ざまぁされるヒロインは悪役令嬢を味方につける
初投稿です。
こんな終わり方もありかな?という短編です。
世界観も話もふわってしてます。
それでもよければ読んでくださると嬉しく思います。
「JKってご存知でしょうか?」
わたくしの護衛兼執事見習いのリアムを扉の外で待機させ、この部屋にはわたくしと麗しいご令嬢の2人しかおりません。
只今、学園の中にある食堂の隣にある談話室の一室におります。
わたくしは、麗しいご令嬢をソファーに促す前に話を切り出してしまいました。
誰もいないこの空間でしか聞けないわたくしの質問に、目の前にいる麗しいご令嬢がほんの少しの反応したのを見逃さなかった事を内心で称賛しながら次の質問をします。
「TKGの料理はどう思われますか?」
「え…っあれは料理とは……っ」
思わず反応してしまい言葉にしてしまった麗しいご令嬢は、我に返り口を閉じた仕草に確信しました。
「ローズマリー様は日本人の転生者ですね?」
私は胸の前に両手を握りしめ、そうだと言ってほしくて懇願するように上目遣いで目の前の麗しいご令嬢を見つめました。
この姿を見せると殿方も両親も義両親も弟も義弟もお願い事を聞いてくれるわたくしの奥義です。
意図的なあざとさだとリアムには効きませんが、きっとご令嬢にも効いてくれると願いながら、心臓はドキドキしています。
彼女はしばらくわたくしを見下ろしじっと見つめていましたが、手元に持っていた扇を開いて口元を隠して言ったのです。
「…そうですわ。貴方も転生者ですのね?」
「はい」
「…それでは、どの様な事がお聞きになりたいのかしら?」
さすが未来の王太子妃様です。話が早くてとても助かります。
「ローズマリー様は、この世界が小説の中と酷似しているのはご存知でしょうか?」
「ええ…学園に入学してからあなたの外見を見て、小説の中ではないかとは思いましたの…申し訳ございませんがこの一週間あなたの動向を窺っておりました」
彼女の言い方から考えて、この世界の小説を知っている口振りです。
そしてわたくしの存在も認識しているようです。
ならば、わたくしの人生がかかっている今回の本題を出します。
とても緊張して手に汗握ります。
「…ローズマリー様は今の婚約者様をどう思われていますか?」
彼女は、わたくしの言葉にほんのり頬を染めました。
扇で隠されているのは口元なので、僅かに頬が見えています。
その表情に僅かな希望が見えてきました。
わたくしにとって彼女の想いでこの先の未来が変わってきます。確信がほしくてその先を聞いていきます。
「…ローズマリー様は、このまま婚姻を望まれていると思ってよろしいでしょうか?」
聞きながら、わたくしの心臓はドキドキと早鐘を打っていきます。
どうか頷いて!
彼女の反応に手に汗握りながら待つ事数秒。
彼女はこくりと頷いたのです。
そう!頷いてくれたのです!
わたくしは、扇を持ってないローズマリー様の手に向かってそれはもう勢いよく両手で握りました。
「ロ…ッローズマリー様は隣国の王太子様に溺愛されるルートは望まれていないと…!そう言うことでよろしいでしょうか!?」
わたくしの勢いに少し身を引きましたが、頷いてくださいました。
それを見たわたくしの涙腺は決壊しました。
突然の号泣にローズマリー様は目を見開きます。
どうやら思っていた展開と違っていたのか、ローズマリー様の淑女の仮面も剥がれてしまったようです。
「…ハークスレイ様大丈夫ですか?」
ローズマリー様は扇を閉じ、制服のポケットから、ハンカチを取り出して、わたくしの目元をそっと拭ってくださいました。
その優しさにまた涙が止め処なく出てきてしまい、ローズマリー様を困らせてしまいました。
トントン
「お茶のご用意が出来ましたが、入室してもよろしいでしょうか?」
扉の外にいたリアムの声です。
わたくしは泣きながら頷くとローズマリー様が代わりに入室の許可を出してくださいました。
中に入ったリアムは、目を見開きましたが、何事もなくわたくしとローズマリー様を対面のソファーに促して、お茶とお菓子をテーブルにセットしてくれました。
わたくしの横にきたリアムは、片膝を床に跪かせ、ハンカチを取り出して、わたくしの目元を優しく拭ってくれます。
「ミラ様、どうでしたか?」
リアムの言葉にわたくしは頷きます。
「ではその後の話は出来ましたか?」
その言葉にはわたくしは左右に首を振ります。
わたくし達の会話を聞いたローズマリー様が尋ねてきました。
「あの、マーフィー様も転生者なのですか?」
「いいえ、違います」
リアムの返事にローズマリー様は目を丸くされました。
「幼少期の頃にミラ様に話を聞きました」
