【語り】ケンジ③
だから『ホラ吹きケンちゃん』も嘘。
本当は『ホラ吹きAくん』……全部Aくんの体験談を俺に置き換えて話しただけ。
彼はグループのリーダーみたいな感じでさ。俺はAくんとは学区が違うけど家が近くて『かくれんぼ』にも参加してた。
あの日は俺が鬼だった。
次の日Aくんはウチに遊びに来たんだけど、ばーさんに俺はいないことにされた。
『あの子とはもう遊ぶな』って言われて、頭にきてAくん家に行ったんだ。
その時Aくんから聞いたのが話した内容の殆ど。
あ、全部嘘って言ったけど、中学でボッチだったとかは俺の話。
Aくんが『もともとホラ吹きだ』って周囲に広めて、彼に『時折ホラを吹くように』ってアドバイスしたのも俺。ばーちゃんの態度見たらさ、このままじゃヤバいって思って。
この選択は正解だったよ。嘘っていうか『ホラ』だからね。Aくんは元々人気者だったからその辺が上手くてさ。 『〇〇には埋蔵金があるらしいぜ』とか、馬鹿馬鹿しくて皆が盛り上がるようなホラをちょいちょい吹いてた。
でももうあの場所には近寄らなかったし、あの日のことはふたりだけの秘密にした。
その方がいいと思って。
──近所にさ、お姉さんがいたんだよ。
もうお察しだろ?そう、消えたんだ。
Aくんは足しか見なかったらしいけど、きっとその人だと思うんだ。
真面目で優しい人だった。母子家庭だったかな?たまに手作りのお菓子とかくれて。顔はおぼえてないけど、美人だったように思う。
年齢的に今の俺らくらいだったし、いなくなっても『あ、就職したのかな』とか『結婚したのかな』くらいで誰も気に留めない。
俺も特に気にしなかった。
でもそこのオバサンが一年後くらいに亡くなって。黒服の親戚っぽい人らが家に出入りしたんだけど──見てないんだよ、彼女を。一度も。
そんなことがあったから俺もう地元が嫌で。
それでずっと帰らなかったんだけど、実はさ、一回だけ帰ったんだ。成人式に出るのに。
そこでAくんに会ったんだ。
で、その話になった。