被験者2 「主婦・山野さんの場合3」
夫は相変わらず威張り散らし帰りの遅い日々を過ごしていた。
私は普段はしない所の掃除まで丁寧に行うようにした。
他の人達は街中のごみ拾い等もしていたが私は運動神経が良くないので他の人ほど手際よく拾ったりする事ができないため早い段階でごみ拾いに参戦する事を諦めた。
パートに関しては特に新しく何かに取り組む事もなく、普段通りの感じで一生懸命働いた。他の人は積極的に他の人の仕事を手伝ったりしているが、ある意味で仕事の邪魔をしているのではないかと疑問に思う事が多かった。
そんな毎日を過ごしていたらあっという間に給料日が来た。人によって給料日は違うが私の給料日は毎月21日となっていて、それは今も変わらない。15日に世間で給料を貰った人達はあからさまにテンションが別れていた。たくさん貰えた人、ぜんぜん貰えなかった人、時給の変動があった人などがそれぞれの結果で目の色を変えて動き出した。
私も夫もまだ給料を受け取っていなかったからその時の様子を見ながら不安にもなった。
私は長蛇の列になっている銀行のATMに並んで戻ってくる人達を見ていた。喜ぶ人、落ち込む人、特に表情に出ていない人、ATMの明細書を握りしめて早足で離れていく人。
明細書を持った人はまだ見ていない人で離れた場所でゆっくりと確認するつもりなんだろう。
この感じだと私もATMの所で確認するよりも離れた所で見た方が良さそうだ。人は自分が思っているよりもずっと感情が顔にでる。もし私が嬉しそうにしてたり悲しそうにしてたりをご近所さんにでも見られたらどんな噂がたつかわからない。
私の計画のためにも私の給料事情は秘密にしておきたい。
そんな事を思っていると、ご近所の噂話を広げてる和多さんが絶望した顔で歩いてくるのが見えた。
根も葉もない噂を流しては人を傷つけて来たあの人はあたりまえのように評価が低く、給料もそんなになかったのだろう。
一時の楽しみのために人生を棒に振ってしまったのかもしれない。これは推測だから実際はどうかわからないし、声をかけようとも思えなかったから和多さんから見えないように前の人を使って隠れる事にした。
あまり周りが見えていないようで何人か和多さんに話しかけたが、誰にも何も答える事なく歩き去っていった。
今後、和多さんはどのような扱いになるのだろう?恨みもかってるだろうからいじられたりするのだろうか?
でも、そうするといじった人が評価を落とす事になるから、誰にも真剣に相手をして貰えない人生になるのかもしれない。
『人の振り見て我が振り直せ』とは良く言ったもので、自分は同じ事をしていなかったか?周りの人と良好な関係であったかなどを考えさせられた。
まだまだ先の見えない長蛇の列の先頭はこれからの私の進もうとしている道のように見えて不安がこみ上げて来た。