「え…その…話を信じられたのですか?」
ローズマリー様は戸惑っております。
「はい。内容を聞いて旦那様に相談しまして調べてもらったところ、信じるべき事柄がいくつかありました。そして奥様のご実家になる隣国には、魂は何度も繰り返すというお伽噺話もあるとの事で、前世の記憶を思い出す事もあり得るのではないかとなり、信じるに値することだと結論いたしました」
リアムの言葉にローズマリー様は目をパチパチされました。
「その…伯爵様達は学園の中での出来事をご存知で?」
「はい」
リアムの言葉にシンと部屋に沈黙が流れました。
ローズマリー様が首を傾けしばらく考案し、納得するように頷いて聞いてきました。
「…もしかしてこの一週間の間でハークスレイ様が私の近くで躓くことが多かったのは…」
「はい。ローズマリー様にお話をお聞きしたかった事と、結果次第では何通りかの中の案を聞いて頂けないかと思っていたのですが…ミラ様はその、よく躓く方なので上手くいかず…ローズマリー様が気を利かせていただいたおかげでお話ができております。ありがとうございます」
リアムが残念な子を見る眼差しでわたくしを見ます。
そうなのです。この部屋に入る事が出来たのはローズマリー様が誘導してくださったからです。
実はわたくし。
伯爵家に養子に入った5歳からドレスを着るようになったのですが、なかなか慣れずいつも何もないところでも躓いていたのです。
それが癖になってしまい、ワンピースでも他の服でもどこでも躓いてしまうようになってしまいました。
リアムが護衛兼執事見習いでわたくしの側にいるのは、わたくしが床とこんにちはしないために受け止めるためにいます。
元々将来の護衛にと3歳年上のリアムが選ばれていました。
小さな頃から一緒にいたため、わたくしが躓くたびにリアムはわたくしの体を受け止めていました。
そのおかげもあるかもしれませんが、今ではとても反射神経がよくなってます。
学園で護衛が付くのは王族のみです。貴族子息や令嬢には付きませんが、わたくしの躓く頻度が多い事と、怪我をしてはいけないという事で、わたくしが入学する前に卒業したリアムですが、特別に学園でもいてくれるよう配慮していただきました。
本業は護衛ですが、身の回りも出来たほうが都合がよくなるので、一応執事見習いも兼業してもらってます。
話が逸れてきてますが、この勢いにまかせてわたくしのことを少しお話します。
あれは5歳のある日。
町にある噴水の前で同じ年頃の子供達と遊んでいた時に、突然光魔法が発動しました。
発動時にキラキラと光が輝き、周辺を明るくさせていたところ、ちょうどその時にハークスレイ伯爵が町に来ていたのです。
わたくしが住んでいた町がハークスレイ伯爵の領地だったので、ちょうど視察に来ていたところでした。
光を見たハークスレイ伯爵は、光の元へとやってきて、光魔法を目撃。
ハークスレイ伯爵の目は、少年のような瞳でキラキラと輝やかせていました。
そこからハークスレイ伯爵は、わたくしに声をかけ我が家にやってきました。
その時にわたくしの両親と弟に熱弁という説得が熱く語られました。
光魔法がどれほど稀少なものかを熱く語り、養女にしたらこんな事やあんな事がお得ですよーとぜひに。ぜひに!と。
いやぁ、あの熱意はすごかったですわ…両親たじたじ。
にこやかに幸せにしますから!と言われ、ハークスレイ伯爵にプロポーズされました。
いや、違います。でも勢いがそんな感じだったのです。
両親もそんなハークスレイ伯爵を見て、じゃあお願いしますとなり、晴れて私はハークスレイ伯爵の養女へとなりました。
いや、両親ノリが軽くないかいと思ったけれど、視察の時には一緒に町に連れてくと言われ、その時は両親といればいいとも言われたのでならいいかと私も軽いノリでした。
両親がにこにこにしてたから子供達もにこにこです。
深く考えておりません。子供でしたもの。
ハークスレイ伯爵のおじさん優しそうでしたし、両親もにこにこしていたので大丈夫だと思ったのです。
そこからはあれよあれよと話が進み、屋敷へ住むようになりました。
そしてハークスレイ伯爵家ではドレスを着るようになり、躓くことたくさん。
これは危ないと早々にリアムに護衛の話がいき、すぐに紹介されたその日にも躓きまして、そこで前世の記憶を取り戻しました。
わたくし5歳。
前世の記憶と今世の記憶がぐるぐるなりましてパニックを起こしながら、近くにいる頼りになりそうなお兄さんのリアムに支離滅裂な事を全てお話しました。
わんわん泣くわたくしをリアムは優しくポンポンとリズムよく背中を叩き、落ち着かせ寝かせつかせました。
この時リアム8歳。
落ち着きすぎではないですか?
