被験者3 「会社員・山野さんの場合6」
私が家に帰ると妻はリビングにいた。今日あった事を話せば、妻も私を見直してくれるだろうか?そんな淡い期待を持ったが今さらそんな期待をする事自体が間違っている気がする。
私達は離婚していないだけでもう既に終わっているというのがわかっているからだ。ただ何も言わないわけにはいかなかったので
「お前はもう役所に行ったのか?」
「よくわからないですし、パートの時間とかもあったので行けてないんですよ。」
「ふん、どうせお前なんて価値もないんだろうからさっさと登録だけしておけよ。
登録しないと罰則があるような事も言っていたからな。」
「そうですね、時間を見てやってきます。」
高圧的な態度になってしまったし言葉にも棘があるのはわかっていた。適当に返事されている事もなんとなくわかった。そう思っていると
「あなたはもう手続きをされたんですか?」
「会社の方針で手の空いてる者から順に行く事になっている。俺は当分は行けそうにないからな。
本当に家に帰るのも遅くなるほど忙しいからな。」
手続きも終わっているし会社にいてもやる事がなくて早く帰れはするが、気まずいので適当に時間をつぶしてから帰ってきていたのでそれを今後も続けておこうと思う。
「そうなんですか。」
軽くあしらわれた事が伝わってきたので思ってもいない事をぐちぐちと言ってしまった。そんな空気にも耐えられなくなり自室へと戻った。カバンから制度の説明の書類を取り出して見てみた。
自身の時給に関しては人に公開しなくてもいい。例外的に公職に就く国会議員などは公開しなくてはいけない。価値のない人間に政治を行わせないとか国会議員として人として役に立っていないという事になるためだ。個人に関しては自ら意図的に公開しない限り死ぬまで隠しておくこともできる。
次に税金に関しては徴収制になっているため、その月の給料の2%が一律で徴収される。年度末時点で年収が1千万円を超える場合には年収額の3%分を高額収入者として追加で納める事になる。年収が300万円以下の場合は月収で徴収していた2%分を1%に計算し直して差額を還元する事になるらしい。
個人で計算されるので婚姻関係や世帯収入などの換算はされなくなる。扶養控除などは夫婦の年収が合計で1200万円を超える場合は適用されず最大65万円の控除が認められるようだ。あくまで夫婦の合計年収で控除額が決まるので1200万円に近づくと段々と控除額が減っていく形になっている。
離婚したとしても特にこういった税金の問題は発生しないだろう。
妻の様子を見ながらになるが離婚するかもしれない事は頭の片隅にでも置いておこうと思った。




