ナカさん視点②
「中から出てきたのは近所の有名な代議士センセイの息子で。 カーテンの奥には女の人の足が見えてた」
「それ、ただヤッてただけじゃねぇか」
ケンジの話に俺は呆れたが、彼は「だよね」と含んだ笑みで流して話を続ける。
「で、その息子がズボンのベルトをカチャカチャいわせながら凄むわけ。 『ココはウチの土地だ。 勝手に遊んでんじゃねぇよ』って。 俺は慌てながら、皆に声を掛けて逃げ帰ったんだ。 ……で」
『この後どうなったか』を問いかける様に、不自然なところで切ったケンジは、再びビールに口を付けた。
「ナカさんはさぁ、そういう知識っていつ頃から知ってた?」
「あ? エロいことの? ……う~ん、俺は割と早かったかな。 兄貴いるし、エロ本とか」
「俺も早かったんだよ。 最初に話したけど田んぼの貯水庫とかさ、何故かエロ本が落ちてたりして、まぁ皆でそれを見に行くわけ。 そのかくれんぼの時は小4だったしね」
「状況に興奮したって話?」
「興奮っていうとちょっと違う。 超怖かったんだ……本能的と言っていいかな」
話のオチだと思っていたものは、違うのだろうかと思い出したころ、ケンジは突然話を変えた。
「──俺ね、中学の頃ボッチだったんよ」
「え」
「ずっと人と関わらないようにしてたっていうか。 休み時間は勉強するか本読むかで」
「ああ、今日も勉強してたしなぁ。 真面目だとは思うけど……中学では浮いちゃったの?」
確かにケンジは真面目だが、別にコミュ障とかじゃない。むしろ皆と上手くやりながら、好きなことをやるタイプだ。
話の向かう先がよくわからないまま話を促すと、時系列はまた小四に遡っていた。




