被験者2 「主婦・山野さんの場合2」
「お前はもう役所に行ったのか?」
帰宅した夫が夕食のためにリビングに座って聞いてきた。
すでに登録もして色々と情報を手に入れてきたが詳しくは話したくないと思ったのでごまかす事にした。
「よくわからないですし、パートの時間とかもあったので行けてないんですよ。」
「ふん、どうせお前なんて価値もないんだろうからさっさと登録だけしておけよ。
登録しないと罰則があるような事も言っていたからな。」
「そうですね、時間を見てやってきます。」
よっぽど自信があるのかやはり私を下に見ているからなのかはわからないが偉そうな態度は変わっていない。
「あなたはもう手続きをされたんですか?」
「会社の方針で手の空いてる者から順に行く事になっている。俺は当分は行けそうにないからな。
本当に家に帰るのも遅くなるほど忙しいからな。」
偉そうに言っているが浮気している事を隠すための嘘をついているのだろうと思う。万年平社員のこの人が仕事で忙しいとするなら仕事が遅すぎて溜まっているからなのだろうと思う。
「そうなんですか。」
軽くあしらってこの会話を終わらせた。正直に言うとこの人と話す事すらも嫌になってきた部分はある。
その後もぐちぐちと言われ続けたが適当に聞き流して夫が自室へ戻るのを確認してから、各種の書類に目を通し始めた。一回自室に入るとほとんど出て来る事がないため夫を気にする必要もないだろう。
まずはブレスレットの説明書から読む事にした。
このブレスレットは特殊な装置で小型のカメラなどが内蔵されていてあらゆる角度から行動を把握されているらしい。AIによる判断で時給の上下が決まるらしいのでうかつな行動はとれないだろう。
逆にこのブレスレットがあるにも関わらずモラハラをしたり、浮気をしたりすれば確実に評価は下がるのだからしないだろうと思うが、そんな事も関係なくするんだろうなとは思う。
どんな行動が良い方向に評価されていくのかなどは明記されていないため困るが、頑張って良い方向になるようにしていこうと思う。私の最初の判断での時給は1,620円となっていた。今までのパートは980円くらいで早く出勤したり遅くまで働いたりして1000円を超えるくらいしかなかったわけだが、それを大きく超えてきた。
これだけあれば普通にパートに行って5時間くらい働き、家で家事をすれば月収もかなり貰えそうな感じがする。今月もしっかりと頑張って来月の給料を見ながら今後の事を見据えていこうと思った。




