるだろう。
あとは総理大臣になって何年か勤めたら秘書をしている長男に地盤を譲って勇退するだけだ。
私には輝かしい未来とその展望があった。
そう、あの時までは…………
「・・・・・というわけで、我が国の経済・産業・治安維持・内政の改善を目指して新たな制度の導入を行う事が閣議決定しました。この制度下では行動の観測とAIによる行動評価により、その人の価値が判断されます。
社会全体を管理しきれない現状を打破し、資本主義の原点に立ち返り努力した者が成功し、怠惰な人間や不当な行いをする者が困窮していく、あるべき姿に方向修正を行っていきます。」
「いやいや、ちょっと待ちたまえ。
そんな制度にしたところで国民の評価は得られないよ。
まったく誰が考えた政策だね。」
私が鼻で笑うと、担当の官僚は言いにくそうに
「あ、えーとご子息です。」
「何?息子が?」
まったく何を考えているのかわからない次男のやることだ。
そもそも長男だけが私の跡取りとして政治家になれば良かったのに勝手に他の議員の婿養子になって選挙に出て当選してと勝手なことばかりする息子だ。
今さら突拍子のない政策を提言しようが構わないが、これでは私の支援者の多くから私が質問責めに会うではないか。
まぁ、私のような優秀な政治家はどのような制度下であっても苦もなく生きていけるだろう。
私はこの時、完全に甘くみていたのだ。
この制度の基準は私ではないという現実を突きつけられる事になるとは夢にも思っていなかった。




