被験者2 「主婦・山野さんの場合6」
ピーという機械音が鳴り響く、何が起こったのか私はわからずとりあえず動こうとしたが固定されているようで身動きが取れない。すると放送で
『係りの者が外しに行きますのそのまま少しお待ちください。』
放送後、すぐに人が近づいてくる音がして手足が動くようになった。目の所についていた機械も取られると周りには黒いスーツを着たサングラスの強そうな男の人が両脇に立っていた。どうすればいいのかと思っているとまた放送が入り、
『こんにちは山野さん。私はこの施設の管理者で体験して頂いたシュミレーションを作った困野と申します。このシュミレーションは体験者の抱える問題に対して一つの答えを与える事が出来れば終了する仕様になっています。あと拘束させて頂いたのは中には暴れる人もいるので念のためにさせて頂いただけなので他意はまったくありません。ちなみになんですが、先ほど私は答えの一つを与えると申しましたがこの機械により強制的にその答えを押し付けているわけではなくあくまでも自分の感じた中から得た答えを選んでもらっているにすぎません。』
「私の得た答えとは何でしょうか?」
私は何が答えなのかを把握しきれていなかったので聞き返してしまった。放送先の困野が
『私もシュミレーションの方は確認させて頂きました。
その中から一番大切な事をお伝えするとあなたは自分の価値を理解できていなかったという事ですね。
今回のシュミレーションではその人の行動に対して、生き方に対してどの程度の価値がありお金を払っても良いと思われるのかを明確にするものでした。
あなたはその辺のサラリーマンよりも高い給料を得られる価値を持った人です。
人は自らを囲む環境の中から自分の価値を決めるための条件を選択していきます。
ですが、環境とは無意識に自分を包むものであり自分が選択したものではないために自分にとって不都合な条件ばかりがそろっていても、自分はこの程度の人間だと諦めさせられてしまう。
違う環境の中にいれば選択できる条件も変わってくるわけですから、自己完結せずに全く違う人と関わり新しい環境を常に求めなければいけないわけです。
今回のシュミレーションではあなたは旦那さんとの別れを選択しました。ですが、実際にそうするべきだという話ではありません。実際にシュミレーションの最後にあなたは自由になりたかったと思っていました。離婚する事はもちろん自由になる事にも繋がりますが、それが本当に望んだことではないわけです。
あなたの人生だからあなたの選択が最優先であり法律や人としての道徳に反しないならすべて許容されるべき事です。あなたが苦しんだ事に対してどうして欲しかったのか、どんな助けが欲しかったのか、自分ならどんな助けができるのかまで考えて頂けると今回のシュミレーションに意味ができると思います。
今回は強制的に参加いただきましたのでそのお詫びとお礼をかねまして、協力に対する謝礼とあなたが望む事業に対しての出資をお約束します。もしも事業に屈強な男が必要でしたら側にいる二人もいつでも貸し出すことができますのでお気軽にお申し出ください。
あなたのこれからの人生をどうするのかはあなたのあなたによる、あなたのための選択にかかっています。それでは別室で謝礼と出資に関しての説明を受けてご帰宅ください。』
山野さんは係りの者に案内されて出て行った。
『共働きの夫婦が増えてきた現代において主婦だとか主夫なんてものは存在できなくなっている。
家族として共に生きるならどちらかに寄りかかるのではなくお互いに支えなければいけない。
特に女性軽視の風潮が強かった日本においては男こそが変わらないといけないという風潮もあるが、それも違う。話し合い、時にぶつかり合ってでもお互いに納得し尊重しあえる環境を作るのは男だけでも女だけでもできるはずがない。山野さんは自分が我慢する事で表面や上辺を取り繕っていただけに過ぎない。
さぁ、彼はどのような答えを出すのか楽しみですね。』
困野はそう言って、先ほどまで山野さんが使っていたシュミレーターの隣のシュミレーターを見た。