その後リアムは支離滅裂だった話をわかりやすくまとめて当主に話をしました。
すぐに伯爵家総出で話の辻褄は可笑しくないか調べたそうです。
当時のわたくしの話では光魔法を発動して養子になるのは13歳でした。
リアムはわたくしと同じ年で王太子の護衛騎士でした。
養子になるのも強引で家族とも会えなくなると言うもので、ハークスレイ伯爵の性格も全く違っていた事から、始めは戯れ言だと思われていました。
しかし、わたくしが知らないはずの貴族達の家族構成、王族のやんごとなき話が現実と一致しました。
そしてハークスレイ伯爵夫人のお伽噺話も参考に、これは未来の1つと捉えたそうです。
ハークスレイ伯爵家柔軟すぎませんか。
そこからあらゆる案を想定し、学園に入学した時には悪役令嬢であるローズマリー様に味方になってもらう方針で淑女教育を受けてきました。
ローズマリー様がリアムと話をしてくださる間、リアムの手はわたくしの背中を擦って落ち着かせてくれました。
リアムの手は本当に癒しの手をしてます。
おかげで涙も止まりました。
用意されたお茶を一口飲み、落ち着きます。
「ローズマリー様、突然泣き出してしまい申し訳ございません」
「大丈夫ですよ。マーフィー様からお話を伺いましたが、ハークスレイ様が私にお願い事があるそうですが、どの様な事でしょうか?」
ローズマリー様ご自身が悪役令嬢と知っているため、少し緊張されています。
「ローズマリー様は、リアム含めて攻略対象が5人で、その中に婚約者の王太子様が入ってるのはご存知ですね?」
「ええ。私はヒロインに断罪されますが、最後はヒロインをざまぁして隣国の王太子様に救われ溺愛されますわね」
「はい。ですが現実はローズマリー様は今の婚約者と婚姻を望まれてます」
「そうですわね」
「その話を聞いて安心してしまい泣いてしまいました」
わたくしの安心という言葉にローズマリー様はきょとんとされました。
「わたくしはリアム以外の攻略対象者とは近づきたくないのです。断罪ざまぁ回避したいのです。特にローズマリー様の婚約者の瞳に映りたくありません」
わたくしの言葉にまたローズマリー様は目をパチパチされてます。
なんなんですか。あの可愛らしい仕草。
「ローズマリー様にお願いしたい事は、残り4人の攻略対象者とわたくしに接点が出来ないように協力してほしいのです」
「え…?4人?…マーフィー様以外…?え…?恋人ですの?」
さすが未来の王太子妃様です。
頭は疑問に思いながらも回転処理が早いです。
そうなのです。
わたくしとリアムは恋人同士になっています。
わたくしが学園に入学する前のことです。
リアム17歳、わたくし14歳の時の頃。
わたくし達は普通の護衛と令嬢にしては距離が近かったのです。
2人でこれは、恋なのかどうなのかどう捉えたらいいのか悩み、色々実践してみました。
唇以外の顔中にキスをしあったり、抱きしめあったり、膝枕しあったり、お昼寝で抱きしめながら添い寝しあったりたくさんの事を試しました。
それでもわたくし達はよく分かりませんでした。
2人共に鈍すぎたのです。
そこでやはりと言うべきか、当たり前のように当主に2人で相談しました。
何でも解決してくれるという絶対の信頼を寄せている私達です。
何かあれば当主に相談。報連相は大事です。
ええ。あの時の当主は、そこまでして何故分からないという顔をしておりました。
そして当主に言われたのです。
唇にキスをしてみなさいと。
その言葉に2人共に初めてドキドキしました。
そして当主の前でキスをしました。
それはもう恥ずかしく、赤面しました。
その2人の様子にまた当主は言われたのです。
また唇にしたいと思ったかいと。
2人共に赤面の顔を見合わせ見つめること数秒。
お互い頷きました。
そこで当主は満面の笑みで頷き、学園卒業までは恋人として付き合い、わたくしが無事卒業出来たら婚約すればいいという話になったのです。
「えと、そう、でふ」
あ、噛んでしまいました。
恋人と言われて照れてしまいます。
そんなわたくしの態度に、ローズマリー様は微笑み言いました。
「他の攻略対象者とのイベントが起こらないように、お互いが幸せになるように協力しあえばいいと言うことですわね」
にこりと微笑みを浮かべるローズマリー様が天使すぎます。
「はい。協力をお願いできますか?」
「もちろんよ」
即答してくださるローズマリー様と、いつの間にか隣に座っているリアムがわたくしに向かって微笑みました。
2人の微笑みが眩しいです。
小説と違う道を選ぶ3人のため、悪役令嬢を味方にすることに成功しました。
ここで終わり!?ってところで終わります。
これ以上お話が膨らみませんでした…
読んでくださり、ありがとうございます!
誤字報告ありがとうございます!訂正しました。