被験者3 「会社員・山野さんの場合8」
昇格・昇給してこの会社で働き続けるのも悪くない。でも、自分が好きだったスポーツに残りの人生をかけてみるという冒険もしてみたい。あまり有名なスポーツでもないし野球やサッカーのように小さな頃から親しむスポーツではないので競技人口も少ないから盛り上がらない。現役の頃から小さな子供たちに対する教室とかイベントなどを増やせば良いのにと思っていた。
もしかしたら今がそのチャンスなのかもしれない。
チームの監督は長くても数年くらいで成績が伴わなければすぐに契約を切られるだろう。
だが、新事業として教室やクラブチームを作らせて貰ってそこの責任者にして貰えれば監督を辞めた後も関わる事ができる。
事業としてできなくても監督をした実績が残れば自分だけでも立ち上げられなくはないだろう。
もう既に辞める方に傾きかけていたがここの仕事も捨てがたい。昇格したら妻との仲も…………と思ったがそれは無理だろう。
色々と考えたが引き抜き先について詳しく教えて貰って、こちらからの条件をどれだけ飲んでくれるのかという所で判断する事にした。
それから数日して引き抜き先に現れたのはチームメートの中でも仲の良かった男達だった。彼等が全員で私を監督にしてくれるといってくれた時には涙を流してしまった。
私が考えていた構想も全面的に賛成してくれたし、事業として作る事も約束してくれた。自分達の会社で難しくても出資してくれるという。みんなで盛り上げようという言葉に私の心は決まった。社長にもその旨を伝えて退社する事にした。
社長は残念そうだったが、困ったら戻ってきてくださいとも言ってくれた。今日はどうやら涙腺が緩くなっているようだ。
今なら三流ドラマでも泣ける自信がある。
そんな事を思いながら帰宅したのだった。




