被験者3 「会社員・山野さんの場合4」
役所の近くの公園のベンチに腰をおろして本人確認用の時給証明書を見てみた。正直に言うと期待はしていないし自分に価値があるとも思ってない。そもそもが先ほど着けたばかりのブレスレットに私を評価され値段をつけられると言うのが納得できない。
何をもって私を値踏みしているのかと思うし、『これから』を評価する物なのだとしたなら手に握っている書類はどのように判断されているのだろうかとわからない事ばかりだ。
書類を開くと個人情報として時給の金額を積極的に他者に話す必要がない事と他者の情報を強制的に聞き出す事が刑罰の対象になる事などが書かれていた。
そして本人欄という場所に私の時給が書かれている。
私は目をこすって二度見した。私の時給は2256円となっている。単純計算で1日8時間働くと1日で17,000円、週休2日と考えて20日働くと44万円となる。正確に言う休日に仕事をする事もあるし残業する事もあるからもう少し増えるだろう。
そうすると50万円くらいは貰えるかもしれない。
今までの給料がどんなに頑張ってても35万を超えなかった私からすれば破格の給料だ。しかもこれは私が仕事をしている時に貰える基本給で何か社会貢献する事によりボーナスを獲得できる。
私が役に立てる事は何かと考えては思い付かずにやめたが確実に何か行動すればそれなりの給料を得る事ができる。
だが、私には私がここまで評価される理由がわからない。
時計を見ると少し時間がかかりすぎているような気がしたので急いで会社に戻り、人事課に時給証明書を提出して職場に戻るとリーダーが近寄ってきて、
「山野さん、どうでしたか?手続きは難しかったですか?」
「いいえ、大型のモニターで手続きの仕方とかを詳しく説明されていますし、手続き時には職員の方がわかりにくいところを説明もしてくれるので私でも簡単にできましたよ。」
「そうですか。何かこうしておけばよかった等はありましたか?」
「いえ、特にはないですね。」
「ありがとうございます。じゃあ、佐藤くんの仕事の引き継ぎがこちらになります。次は佐藤くんにいってもらいますね。
佐藤くんには僕の方から伝えますので、こちらの仕事にかかってください。あっ、少し休憩されてからで大丈夫ですから。」
リーダーはそういうと佐藤くんの所に歩いていった。
佐藤くんは私よりもずっと若くグループで一番仕事ができる人だ。私に対してもあたりが優しく、ひそひそと悪口言ってるような奴らよりも百倍はできた人間だ。
佐藤くんが私に会釈をして職場から出ていくのを見送って、佐藤くんの仕事の引き継ぎに目をおとして自分の席について作業に取りかかった。




